第135話 亜種モンスター

「なあサリア、今回の一件どう思う?ブラックマンティスが暴れてるってのはよくあることなのか?」

「いや、ナウサの森で出会ったブラックマンティスと同じ状態だったら、頻繁にあることではないかな。二つ名通り、本来は森に危険が迫った時に自然を最優先に守るモンスターなの。」

「じゃあ、今回エルフが出動しないといけないほどってことは、かなり危険な状態そうだね。」

「早く行きましょう、私たちも信頼を得ないと先に進めないわ。」


スタタタタッ。

4人は風を切り、ダッシュで向かう。


向かう途中、辺りの木々が傷をつけられていたり、枯れている光景も目にはいった。


この辺りでも戦闘があったようだ。



「一応おさらいだ、ブラックマンティスの戦闘力はもちろん高い、その上周りの木々や植物の命を吸収して体の修復をしていく。ただ、腹の下に吸収するための針みたいなのがついてるから、それを斬れば倒せるはずだ。」

「ジュールから教わった技も試していきたいわ、前衛はクロウとノエルランス、後衛が私、中間の位置にサリーでいくわよ!」

「OK!4人が揃った戦い、久しぶりな気がするね!しっかり終わらせないとね!」

「安全第一でいこう、怪我は極力避けなくちゃソーマとの戦いで不利になる。」


10分ほど走ると、


「見えてきたぞ、あれだ!」

「ブラックマンティス……??何か違う気がするわよ?」

「なんだろう、色というか雰囲気というか確かにサリアの知るブラックマンティスじゃない!」


バゴーンッ!

鋭く巨大な鎌から大きな斬撃が繰り出され、辺りの木々を切り裂く。


ブラックマンティス……2本の鎌に、尖った触角、六足歩行するカマキリのような虫で、全身は黒く、全長は5mはあるであろう。その体からは予想できないスピードとパワーを兼ね揃えている。


だが、今回は少し違う。


色は黒というより、紫色。

体も一回り大きく、何より鎌にトゲトゲがついている。



「なんか様子が変だな、亜種って感じか?」

「だとしたら、攻撃も弱点も違うかもしれないわ。……っ!?伏せて!」


バゴンッ!

目の前から何かが吹き飛んでくる。


ドスッ。

地面に叩きつけられたのは、戦闘に参加していたと思われるエルフだった。


「マジかよ、おい、大丈夫か!」

「えほっ、えほっ、誰か、あいつを、止めてくれ。」

「他にエルフは?あなた以外にもいるんでしょ!」

「ほとんど、全滅だ。あれが、町に迫ったら、サラミスが、なくなってしま、う。」


スッ。

エルフは全身から力が抜け、気を失う。



「くそっ、嫌な感じしかしねえな!警戒していくぞ、レイヴァー!!」

「了解!」


ズザッ!

10mほど先に見えるブラックマンティス亜種へ突撃する。


「シャァ!!」


シャキンッ!シャキンッ!

大きな体からは予想できないスピードで、鎌を振り回す。


「ちっ、戦闘力も段違いか! 空の光ソラノヒカリ三式サンシキ日輪ニチリン!」

「こっちは任せてくれ! ゴウ一の型イチノカタ竿ロッド!」


バギーンッ!バギーンッ!

2刀の上段斬りと、竿のようにしならせた足蹴りが鎌と火花を散らす。


ズザーッ!

ブラックマンティスは地面を削りながら少し後ずさる。


「重たっ、まともにやり合うのは避けるぞ、体がもたねえ。」

「そうだね、体の負担が激しすぎる。けど、これだけ隙を作れれば!」


ザッ!

アーシェとサリアが、クロウ達が作った隙を見逃さずに突っ込む。


「私たちの番ね! 氷つけ!凍て付く光フリーズレイ!」

「いくよ! 射貫け!光線レイ!」


バリリリリッ!

ピューンッ!

氷と無属性の魔法の光線が、顔面に突き刺さる。


キインッ!

なんということだ、魔法が何もなかったかのように打ち消された。


「嘘でしょ、これってまさか!」

「アリゲイルと同じだよ、魔法を完全に打ち消してる!」

「おいおい冗談だろ、エルフも苦戦するわけだ。けど、アリゲイルの時は正面が完全に弾けるだけだった、弱点を探すぞ!」


ズザッ!

クロウとノエルは挟み込む形で接近する。


「キシャァァ!!」


ブンッ!ブンッ!

今度は足を使い、2人を弾き飛ばそうとする。


ズザーッ!

スライディングをして避け、飛び越えて避け、後方に迫る。


「鎌の届かない位置なら! 雨の音アメノオト三式サンシキ霧雨キリサメ!」


グルンッ!

ジャギンッ!

腹部分に少しダメージが入る。


「これじゃあ浅いか、っ!?」


着地と同時に、辺りに倒れているエルフが目に入る。


「まじかよ、こんな近くに。ノエル!作戦変更だ、まずはエルフを回収する!」

「そんな、死んでしまってるかもしれないんだよ!」

「関係ねえ、たとえ死んでたとしても、アーシェ、サリア!カバー頼むぞ!」

「無茶を言うわねうちのリーダーは! 穿て!紫電ライトニング!」


ビリリリリッ!

ガギーンッ!

一直線に突き進む雷も、やはり弾かれる。


だが、ヘイトはアーシェに向いた。


「さすがアーちゃん、サリアもやらせてもらうね!」

「ありがとう、さあ、あなたの敵は私たちよ!ブラックマンティス!」

「キシャァ!!」


ドダダダダッ!!

巨大で木をなぎ倒しながら、アーシェとサリアを狙う。


激しい戦いが、始まってしまった。

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