追放された者達、旅をしてたら世界を救っちゃった件

第126話 男同士の誓い

「コワス！コワス！」

ドスンッ！ドスンッ！

一際大きなゴーレムがティーヴァの方へ向かい歩いてくる。

一歩一歩が地面を歪ませ、その迫力を周りに伝える。

口から息が漏れ、全身の血管が浮き出ている。

「あの見た目、リィンと話してたもう1種類のゴーレムじゃねえか？」

「確か、バーサーカーゴーレムだったかな。確かに、特徴が一致する。」

バーサーカーゴーレム……両手に鉤爪を装備し、体の色は赤と黒が混ぜ合わさったようなドス黒さ。頭には鋭利且つ大きな角が2本、全長は7mはあるだろう。

顔も常に威嚇しているのか、目が吊り上がっている。

恐怖の象徴、その言葉が1番当てはまる存在だ。

「クロウガルト、君はまだ怪我が大きく残ってる。僕が前衛、君が援護って形でいこう。」

「そうだな、初めて援護側に回るから前に出過ぎてたらカバー頼むぜ！」

「君なら出過ぎかねないよね、了解した！」

ズザッ！

2人はバーサーカーゴーレムに突撃する。

その姿を、相手側からも捉えられた。

「ナニカ、クル。ジャマスルヤツ、キライ。」

ブンッ！

ドスドスドスッ！

風を切りながら、バーサーカーゴーレムが迫ってくる。

「ジュールに教わったことを試す時間だ！」

「無理しすぎないでくれよ、リーダー！」

ズザッ！

2人はバーサーカーゴーレムを挟み込む。

「ジャマスル、タオス！」

ブンッ！ブンッ！

鉤爪で回転攻撃を繰り出す。

「力はこれまでのゴーレムと比べものにならなそうだ、直撃は避けるぞ！」

「分かってるよ！　剛（ゴウ）、一の型（イチノカタ）！竿（ロッド）！」

バスンッ！

バギーンッ！

竿のようにしならせ、鉤爪とぶつかる寸前に勢いをマックスにする。

グラッ。

バーサーカーゴーレムは片足が浮き、体勢を崩す。

「なるほど、これが正しい技の使い方か。」

「いきなり使いやがった、センス抜群だな。負けてられねえ！　拳の響（ケンノヒビキ）、四式（シシキ）！雷光（ライコウ）！」

ズンッ！

ボフンッ！

クロウの正拳突きが右腹に入る。

綺麗に拳の形が残っている。

「ウハッ。」

ドスッ、ドスッ。

バーサーカーゴーレムは後ずさる。

「いいな、これが一点集中（ピント）を使いこなすってことか。」

「けど、まだ体に馴染んでいない分負担も大きい、使い過ぎには気をつけよう。」

「イタイ、キライ！」

ブンッ！ブンッ！

クロウを集中的に狙う。

スッ、スッ。

着実に見極め、クロウは躱していく。

「スピードはそこまでじゃねえ、隙を狙え！ノエル！」

「了解だ！」

ズザッ！

低姿勢でノエルは背後に迫り、

「耳もあまり良くないみたいだね！　迅（ジン）、六の型（ロクノカタ）！弾頭（ロケット）！」

スッ！

バゴーンッ！

空高く飛び上がり、拳を構え後頭部に直撃させる。

「ウガァ！」

「そして、空の光（ソラノヒカリ）、初式（ショシキ）！半月（ハンゲツ）！」

ザザッ。

ギューンッ！

腰低く構え、2刀を一度横回転して振り抜く。

風を切る、いや、風を置いてくるスピードだ。

ズシャン！

バーサーカーゴーレムの右足から血が滴り落ちる。

「イタイ、イタイ、イタイ！」

バゴーンッ！

ズザーッ！

体から衝撃波を放ち、クロウとノエルを吹き飛ばす。

「おいおい、しっかりダメージ入れてんのに動きが鈍らねえな。」

「相当頭に来てるのか、ダメージを負っていることに気付いていないのか。」

「そんなことあるか？痛いって片言で言ってる気がするけど。」

「言ってるのか、言わされてるのか。」

ドゴーンッ！

バーサーカーゴーレムはさらに体を赤くさせ、熱を発する。

「シネ、シネ！」

「くそっ、ノエル！」

「僕が惹きつける、クロウはーー。」

シュンッ！

今までとは比べなのにならないスピードで、ノエルの目の前に接近する。

「なっ！？」

「イタクスルヤツ、オマエ！」

ジャギンッ！

ズザーッ！

瞬間的に腕の武器で受け止めるが、やはり力が大きく吹き飛ばされる。

「うはっ。」

「ノエル！」

「ツギハ、オマエ！」

「ちっ！」

スッ！スッ！

クロウは距離を取りながら攻撃を避ける。

「シネ、シネ！」

「くそっ、どのタイミングで抜け出せばーー。」

ピシャッ。

クロウの右足から血が滲み出る。

エデッサでのダメージが開いてしまった。

「うっ、もう少し持ってくれよ、この体ーー。」

「シネ！」

「 獣の声（ケモノノコエ）、三式（サンシキ）！獅子の閃爪（スフィンクス）！」

ズンッ！

ガギーンッ！

大剣の突き攻撃で、鉤爪を受け止める。

ガギギギッ！

激しい火花を散らしながら、鍔迫り合う。

「シネ！」

「力比べで負けてやるか！」

「僕もいるよ！　迅（ジン）、四の型（ヨンノカタ）！豪弾（マグナム）！」

スッ。

ドスンッ！

全力の拳が、バーサーカーゴーレムを吹き飛ばす。

「クソ、ジャマスルヤツ、シネ。」

「ちっ、かなりタフだな。ノエルまだいけるか？」

「僕は平気だよ、ただクロウガルトの足が。」

「俺も少しならいける。1回だ、1回であいつを抑え込む！」

「わかった、任せるよ！」

ズザッ！

2人は正面からバーサーカーゴーレムに突撃する。

「オマエラ、ジャマダ！」

シュンッ！

鉤爪が2人を狙う。

ズザーッ！

スライディングしてくぐり抜け、2人は体の正面に迫る。

そして、

「追いつけるか！」

「僕たちの速さに！疾風連牙（シップウレンガ）！」

ゴスッゴスッ、ドガッドガッ！

クロウの拳とノエルの足技の連撃が、体前面を打ち抜く。

共鳴術技（リンクアーツ）の発動だ。

「ウァァ！」

ドスンッ！ドスンッ！

流石に痛みを感じたか、後ずさる。

「よしっ、これで一気にーー。」

シュイーンッ！

どこからともなく石のようなものが転がって、バーサーカーゴーレムを紫色の光が包む。

「なんだ！？」

「バーサーカーゴーレムが強化されてる？」

「いや、これは、引き寄せられてる。主犯が回収するつもりだ！」

スンッスンッ。

クロウは鼻を活用する。

(近くに主犯がいる、このゴーレムがどこの奴らが放ったのか分からねえと、何も情報を得られないままだ。)

ピキーンッ！

クロウの鼻に少し自然にはない香りを捕らえる。

「そこかっ！イメージしろ、ジュールに教わったことを！　獣の声（ケモノノコエ）、 八式（ハチシキ）！ 大蛇の咬切（ヒュドラ）！」

スゥー。

バシュンッ！

大剣を地面に触れさせ、そこから勢いよく振り抜き斬撃を匂いの方向へ撃ち出す。

バゴーンッ！

何かに当たったようだ。

シュイーンッ！

しかし、バーサーカーゴーレムは石に吸収され斬撃を飛ばした方に飛んでいく。

「くそっ、逃したか。」

バーサーカーゴーレムは退けた。

だが、それ以外の情報はなかった。

「クロウガルト、何か感じたのかい？」

「ああ、さっきまでなかった匂いがあったんだ、もしかしたら敵の主犯かと思ってな。行ってみようぜ。」

スタッ、スタッ、スタッ。

2人は石が飛んだ方へ向かう。

すると、

「これは、確か。」

「ああ、黒いローブ、蠢く会の奴らだ。」

「なんでこんな所にゴーレムを。」

「さあな、今は考えるのは後だ、町に戻ろう。」

スタタタタッ。

2人はティーヴァに戻る。