第131話 テーベとは
スタッ、スタッ、スタッ。
レイヴァーの4人はテーベに向かって歩き始めた。
「ここからテーベに入るまでが、だいたい歩いて3時間か。途中で一度休憩挟みたいな。」
「そうね、久しぶりにクロウの手料理も食べたいわ。」
「そういえば、クロウガルトは料理も上手だったね。全部自己流かい?」
「まあな、1人で生きてくために身につけたものだよ。なあ、サリア?」
「ん?なに?」
サリアは首を傾げる。
「聞くまでもないとは思うけど、怖くないか?」
「……そんなの……怖いよ。」
「このバカ!何当たり前なこと聞いてるの!」
パシーンッ!
アーシェがクロウを引っ叩く。
「痛っ!違えよ、怖いだろうから頼れって言いたかったんだよ!」
「あら、これは失礼したわ、クロウのことだからいつもの癖が出たのかと。」
「俺だって少しは成長するっての!サリア、絶対に忘れるなよ。」
「ん?」
「俺たちはレイヴァーで家族だ。辛いこと、怖いこと、1人で背負わないようにな。」
「うん、ありがとう!」
ニコッ。
サリアは笑顔で応える。
「じゃあ、いくか。」
「そうだね。」
スタッ、スタッ。
クロウとノエルは歩き出す。
ただ、サリアは少し立ち止まっていた。
スッ。
アーシェがそんなサリアを抱き寄せる。
「大丈夫、いつも通り私たちを信じなさい。どんなことがあっても、私たちはあなたを裏切らない。例え、この命が尽きるようなことであっても。頭に刻み込んだ?」
「……うん、アーちゃんありがとう!」
ギュッ。
サリアも優しく包み返す。
そして1時間ほど歩いたレイヴァーは焚き火をつけ、休憩をする。
クロウはこの短時間で、小麦とミルク、砂糖や木の実を使ってシンプルなクッキーを作り上げた。
「できたぞ、アーシェは食べ過ぎ注意な。」
「分かってるわよ、いただくわね。」
この数十分で作ったとは思えない、
外はサクッと、中はしっとりとしており甘すぎず木の実の香りが程よく鼻を抜ける。
「やっぱり、クロくんの料理は美味しい!こんなにぱぱっと、すごいね!」
「うん、これは尊敬せざるを得ないな。」
「お褒めに預かり光栄だよ。ところでサリア、テーベにはこのまま行けば平気か?」
「そうだね、あと2時間かからないくらいで、境界線の門が出てくるはずだよ。多分、1番近くの町がサラミスになるかな。ただ、素直に入れてもらえるかどうか。」
テーベ……王女アンジュが治るエルフの国。サリアの母リューネは、アンジュの側近として活躍していた、
サリアに町を燃やしたと言う疑いがかけられ、噂は瞬く間に広まった。
サリアの母、リューネはサリアを逃すために投獄されていた檻から脱出させ王国に隔離されている。
もともと警戒心の強いエルフ族は、仲間の裏切りで同胞が殺されたとあってはなんとしてでも犯人を抹消するだろう。
そして、サリアには2つの課題がある。
1つ目は、エリカリットの存在。
エリカリットは、何故サリアの中に存在するのか、そもそもエリカリットは何者なのかを証明しなくてはならない。
2つ目は、町を燃やした真犯人を突き止めること。
アテナイで出会ったエリカリットの兄と名乗るソーマは、まだ未知の存在。
これからの行動として、まずはテーベに入り王国に向かい王女、アンジュと話をする。
その上で、ソーマの情報を得て彼からも話を聞く。
この2つが今回の目的だ。
「テーベは、正直サリアも10年近く離れてるから現状がどうなってるか分からない、危険な目に合わせることになるかもしれない。」
「そんなの、どんとこいだ。これまでどんだけ俺たちは、でっかい壁に道を拒まれてきたって。」
「そうね、壁は壊して進むもの、いくらでも壊し続けてやるわ。」
「心強いね、この2人は。僕は少しでも冷静に見守ってるよ、もちろん戦いは任せてくれ。」
「みんな、ありがとう。じゃあ、行こうか。あの森を抜けたらテーベに入るよ。」
スタッ、スタッ。
レイヴァーは片付けをして、テーベの方角へ向かった。
「サラミスって町は、サリー行ったことあるの?」
「かなり昔にあるよ、ただ古すぎて記憶にはあまり残ってないんだよね。」
「長生きってのも大変だな。まあ、行ってみてから判断しようぜ、ソーマの手紙も気になるしな。」
そして、2時間弱歩いたところで、
目の前に少し青みがかった壁が生まれる。
「これは、結界?」
「そうだよ、でも安心して。」
シュインッ。
サリアが目の前に手を伸ばすと、結界は薄れ消えていった。
「何が起きたんだ?」
「これはね、誰でも入れる結果なんだけど、エルフ以外が触れたら警報が近くの町に行っちゃうの。だから、サリアが触れたって感じかな。」
「いろんな魔法があるのね、じゃあいきましょうか。」
「警戒はみんなしておいた方がいいよ、あくまで僕たちは呼ばれてないお客さんだから。」
ズザッ、スタッ。
木々をかき分け、30分ほど歩くと、
「スンッ、スンッ。火の匂い、近くに町があるな。」
「そうね、私も魔力を感知したわ。」
「多分、サラミスの町だよ。どうやって行くのがいいかな?」
「正面から行くのが1番いいと思うよ、下手に裏から入ったりしたら余計怪しまれるからね。」
「よしっ、そんじゃあ匂いの方へーー。」
パシュンッ!
ズザッ!
どこからともなく矢が目の前に突き刺さる。
「おいおい、早速お出迎えかよ。」
スッ。
クロウが前を見ると、そこには緑色のローブを着たエルフが。
「何者だ、お前達は!」
「敵じゃねえよ、って言って信じるタイプじゃないな、お前は。」
「変な動きを見せるなよ、侵入者!」
エルフとの対話はどうなるのか。
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