第115話 新たな戦士
「さあ、エリカリット!俺ともっと遊んでくれよ!命の取り合いを楽しめよ!」
「狂ったあんたに、名前を呼ばれるだけで反吐が出るわ!その口閉ざしたる! 削り取れ!
ブォォ!!
ガギーンッ!
葉っぱがドリルのように突撃し、チャクラムを弾きとばす。
「おっとっと。」
一瞬の隙をエリカリットは見逃さなかった。
「脇が空いてるで!
シュンッ!
目にも止まらぬ速さで、上がった右腕を斬りかかる。
しかし、
「はい、捕まえた。」
ガシッ。
何ということだ、ソーマは素手でダガーの刃の部分を掴む。
「っ!?正気なのか、あんたーー。」
「こうでもしなきゃ、近づいてくれないからな!まあ、突き放すけどよ!」
ブンッ!
ガゴーンッ!
エリカリットは投げ飛ばされ、岩の壁に叩きつけられる。
「えほっ。本当、厄介な兄貴や。」
ポタッ、ポタッ。
赤い血が、口からも手からも流れる。
かなりの劣勢だ。
「なあ、そろそろいいじゃねえか!俺のところに来いよ、エリカリット!今なら、器になってるサリアリットも面倒見てやる!」
「そんなつもりは1ミリもあらへん!それに、用が済んだらサリアリットは捨てるつもりやろ!そんなこと、うちは望まへん!」
「はあ、そこまで分かってるなら足掻くなよ。こっちだって暇じゃないんだ、お前とは戦いたいが遅くなればなるほど怒られるんでよ。やっぱり、死なねえ程度に痛めつけてやるか!」
「はぁ、はぁ、ごめんな、サリアリット。必ず詫びはする、だからもう少し付き合ってもらうで。」
シュンッ!
ガギーンッ!ガギーンッ!
2本のダガーと1本のチャクラムが弾き合う。
手数は確実にエリカリットの方が多い、しかし、体に傷が生まれるのはエリカリットのみ。
「ほらほら!そのままじゃ本当に死んじまうぞ!」
「うるさいわ、こっちにも策があるんやで、ゲス兄貴!」
シュンッ!
ガギーンッ!
高速でソーマに近づき、チャクラムを弾くと同時に空高く飛ぶ。
「おいおい、空に逃げたらいい的だぜ!」
ドゴーンッ!
地面から複数の根が生え、貫かんと迫る。
「さあ、それはどうやろうな!
ジャギンッ!ジャギンッ!
縦回転しながら根を弾き、少しずつソーマに迫る。
「なら、これでどうだ!」
シュイーンッ!
落としていたはずのチャクラムが1本、エリカリットの背中から迫る。
「ちっ、このくらい!クロの兄さんをたくさん見てたんや、やったる!」
グルンッ!
ガギーンッ!
体を回転させ、足蹴りでチャクラムを弾く。
ピシャッ。
しかし、右足には大きな傷が。
「ははっ、いいないいな!もっと血を見せろよ、必死になれよ!最後の足掻きを俺に味合わせてくれよ!」
「お望み通り、やったるわ!
フワッ。
ガギーンッ!ガギーンッ!
蝶のように舞い、突撃してくる根を斬りながらソーマまであと30センチ。
「来いよ、可愛い妹!」
「ゲス兄貴、これで終わりや!」
ズザッ!
ガギーンッ!
チャクラムとダガーがぶつかり合う。
そして、
カランッ、カランッ。
2つのダガーが落ちる音が。
「ははっ!俺の勝ちだな!さあ、俺ときてもらうぞ、エリカリットーー。」
「まだ、うちのターンは終わってないで。」
カチャンッ。
エリカリットはゼロ距離で魔銃をソーマに向ける。
「んなっ!?お前、そんなことしたら。」
「相打ち上等や、ゲス兄貴! 破壊し尽くす!
ヒュイーンッ!!
バゴーンッ!
魔銃から巨大なレーザーが射出され、ソーマはその光の中に飲み込まれる。
しかし、
「くっ、やっぱりこの体じゃ厳しいか。」
ズザッ!
バゴーンッ!
攻撃の衝撃に耐えられなかったエリカリットは家の壁に叩きつけられる。
「はぁ、はぁ、これで弾け飛んだか、クソ兄貴。」
スサッ。
エリカリットは前を向く。
すると、
「ははっ、今のは少し焦ったぜ、エリカリット。危うく死ぬところだったぜ、まあそう簡単に俺は死なねえけどよ。」
スタッ、スタッ。
そこには右半身を失ったソーマが立って話していた。
「何でや、何でその体で生きてるんや。」
「ああ、悪いな、これは俺の体であってそうでない。」
「何言ってるんや、ゲス兄貴。」
「証拠によ、ほら。」
グニグニグニッ。
シューンッ。
吹き飛んだはずの体が再生し、ピンピンとしたソーマに戻る。
「くそっ、チートやないかい。」
「まあ、そういうこと。これで分かっただろ、俺には勝てねえって。」
ズザッ。
エリカリットは傷だらけの体を起こす。
「はぁ、はぁ、こんな奴が兄貴なんて、信じたくないな。」
「あはは!さあ、そろそろフィナーレだ!ここで終わりにするのは少し残念だが、時間がないから仕方ないな。」
ズザッ。ズザッ。
一歩ずつソーマが近づく。
「えほっ、えほっ。こうなったら、差し違えてうちが消えたとしてもサリアリットだけはーー。」
「余計なこと考えるなよ、終わるときは一瞬だ。ゆっくりしてな。」
スッ!
チャクラムが太陽の反射を受けて、光り輝く。
「終わらせへん、切り札!神憑ーー。」
シュンッ!
バギーンッ!
何かがチャクラムを弾き飛ばす。
「ん?なんだてめえ、データにない奴だな。」
「そうか、まあ、私のデータをとっても意味などないさ、黒いエルフ。」
ゴスンッ!
ズザーッ!
ソーマは蹴り飛ばされ、数メートル後ずさる。
「えほっ、かなりの力だな、何者だてめえは。」
「名乗るほどのものじゃないさ、たまたま通りかかった流浪の戦士さ。」
「なんや、その大きな斧は。あんた、いったい。」
「勝手に出番を奪ってすまない、だが、顔見知りが命の危険みたいだからね、アトラース家の人間としては見過ごせないのさ。」
ドスンッ。
斧が地面に刺さる。
その姿は、ミラ・アトラースであった。
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