第123話 力の教え

「俺も詳しくは聞けてないし、ミラも正解を知ってるわけじゃないみたいなんだけどよ、俺はアレス、アーシェはアフロディテ、サリアはアルテミス、ノエルはアイアコス、ミラはアトラース、この名前に秘密があるんじゃねえかって話でさ。」

「私は魔王の娘、クロウはレイヴンズの生き残り、サリアは王女の側近の娘、ノエルも王の側近の息子、ミラは……分からないわね。」

「ただ、ミラは俺の父さんを知ってたんだ。だから、もしかしたらレイヴンズ関係の人が親なのかもしれない。もっと詳しく聞きたいんだけどな。」

「ミラちゃんも忙しそうだし、また会える気がするからその時にだね!」


グッ。

ノエルの表情が固くなる。


やはり、何かを抱えている顔だ。


「ノエルランス、どうしたの?やけに静かよ?」

「ん?いや、僕たちの共通点が何かないか考えてたんだよ。強いて言えば、共通してることは一つかな。」

「なになに?」

「全員、ってところかな。」


ノエルの言葉に、3人は考え始める。


「それは、偶然じゃないかしら?待遇も、年齢も、種族もちがう4人よ、ミラは分からないけどそこに繋げるのは難しい気がするわ。」

「でも、共通点なのは変わりないな。頭の片隅に入れておこうぜ。」

「自分で言ってなんだけど、すごいメンバーだね、レイヴァーは。」

「そうだぜ、かなりクセが強くて、周りから邪魔者にされたやつの集まりだからな!」


ニコッ。

辛い言葉をクロウはさらっと言う。


その笑顔には、同じ境遇だからこそ仲間としてか分かり合えてる証が。



ギリッ。

その笑顔は、アーシェが頬をつねることで消える。


「クセが強いって何かしら?私のどこがクセが強いの?」

「いや、だってその威圧感っていうか、迫力もだし食欲もーー。」

「ウェルダンOK??」

「ノー!!」


スッ。

アーシェは炎を準備しようとしたが、手を引っ込める。


「まあ確かに、クロウもバカで真っ直ぐな独占欲強めの男の子だものね。」

「なんかしれっとディスられた。」

「そう考えると、サリアとノエルくんが割と普通かな?」

「ノエルはともかく、サリアは違うだろ。何考えてるか時々分からねえし、ふわふわしてるっていうかーー。」

「木で串刺し?」

「それもノーだ!!」


ガヤガヤガヤッ。

4人の食卓はここ最近ではとても賑やかであった。


そして、この場を鎮めるのが、



「みんな、そろそろジュールさんも戻ってくる頃だから遊んでないで僕らも準備をするよ。」

「遊んでねえよ!俺だけ焼かれそうになったり、串刺しにされそうになってるだけでーー。」

「まるで私たちが悪いって感じの言い方ね。」

「ねぇ、クロくん、間違えた時は素直に?」

「はい、ごめんなさい。」


クロウが謝り、4人は会計を終え外に出る。



「はあ、お腹はいっぱいになったけどなんか疲れたぜ。」

「クロウガルトも大変だね、応援してるよ。」

「そこは代わってあげるよとかだろ!」

「それは遠慮願いたいね。それじゃあ、ギルドに行こうか。」


スタッ、スタッ、スタッ。

レイヴァーがギルドに向かうと、


キィーッ。

中から黒髪の男が出てくる。



「ん?君たちがお客さんかい?」

「お客さん?あんたがもしかして、ジュールか?ミラが言ってた。」

「ああ、やっぱりミラさんが僕のことを教えたのか。そうだよ、僕がジュール・ライフ、初めまして。」


ジュール・ライフ……ティーヴァに住む1人の戦士。

以前ミラの修行を手伝ったという経緯から、クロウ達も鍛えてもらうためにここに来た目的の人物。

サラサラヘアーの黒髪に、チワワのような大きな目で優しい雰囲気が湧き出している。

黒と緑を基調とした、スーツのような姿が紳士のように見せる。



「出会えて嬉しいわ、ジュールさん。早速だけど、ミラとはどんな修行をしたのかしら?」

「ミラさんとは、技の使い方について一緒に勉強しただけだよ。まあ、オールドタイプだからできたことかもしれないけどね。」

「じゃあ、少なくとも俺は対象になりそうだな。」

「君、お名前は?」

「クロウガルト・シン・アレス。ミラ・アトラースと同じ、オールドタイプの生き残りだ。」


カッ。

ジュールの目が見開かれる。


「アレスってことは、フェルナンドさんの?」

「ああ、フェルナンドは俺の父さんだ。」

「まさか息子さんがいたなんて、驚きだよ。」

「ん?ちょっと待って、なんでジュールさんはクロウの父親のことを知ってるの?ニューマンの人たちは、オールドタイプの人たちの記憶を無くしてるんじゃなかったかしら?」

「僕の趣味は歴史を学ぶことでね。あらゆる本を読んだし、何が正しいのかも考えたよ。そこで辿り着いたのが、この世界は血のホワイトデイからガラッと変わってしまったということ。」


ジュールは淡々と話進めていく。


「ははっ、最高だぜあんたは、ジュールみたいな人がもっといたら、アテナイにも希望がありそうだ。」

「大袈裟だよ、じゃあ本題に入ろうか。まずは、ミラさんと同じ状況のクロウくんから。」

「おう、頼む。まずは何をすればいい?」

「君は見た感じ、4つの武器を使いそうだね。なら、1番体に近いもの、拳から見せて欲しいかな。」



スッ。

クロウは拳を構える。


「傷は完治してないようだから無理はしないでね。それじゃあ、5m離れたあの木に向けて一つ技を出してみて。」

「分かった。 拳の響ケンノヒビキ初式ショシキイカヅチ!」


ブンッ!

右手の正拳突きが、空を切る。


そこから生じた風圧が、目の前の木を揺らす。


「なるほどね、ミラさんと同じで基本は出来てる。あとは、一つだけだね。少し体を触るよ。」


グッ、クイッ。

クロウは腰を少し落とし、左手を開いて前に突き出し、右手は拳を作り引く。


「よし、もう一度やってみて。」

「あ、ああ。 拳の響ケンノヒビキ初式ショシキイカヅチ!」


シュッ!

ゴスンッ。

今放ったのは同じ技だ。



だが、目の前の木にしっかりとクロウの拳の跡がついている。


「な、なにこれ?クロくん、本当に同じ技!?」

「ああ、けどなんかやりやすかったな。」

「それが僕の教えられること、一点集中ピントだよ。」


ジュールは一体なにを教えるのか。

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