第122話 鎖の力

スタッ、スタッ、スタッ。

レイヴァーはティーヴァの町に入る。


辺りは静かだが、所々に商いをしてるところもあり多くの戦士も見受けられる。


ミラから聞いた通り、戦士の多い町のようだ。


「まだ俺たちは回復しきったわけじゃねえし、宿から探すか。」

「そうね、その後でギルドでジュールって人の情報を集めましょうか。」


スタッ。

レイヴァーは宿屋の前に立つ。


「なんか、すごい門構えだな。」


そこには、大木で覆われた屋根に、ドアには屈強な戦士よ集まれの言葉が綴られている。

まるで、闘技場に入るかのようだ。


「屈強かどうかはわからないけど、僕たちも戦士だから入って平気じゃないかい?」

「ゴリゴリの人限定って話だったら、サリア達筋トレから始めないとだよ。」

「そんな時間ねえし、まずは確認しに行くぞ。」


ガチャンッ。

クロウがドアを開けると、


「いらっしゃいませ!あ、旅人の方ですね!こちらへどうぞ!」


予想を覆す、笑顔が眩しい華奢な女性が出迎える。


「え、あ、ええと、4人なんだけど部屋空いてるか?」

「4名様ですね!そしたら、2名ずつの部屋にさせていただきます!」

「あ、ありがとう。あと、気になってたんだけどドアのあの言葉はなんだ?」

「ああ、それは私が単純に筋肉が好きなので書いてみただけです!むっ、どうやらお兄さんもかなりいい筋肉をおもちみたいですね、特に僧帽筋ーー。」

「へ、部屋はどこですか!僕たち疲れてて。」


ノエルが話を遮り部屋を聞く。


「あ、すみませんでした、2階の1号室と2号室です!こちら鍵になります!」

「ありがとうございます、では使わせてもらいます。」


スタッ、スタッ、スタッ。

レイヴァーが階段を上がっていく姿を、受付のオーナーさんはずっと見つめていた。


「見られてるわよ、クロウ、ノエルランス。筋肉くらい見せてあげれば?」

「いや、なんか、あの人に見せたら1日解放されない気配がした、遠慮しとくぜ。」

「まあ確かに、すごい熱心さを感じたよね、サリアも驚いたよ。」

「それじゃあ、部屋に荷物を置いたらギルドで集まろう。」


ガチャンッ。

クロウとノエルは1号室、アーシェとサリアは2号室に入る。



ガタッ、ドスッ。

全員荷物を置き、宿を出る。


そして、ギルドに向かうと、


ザワザワザワッ。

中から多くの声が響いてきてる。


「かなり賑やかなギルドみたいだな。ナウサともアルタとも違う。」

「まあ、いいところなのは間違いなさそうよ、ほら入りましょう。」


キィーッ。

ドアを開くと、


「こんにちは!ティーヴァのギルドへようこそ!今日はどうなさいますか?」

「あ、僕たち人探しをしてて、ジュールさんという方を知りませんか?」

「ジュールさんですか?それなら、先ほどクエストに出られたので小1時間はお戻りにならないかと。」

「そう、ならご飯でも食べながら待たせてもらうわ。」

「分かりました!お戻りになったら、皆様がお探しだったことお伝えしますね、お名前は?」

「レイヴァーだ、ミラから紹介されたと伝えてくれ。」


キィーッ。

ドアをくぐり、レイヴァーは周りの店を見る。


「さあて、どこで飯食うか?」


スンッ、スンッ。

アーシェは何かの匂いを嗅ぎつける。


「右奥の方から、美味しそうな香りがするわ。まずはそっちいきましょう。」

「え、俺の鼻には何も感じられなーー。」


タタタタタッ。

アーシェにはクロウの声が届いてないようで、足早に向かう。


「アーちゃん!待ってよ!」

「はあ、食べ物のこととなると本当に周りが見えなくなるな。」

「まあ、いいんじゃないかい?アーシェリーゼっぽいってことで。」


スタッ、スタッ、スタッ。

3人もアーシェの後を追うと、



「本当にあった、ご飯屋さんだ。」

「アーシェの鼻が俺の鼻を超えた、だと。」

「悔しがらなくて平気だよ、クロくん!アーちゃんはきっと特別な子なんだよ!」

「食欲お化けだな。」


キィーッ。

店のドアを開けると、


「あら、遅かったわね。もうみんなの分も注文してあるわよ。」

「逆だよ、お前が早すぎんだ。って、先に注文してくれてたのは嬉しいけど、何人分頼んだんだ?」

「考えてないわ、多分20-30人前くらいじゃないかしら?」

「食いしん坊が。」

「あっ??」


ギリッ。

アーシェの睨みが、クロウを刺す。


「はあい、おまちどう!」


ドスンッ。

まず出てきたのは、1mはあるであろう魚の丸焼き。

油が滴り、ハーブの香ばしい香りが。


「え、これって1人前ですか?」

「そうだよ、遠慮なくたくさん食ってくれ!」

「アーちゃん、流石に今回はーー。」


キラーンッ!

アーシェの目は、星のように光っていた。


「平気そうみたいだぜ、俺らも食べるか。」

「いただきます!」


ガチャガチャ。

次から次へと出てくる料理を食べすすめていく。


もちろん、7.8割はアーシェの胃の中に消えていく。



「もう驚かないな、アーちゃんの食欲には。」

「僕はまだ慣れないよ、その体のどこに入るんだか。」

「考えるだけ無駄だ。前にも言った通り、多分ブラックホールなんだから。」


あらかた食べ終え、4人はエデッサのことを話す。



「そういえばクロウガルト、ミラさんに力のことについて何か言われてなかったかい?」

「ああ、そうだった。俺の力を、みんな見たことあると思うんだ。これは俺も初めて知ったんだけど、鎖を同時に断ち切ったら俺の体が耐えられなくて行動不能になるみたいなんだ。」

「え、それを知らないで今まで戦ってたの?」

「ああ、なんせ俺の力も秘伝書を元に作られてるからな、書いてないことはわからないんだよ。それと、もう一つ言ってたな。」


ゴクンッ。

クロウは水を飲み込む。


そして、



「俺たちには、まだ気づけてない力が隠されてるかもしれないって。」

「なんだい、それは?」


レイヴァーは自分たちのことについて話し合い始めた。

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