第119話 力の使い方
「アーシェリーゼはどう思う、あのモンスターとエルフを。」
「蠢く会とも魔族とも違う、第3の勢力でしょうね。新生モンスターとは違う迫力、正直彼女が助けに来てくれなかったら、全員生き残れたかどうか。」
「それには同意だね。その中でも、僕は一つ不可解な部分がある。なんで、エデッサの町を襲ったんだろうか?この町に何かあるのだろうか?」
「可能性はあるけど、今はこんな有様なのだから復興に力を貸すのが先決よ。その後で、分かる人に聞いてみましょう、何せ、町長はあのエルフに殺されてしまっていたのだから。」
ブワッ。
テントの入り口が急に開かれる。
スタッ。
そこには、体を引きずりながら歩くクロウとサリア、それに付き添うミラの姿が。
「クロウ!サリー!良かった、起きたのね。」
「ああ、頑丈な体で良かったぜーー。」
ゴツッ。
ミラに再度頭を叩かれる。
「調子に乗るな、力の使い方については必ず仲間に話しておくんだぞ。」
「分かってるよ、アーシェとノエルも平気か?」
「2人に比べれば、私たちは軽い方よ。後は……。」
「ああ、そうだね、ミラ、さんでしたか?僕たちに教えてもらえませんか?なぜエデッサにいるのか、あなたは何者なのか。」
「そうだな、アレスにつきっきりで私のことを話していなかったな。」
スッ。
ミラは全員の真ん中に立つ。
「改めて、ミラ・アトラースだ。アレスと同じくオールドタイプで、アレスとキヒの女の子とは一度出会っている。人族と巨人族のハーフで、私がここに来たのは、嫌な噂を耳にしたからだな。」
「巨人族とのハーフ!?」
ボソッと、ノエルはこぼす。
「あなたの言う嫌な噂って、まさか。」
「そうだ、アルテミス。レイヴァーが命懸けで戦ったソーマというエルフだ。彼は、ここ以外の町も破壊している、それも、何かを探している様子で。」
「探している?エルフが人族の国、アテナイに何を探すっていうんだ?」
「そこは私も分からん、ただ、誰も対処しなくてはもっと多くの犠牲者が出てしまう。何せ、レイヴァーですら五分五分の戦いを強いられるのだからな。」
スッ。
ミラは下がり、サリアを手招く。
「私のことはこれくらいでいいだろう、後はアルテミスの番だ。」
「サリアリットくん、何かあったのかい?」
「う、うん。さっき、目覚めたばかりなんだけど、サリアの中にいるはずのエリカリットがいないの。一日中、それこそ寝てる時ですらいるって感じられてたのに、今は何も感じられない。」
「あの激しい戦いだったんだもの、サリーでも感じられないくらいにダメージを負って深く眠ってるってことはないの?」
「そう、かな。まだ分からないから、これから少しずつ理解していくつもり。」
バサッ。
外から1人の男が入ってくる。
「おおっ!レイヴァーの皆さんが起きてくれたのか!すまないが、町の木の排除を手伝ってもらえないか?俺たちだけじゃ手に負えなくて。」
「ああ、なら私が行こう。」
「待ってくれ、ミラ。俺たちも行くぜ。」
「そうね、ここにいても何も解決しないわ、やれるだけのことはさせてもらうわ。」
「怪我してるのにすまない、助かるよ。」
ガチャンッ、ドスンッ。
倒壊した家の破片や、岩、黒い木の根を切っていきエデッサの町を少しづつ復興させていく。
「そういや、エデッサの復興を手伝って欲しいって依頼は何処かに出したのか?」
「私の知る限り、アレス達が寝てる間にナウサの町に出していたようだ。」
「おっ、ならリィンもくるかもな。……ミラ、俺はどうすればもっと強くなれる?」
「なんだいきなり、アレスはもう十分強いだろーー。」
「隠してんの、バレバレだぜ。ミラが力を解放して本気を出したら、俺が例え全ての鎖を切ったとしても、1分も持たない。それだけ漏れ出してるぞ、ミラ・アトラースの実力が。」
ザッ。
ミラは片付ける手を止める。
「一つだけ問おう、アレスはなぜ力が欲しい?何をするために?」
「なぜって、簡単だ、みんなを守りたいからだよ。」
「本当にそれだけか?私のこの力で、アレスのように大きな力求めて、それに溺れてこの世から消すことになってしまった者は、覚えてないほどだ。それでも、力を求めるか?」
「……。」
クロウは黙り込む。
力を制御できなかったあの時を思い出したからだ。
もし、あの状態になってしまったら、仲間を殺すかもしれない、ミラに殺されるかもしれない。
「力に溺れた奴らはどうなったんだ?」
「異形の姿になってしまった彼らは、この斧で楽にしたさ。それが、彼らを落ち着かせる唯一の方法だと思ったからな。」
「……大切な仲間を守りたいってのは本当だけど、本質は違うな。俺は、怖いんだ。自分が死ぬのも、大切な仲間が死ぬのも。それを防ぐために、俺は力が欲しい。」
「……アレスらしいな。まあ、少し考えてみろ、私はいつまでも待っているよ。」
ズザッ。
ミラはそっとクロウのそばを離れた。
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