第107話 こちらから攻める

「どういうこと!?言葉がわかってるってことは、あのゴーレム達は、自分の意思で動いてるってこと?」

「その可能性もあると思います。実際、他の大きなモンスター達とは違って、しっかりと戦い方を認識してるように思えます。」

「言われてみれば、爆発したアーマーゴーレムは自分の意思で俺たちを狙ってきてた気がする。だけど、あいつはなぜあんなことになっちまったんだ?」

「それは、近くで操っている張本人が隠れてるんだと思います。力を増幅させようとしたけど、まだ完全に生態系を理解してない彼らは力を与えすぎて悲惨なことになってしまった。」


リィンが調べたことを端的に話していく。


「リィンの言うこと、確かに筋は通ってるわね。実際、何度か戦って見て他のモンスターとの違和感は感じたわ。」

「てことは、チップを埋め込まれてテイマーに操られてる巨大モンスターと、何者かによって操作されてる新生モンスターのゴーレムが主な敵ってことだよね、サリア達の敵多すぎ!」

「全くだな、こっちは人手が足りてるわけじゃねえのに。……じゃあよ、俺がゴーレムから聞こえた気がした声って……。」

「ええ、おそらく融合させれらた新生モンスターの声だと思います。」


ギリッ。

クロウの拳に力がこもる。


目も鋭くなり、怒りを露わにする。


「やっぱり、許せないわね、蠢く会。そして、その力を魔族達も着々と使えるようになってきている。WC計画ワールドコンクエストのために。」

「そして蠢く会は、僕たちが何度も聞いてる白き世界成就のために動いてる、そしてさっきの戦闘でも言ってた第2段階、これは何を意味してるんだろう。」

「ノエル、白き世界成就について他に何か知らないか?」

「すまない、僕もそこまで詳しく聞ける立場じゃなかったからこれ以上の情報は……。」


スサーッ。

ブリーフィングルームに静かな風が吹く。


やるべきことは分かっている、蠢く会と魔族の両方を止める、ただそれだけだ。



だが、



何から手をつければいいのか、この情報量だけでは判断できなかった。



すると、リィンが静寂を破り話し始める。



「そしたら、一度ノエルさんが情報を手に入れてた町に行くのはどうですか?今は、蠢く会とのパイプはないと思いますが、そこに出入りしてる以上何か情報があってもおかしくありません。」

「確かにそうだな、ノエル、お前が情報を集めていた達はどこだ?

「ああ、アルタの先にある町、エデッサだよ。」

「エデッサ!?」


クロウの目が大きくかっぴらかれる。


「そこって確か、クロウが私を助けてくれて運んでくれた町よね。」

「そうだな、そこに蠢く会がいたなんて予想もしてなかったぜ。」

「なら行ってみようか、僕もあの町ならもしかしたら役に立てるかもしれない。」

「よし、じゃあ新レイヴァー、ミッションスタートだよ!」

「みなさん、どうかご無事で。」


ズザッ。

スタッ、スタッ。

レイヴァーの4人はギルドを出て、エデッサに向け歩き始めた。


「少しでも、ゴーレムの情報を集めておかないと、レイヴァーの皆さんに危険な目にあって欲しくない。あたしも、やれることをやらなきゃ!」


ズザッ。

リィンはギルドに戻り過去の資料などを漁っていた。




ナウサを出て数十分、レイヴァーはエデッサに近づいていた。


「ねえ、ノエルくんはその戦い方どこで覚えたの?クロくんの武術とも少し違うし、そう言う流派があるの?」

「いや、僕のは騎士団の中でよく使われてた騎士道の武術を自分なりにアレンジしたものだよ。まあ、アレンジしすぎて原型がないものもあるけどね。」

「アレンジね、ノエルランスはかなり器用なのね。騎士団で使われてたのなら、かなり洗練された技のはずよね?それを自分好みにするなんて。」

「個を出していかないと、いざ戦うってなった時に完全に読まれてしまうこともあるからね、想像力ってのはとても大事だと思ってるよ。」


いつもより静かなレイヴァーは、少し違和感がある。


それは、クロウ自身が1番感じていた。



ノエルが仲間になったことで、戦力は大きく上がったが関係値がまだない、そのせいでいつものサリアの明るさと、アーシェの抜け感がない。



そこでクロウは、アーシェを活用することにした。



「なぁアーシェ、連戦になるけど平気そうか?」

「ん?ええ、私は2人のおかげでそこまで戦ってないから平気よ、どうしたの急に?」

「いや、そっちは気にしてないんだけど、いつも腹空かしてるアーシェのことだから集中できないんじゃないかと思って。」

「ちょっと、変なこと言わないでくれる!まるで、私が食いしん坊みたいじゃない!」

「いや、それは当たってるだろ。」


ボアッ!

アーシェの手のひらに炎が浮かぶ。


「今なら、ミディアムくらいで許してあげるわよ?」

「いやいや、事実を言っただけだろ!」

「いいぞ!アーちゃんやっちゃえ!」

「サリアはこっちの味方をしろ!大切なリーダーが焼かれちゃうぞ!」

「ふふっ、あはは。」


ノエルが急に笑い出す。


「おい、ノエル!笑ってる場合じゃないぞ、俺が焼かれそうになってるんだっての!」

「なるほど、これがレイヴァーの強さなのかもね、改めて実感したよ。」

「ノエルくん、どういうこと?」

「レイヴァーは、チームとしてかなり完成している。お互いのことを知り尽くしてるからこそ、こんな会話もできる。戦いの前にリラックスできるのはとても大切だと思うからね、すごいと思うよ。」

「何言ってんだ、お前もこれからこっち側に混ざるんだよ!」


ドクンッ!

ノエルの心臓に大きな衝撃が。


クロウの何げない一言かもしれないが、ノエルはどこか救われた気がした。


「あははっ、焼かれるのは遠慮したいけどね。」


そうこうしてるうちに、エデッサが見えた。

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