追放された者達、旅をしてたら世界を救っちゃった件

第109話 2人の連携

まずは、アーシェとノエルサイド。

依然として、ゴーレムは怒りを露わにしている。

「このゴーレム、今までの個体よりかなり激情してるわね。これも、操作されてるのかしら。」

「可能性はあると思うよ、ただ、ここで倒さなきゃエデッサが壊滅させられる。」

「そうね、レイヴァーに入ったのだから活躍を期待するわよ。」

「ああ、期待に応えられるよう臨むよ！」

ズザッ！

ノエルが前衛、アーシェが後衛のポジションで戦い始める。

「ぐぁぁ！！」

ブンッ！ブンッ！

ゴーレムはその大きな拳で、ノエルを叩き潰そうとする。

全長は8mほどあるため、1発でも受ければ致命傷だ。

「大柄な分、スピードはそこまでだね。　剛（ゴウ）、四の型（ヨンノカタ）！槌（ハンマー）！」

ガゴーンッ！ガゴーンッ！

蹴り上げからの蹴り落としが顔面を捉える。

しかし、

ギロッ。

その大きな目がノエルを見据える。

「くそっ、タフなんてものじゃないぞーー。」

「がぁぁ！」

ガギーンッ！

ゴーレムの頭突きをノエルは両手でカバーするが、力の強さに押し負ける。

「あなたの敵はこっちにもいるわよ！　斬り落とせ！烈風の翼（ゲイルウィング）！」

ブオンッ！ブオンッ！

スシャ！スシャ！

鋭い風の大きな刃が、両腕に傷をつける。

「うが、あぁ！」

「これくらいじゃダメね、なら！　審判よ！天罰（ジャッジメント）！」

ピカーンッ！

ドゴーンッ！

空から光り輝く雷が脳天目掛け突き刺さる。

「うぐっ！」

フラッ。

少しゴーレムがバランスを崩した隙を、ノエルは見逃さなかった。

「ここだね！　迅（ジン）、六の型（ロクノカタ）！弾頭（ロケット）！」

サッ！

ガゴーンッ！

空高く飛び、重力の加速と共に右拳を顔面に突き刺す。

「ぎやぁぁ！！」

ゴーレムは目を押さえ、数歩後ずさる。

「少しは効いてくれたかな。」

「油断は禁物よ、今までのゴーレムもかなりの強敵だったんだから。」

「分かってるよ、まだ倒し終えてはいないーー。」

シュンッ！

大きな影が2人の目の前に迫る。

(なんで、その体からそんなスピードを出せるなんてーー。)

ノエルは咄嗟にアーシェの前に入りカバーする。

「ノエルランス！？」

「僕は前衛だ、任せてくれ！　迅（ジン）、四の型（ヨンノカタ）！豪弾（マグナム）！」

スッ！

バーンッ！

２つの全力の拳が、正面からぶつかり合う。

「がぁぁ！！」

「くそ、流石に重すぎるーー。」

ズザーッ！

ゴスンッ。

力負けしたノエルは、木に叩きつけられる。

「ノエルランス！」

「僕はいい！アーシェリーゼ避けろ！」

「くっ！　弾け！地の加護（レジスト）！」

ゴゴゴゴゴッ。

ガゴンッ！

かまくらのように岩が隆起し、アーシェを守る。

だが、拳1発で穴が空いていた。

「スピードも兼ね揃えたこのパワー、厄介ね。　眠りなさい！目潰し（ブラックアウト）！」

フワンッ！

闇魔法がゴーレムの目に引っ付き、視界を奪う。

「がぁ？」

「もっと重たいの行くわよーー。」

「ふんがー！」

グルンッ！

体をフル回転させ、辺りの小石や草木を弾き飛ばし、アーシェに傷を与える。

「くっ、頭もかなりキレるわね。」

「アーシェリーゼ！こいつに1対1を繰り返してても埒が開かない、一気に攻め込もう！」

「……そうね、即興でも文句なしよ！私に合わせなさい！」

「なんとか追いついてみせるよ！」

ズザッ！

2人は挟み込む形で、ゴーレムに迫る。

「ぐぁぁ！」

最初のターゲットはノエル。

「単調な攻撃なら、当たることはない！」

ズザーッ！

拳を足元に滑り込んで避け、右足に照準を合わせる。

「迅（ジン）、五の型（ゴノカタ）！砲弾（キャノン）！」

ドスンッ。

両手の掌底突きが、ゴーレムのバランスを崩す。

それに呼応するかのように、アーシェは逆足に走る。

「次はこっちよ！　氷の刃よ！凍刃（フリージングソード）！」

ピキキキッ！

ジャギンッ！ジャギンッ！

氷の刃を生み出し、左足を斬り裂く。

グラッ。

両足が上手く使えないゴーレムは、両膝をつく。

「よしっ、このまま一気に！」

シュッ！

アーシェリーゼが顔面に迫ると、

「がぁぁ！」

ブンッ！

勢いよく頭突きをアーシェに向ける。

「嘘っ、避けられなーー。」

「避ける必要はないよ！　剛（ゴウ）、二の型（ニノカタ）！斧（アックス）！」

グルンッ！

ガゴーンッ！

前回りしてからのかかと落としが、ゴーレムを地面に打ち付ける。

「今だ！アーシェリーゼ！」

「まだよ！」

ブンッ！

前が見えないにも関わらず、左手でノエルを弾き飛ばそうとする。

「くそっーー。」

「お礼よ！　縛り上げろ！岩の鎖（ロックバインド）！」

ゴゴゴゴゴッ。

ピキーンッ！

岩で作られた鎖が、左手を拘束する。

「ありがとう、アーシェリーゼ。」

「お互い様よ、さあ、終わらせるわよ！」

ザッ！

ノエルは空高く飛び、アーシェは闇魔法を唱える。

そして、

「そこで寝てなさい！」

「重力落とし（グラビティショット）！」

ドスンッ！

ガスッ！

闇魔法で体を押さえつけ、空から加速した拳が顔面を捉える。

共鳴術技（リンクアーツ）の発動だ。

「がぁ、ぁ。」

シューンッ。

ゴーレムは白い砂に変わっていった。

「ふう、なんとか倒せたね。」

「ええ、あなたもなかなか役に立ったわ。」

「それはどうも、これからもよろしく頼むよ、アーシェリーゼ。」

「そうね、少しは期待してるわ。」

2人のギクシャクした関係が、少し解消された気がした。