第129話 不安と希望
スタッ、スタッ。
リィンも含めて、レイヴァーは宿に戻る。
そこでご飯をみんなで食べ、筋肉好きの従業員さんがクロウとノエルの体に興味を持ち、少し大変であった。
そして、約束通りクロウはリィンと一緒に外に出た。
「ゆっくりできるところに行くか?」
「いえ、そんなに時間かかりませんので適当にぶらぶらしながらで大丈夫です。」
「そうか、で、何があった?」
「はい、アテナの槍術のことについてなんですが。」
シャキンッ。
リィンは、背中と両腰につけてた棒のようなものを合体させ、刃がついた槍を手に持つ。
「おう、そんなふうに持ってたのか、気付かなかったぜ。」
「はい、本当は長い1本の槍で待つべきなんですが、練習用に持ち運びが簡単なものを作ってもらったんです。」
「てことは、俺に見てほしいってことか?」
「さすがクロウさんですね、まだ1個しか技を使えませんが、実戦で使えるレベルか見てほしいんです。」
スッ。
槍を片手で持ち、戦闘態勢を取る。
「分かった、ぜひ見せてくれ。」
「はい、いきます。」
スゥーッ。
リィンは呼吸を整え、腰を下ろしながら槍を構える。
そして、
「
シュンッ!
ドゴーンッ!
勢いよく槍を突き出すと共に、衝撃波を放つ。
その動きは滑らかで、槍を使い始めて間もない人の技とは思えなかった。
「ふぅ、どうでしたか?」
「……リィン。」
「はい?」
ガシッ。
リィンの両手を握る。
「お前、すごいよ!」
「へ!?そ、そうですか!?」
「当たり前だ!いくら戦士の経験があるからって、まだそんなに日が経ってないのに一つの技を使えてる!センスもあるかもしれないけど、それより努力してきたから成し得たことだ!でも、無理はしてないか?」
「あははっ、正直少しきついです。今まではダガーで相手を避けながら、隙をついて攻撃するスタンスだったので、重い槍で真正面から戦うこともあるこのスタイルは、慣れるのはまだ時間かかりそうです。」
カチャンッ。
リィンは槍を分解して腰にしまう。
「けど、威力は申し分ない!そうだ、ここのジュールならより詳しく戦い方を教えてくれるかもしれない!俺たちもちょうど修行をしてもらっててよ。」
「そうなんですか!じゃあ、あたしもお時間作って頂けるように話してみます。」
「いや、明日も俺たちに教えてくれるから、俺が話を通しておくよ。」
「ありがとうございます!それで、クロウさん。」
「ん?」
スッ。
リィンはクロウの袖口を掴む。
「あたしは、この力を使えるようになったら、レイヴァーに入れますか?」
いつものリィンとは違う、細く少し自信のない声がクロウの耳に届く。
その不安を払拭するかのようにクロウはリィンに顔を近づける。
「当たり前だ!むしろ、こっちから参加をお願いしたいくらいだ!俺たちの頭脳であり、唯一の長物使い、最高じゃねえか!」
「クロウさん、ありがとうございます!そしたらーー。」
「けど、前にも言ったけど無茶はするなよ。秘伝書によるけど、後半の技になればなるほど負担が大きいものが増える。リィンなら平気だとは思うけど、体を最優先に考えてくれよ。」
「はい、もちろんです。だって、あたしが皆さんの健康を管理してるんですよ!そんなあたしが体を壊してる場合じゃありませんからね!」
ニコッ。
リィンは笑顔で答える。
「さすがだな、いつも助けてくれてありがとうな。そうだ、何かお礼できることないか?流石にいつもしてもらってるだけじゃ、悪い気がしてさ。」
「そんな気にしなくていいですよ!……あ、やっぱり明日の空いてる時間少しもらえませんか?」
「いいぜ、ジュールの修行が終わったらでいいか?」
「はい!そんなに時間は取らせませんので!」
スタッ、スタッ。
2人は宿屋に戻り眠りにつく。
そして次の日、
「氷の魔法は、貫くイメージと止めるイメージで。」
「そうだね、アーシェさんの技としてはそこが大切なイメージだと思うんだ。」
「サリアの場合は、魔銃に集める魔力を調整して用途によってその後のイメージを変える、ダガーは踊るように攻撃することを意識するってことだよね。」
「うん、サリアさんは軽やかに動いて時々大きな一撃も放つようだから、常に体に余裕を持たせて動いた方がいいね。」
アーシェとサリアも指導を受けていた。
その姿をクロウとノエルは見学していた。
「この分なら、2人も使いこなせそうだね。」
「そうだな、ノエルの方は調子どうだ?」
「なんとなく感覚は掴めてきたよ。僕は拳と足だから、まだ簡単な方だよ。アレンジしてたのが少し響いてるけど。」
「俺に至っては、拳と足、大剣、2刀、折りたたみ式剣の5つだから頭がどうにかなりそうだぜ。まあ、使いこなしてみせるけどな。」
「さすが、うちのリーダーは逞しいね。あと不安材料は、テーベについてか。」
2人はこの先向かうテーベについて考える。
「そうだな、エルフは他の種族に対して特に警戒心が高い。サリア以外の俺たちが、認めてもらえるかどうかだな。」
「けど、なんとか理解してもらってソーマを倒さないとエデッサと同じ悲劇を生んでしまう。それだけは、何がなんでも止めないと。」
「ああ、そのために少しでも強くなるぞ、ノエル!」
「そうだね、クロウガルト!」
2人も修行を重ねていった。
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