第120話 新たな町へ
ガチャンッ、バッ。
アーシェ、サリア、ノエルも片付けを続ける。
「この植物魔法、すごく気味が悪いわ。生きてるはずなのに、死んでるように覇気がない。」
「本当だね、魔力を多少は感じるが、負のオーラしか感じられない。」
「これが、あのソーマっていうエルフの植物魔法みたいなの。彼の力は、植物を無理やり使役して本来発揮できる力以上のものを使える、簡単に言えば奴隷のよう扱えるって感じだね。」
「最低ね、そんな魔法は。」
ドタッ。
あらかた片付け終え、3人は辺りを見渡す。
「この町の被害は僕たちだけで食い止められなかった。ミラさんがいなければ、僕たちの命も危険だったよね。」
「そうね、現にクロウとサリーの怪我は大きいし、私たちも軽傷ではない。私たちは、学ぶべきだと思うわ、もっと良い戦い方を。」
「でも、サリア達は全員力を解放して戦ったよ、他に何を変えるの?」
「そもそものところよ、私たちの戦い方自体を変える必要があると思うわ。」
スタッ、スタッ。
3人はテントの方へ向かう。
「僕たちの戦い方ってことは、近接である僕の型を変えるとか、アーシェリーゼくんの魔法を増やすってことかい?」
「いえ、そこは簡単にできることではないわ。連携も、徐々に取れるようになってきてる。」
「じゃあ、どこを変えるの?」
「私なら、魔力の練り方とか魔法を放つタイミングとかかしら。」
「そんなことは可能なのかい?」
ノエルはアーシェリーゼに問いかける。
「可能性はあると思うわ。私達は、正直周りと比べて強い戦士よ。けど、この魔力や2人の戦い方をもっと洗練すれば、今よりも火力を上げられるし弱点を狙えると思うの。」
「サリアでいう、ダガーの特徴はスピードだから、それを繰り出すタイミングってこと?」
「そうね、私だったら炎魔法を使う時に練る魔力を極限まで洗練して、放つことでさらにダメージを出せると思うの。」
「なるほど、僕だったら迅と剛があるから、その使い分けと放つタイミングを考えればいいのか。難しいとは思うけど、やってみる価値はあるね。」
バサッ。
テントの中に入ると、
「おう、ちょうどよかったぜ。」
「クロウ、ミラさんも戻ってたのね。」
「そんな畏って呼ばないでくれ、ミラでもいいし、アトラースでもいいから呼び捨てで構わないよ。」
「……アトラース……あの時の生き残り。」
ぼそっとノエルが一言こぼす。
みんなに聞こえないほどの大きさで。
「何を話し合ってるの?」
「ミラと話してたんだけど、俺たちの戦い方はさらに磨き上げられると思うんだ。だから、ミラが信頼できる師匠がいるっていう町、ティーヴァに行きたいと話してたんだ。」
「なるほど、私たちもさっき似たような話をしていたわ。この力は、さらに洗練することで強くなれると思って。」
「そんじゃあ丁度いいな、ティーヴァに向かうってことでみんないいか?」
クロウが3人に問いかける。
「私は異論ないわ。」
「サリアも問題ないよ!ここで立ち止まってるわけにいかないし!」
「僕も賛成だよ、今回みたいな強敵が出てきても勝てる力は必要だからね。」
「OK、そしたらミラも来てくれるよな?案内役を頼みたいんだが。」
「うーん、そうだな。」
ミラはレイヴァーの顔を見る。
「私はやめておこう、まだ調べたいことが多いからな。」
「え、ミラちゃんは忙しい感じ?」
「まあ、そんなところだ。また機会があったら同行させてくれ。それと、さっきナウサから応援が送られたと連絡があった。エデッサも、少しは復興が進むだろう。」
「そうか、じゃあその師匠の名前を教えてくれ。」
「ああ、名前はジュールだ。黒髪で、背の低い男で、腰に銃をつけてる。まあ、ティーヴァで知らない人はいないだろうから、聞いてみるといい。私の名前を出せば、状況も理解してくれるだろう。」
スタッ。
ミラは立ち上がり、テントの入り口へ向かう。
「ミラ。」
「うん?」
「ありがとうな、ミラがいなかったら俺たちは無事じゃなかったと思う。だから、もし同じようなことあったらまた頼むぜ!」
「私は暇じゃないと言ってるだろ、まあ、そんな出会い方じゃない形で次は会いたいな。強くなってくれよ、レイヴァー。」
バサッ。
ミラは外に出ていく。
「ミラちゃん、不思議な人ですね。とても優しいのに、どこか孤独に見える。仲間になってくれたら、とても心強いのに。」
「仕方ないわよ、彼女にもやるべきことがあるんだから。でも、また会うことにはなると思うわ、その時にまた誘えばいいじゃない。」
「珍しいな、アーシェから仲間を増やそうと提案するなんて、てっきりよそ者お断りっていうかと思ったぜ。」
「なに?私をなんだと思ってるの?」
ボアッ。
アーシェの手のひらに炎が。
「待て待て、無駄な魔力は使うなって!」
「……ミラ・アトラース。君も、あの事件に絡んでるのか。」
「ん?ノエルなにか言ったか?」
「いいや、なんでもないよ。僕らも行こうか、ティーヴァヘ。」
ノエルの中に、モヤモヤが広がっていた。
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