第106話 調査結果
「ノエルランスの過去、確か兄貴も揃ってアイアコス家を出たって言ってたな。」
「ああ、僕は5人兄弟でその次男でね、今家は三男が継いでるんだ。」
「サリアさ詳しくわからないけど、そういう跡取りって長男の人が引き継ぐのがセオリーなんじゃないの?」
「普通はそうだね、けど、兄さんも僕もアイアコス家の中で失敗作だったんだ。」
「失敗作?どういう意味だ?」
ここからは、ノエルの過去の話。
ノエルは18年前にこの世に生を受け、アイアコス家次男として誕生した。
兄の、ホルムは2つ年上の存在。
計5人のアイアコス家の子が産まれ、もともとアイアコス家は王国の縁の下の力持ちのような存在で、なくてはならない存在であった。
そのため、多くの教養を身につけ、武術を身につけ、アイアコス家に相応しい存在にならなければいけなかった。
しかし、そこで一つの事件が起きてしまう。
ノエルが8歳の頃、血のホワイトデイが起き、アイアコス家の雰囲気が一変。
成長が周りと比べて遅かったホルムとノエルは、家族内で差別されるようになっていった。
食事は2人だけで取らされ、武術や勉強は自己流でやるように言われ、着実に孤立させられていった。
理由は分からない、だが、両親や周りからの視線が冷たくなっていったのは、子供の2人ですら感じ取ることができた。
そこで、ホルムが1つノエルにある事を提案する。
アイアコス家からの脱走。
ここにいては、そのうち自分たちの命も危ないと判断したホルムは、同じ待遇になっているノエルと共に逃げ出す事を提案した。
少し迷っていたノエルだが、ホルムの本気の目を信じた彼は、一緒にアイアコス家を出て行った。
もちろん、アイアコス家ではちょっとした騒動になっていた。
2人の後継候補が逃げ出した事で、自分たちの秘密がバラされるのではないかと。
2人は少し離れた町に転がり込み、ギルドのお手伝い役として仕事をして生活して行った。
慣れない土地ではあったが、上手く行ってるように見えた。
だが、
何より2人を傷つけたのは、家を逃げ出して数ヶ月経過しても捜索願が一度も出されなかった事だ。
アイアコス家がある町から、1時間もいらない距離感にいながら情報は何も入ってこなかった。
そして、痛感してしまった。
2人はいらない存在なんだなと。
もしかしたらなんて希望は、もってはいけなかった。
もちろん、家族を恨んだ。
そして月日が経ち、ホルムが15歳、ノエルが13歳の時。
ホルムは町から出ていくと言い出した。
もちろん、ノエルも付いていくと言ったが、
「お前はこっちには来るな、そこでしっかり生きてくれ。」
ホルムの一言で、ノエルは動けなくなっていた。
それからいろんな町を渡り歩き、武術を磨き、流浪の戦士として生き延びていた。
「これが、僕の過去だよ。そして、蠢く会のことを話してる人に出会って、加入するにはどうすればいいかを聞きたいってことで行動を同じくしてたんだ。」
「お前も、かなり不幸な過去を持ってたんだな。同情するぜ。」
「いいや、君たちもそれ相応の過去を持ってるんだろ、辛かったのは僕だけじゃない。それに、今の僕は役に立つかわからない、何てったって、蠢く会とのパイプがなくなったしまったんだからね。」
「……まあ、まだ全てを信じることはできないけど。」
スタッ、スタッ。
アーシェはノエルの目の前に立つ。
「アーシェリーゼ、なんだい?」
「うーん、その目は本気のようね。私たちと共に行動するということは、たくさんの敵と戦うことになるわよ。そして、背中を預け合う存在になる、背負う責任も相当なものになるけど覚悟はいい?」
スッ。
ノエルもアーシェのことを見つめ返す。
「ああ、少しの間だけど君らを見ていて、同じような存在になりたいと心から思った、疑われるのは仕方ないと思ってる。だから、行動で示していきたい。」
「分かったわ、前言撤回するわ。半々と言ったけど、7:3であなたを信じるわ、ノエルランス。」
「サリアも、ノエルランスくん、いや、ノエルくんと一緒に旅してみたい!クロくんもいいんだよね?」
「ああ、俺とノエルの力は相当なものだと思ってる。これからよろしくな、ノエル。」
「ああ、全力を尽くすよ。」
ガシッ。
2人は固い握手を交わす。
レイヴァーが正式に4人となった瞬間だ。
「それでは、レイヴァーの皆さんも戦力アップしたようですし、持ち帰っていただいた資料をまとめて見たので共有しますね!」
「ああ、頼むぜ、リィン。」
ペラッ。
4人の元に2枚の紙が配られる。
「まず初めに分かったことは、皆さんもご存知の通りゴーレムはモンスターと何かを媒体とした、新生モンスターとして生み出されてます。そこには、アーマーゴーレム、バーサーカーゴーレムと複数の種類が存在するみたいです。」
「今まで私たちが戦ったのは、アーマーゴーレムと普通のゴーレムの2種類ね。」
「はい、そしてもう一つ大きなことが分かりました。どうやらゴーレム達は、あたし達の言葉を理解してるらしいんです。」
「えっ!?」
まさかの報告に、その場の空気が変わった。
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