追放された者達、旅をしてたら世界を救っちゃった件

第105話 ノエルの過去

スタッ、スタッ、スタッ。

クロウとノエルはナウサまで歩く。

レイヴァーに入りたいと言ったノエルについて、クロウは考えていた。

「俺は大歓迎だけど、アーシェとサリアがどう判断するかだな。俺より冷静な2人は、まだノエルを信じ切ってはいないと思う。」

「まあ、そうだよね。変なタイミングで抜けたりして、クロウが暴走した時も何もできなかった。だから、2人にも信頼してもらえるように頑張るよ。でも、なんで君は疑わないんだい？」

「疑う？ノエルをか？」

「そう、さっき戦ったのは僕の実の兄だ。普通は、敵と関係を持っている人を素直に仲間にはしないと思うんだ。」

ズザッ。

クロウは歩みを止める。

「まあ、なんていうかお前の兄さんは本当に蠢く会を信じてるんだと思った。だから、確実にノエルを殺そうとした。それに対して、お前は止めるのではなく目を覚まさせようとしてたよな。」

「そ、そうかな？必死過ぎて、僕は覚えてないよ。」

「それくらい本気だったんだろ、兄を救いたいという気持ちが。そんな奴の意思を、俺は尊重したいだけだ。選択が正しいか間違いか分かるのは、その後の行動次第だと俺は思う。」

スッ。

クロウはノエルを見つめる。

「もちろん、俺は俺を信じる。お前がどんなやつかもっと知りたいし、戦力になってくれたら心強い。俺も、アーシェ達を説得するのを手伝わせてもらうぜ。」

「……ありがとう、クロウガルト。その気持ちだけで僕は十分だよ。さあ、早く戻ろうか。」

「おう、そうだな。」

スタッ、スタッ、スタッ。

2人はナウサにたどり着く。

「そんじゃあ、まずはギルドに向かうか。もしかしたら2人もそこにいるかもしれない。」

「わかった。」

キィーッ。

ギルドのドアを開けると、

「あ、クロウさん！ノエルさん！お帰りなさい、ご無事で何よりです！」

「おう、リィン。しっかりと帰ってきたぜ、アーシェとサリアはいるか？」

「はい！2人ともブリーフィングルームにいますよ、あたしも行きますから来てください！」

スタッ。

3人がブリーフィングルームに向かうと、

「あら、意外と早いお帰りだったのね、お疲れ様。」

「なーに、アーちゃんカッコつけてるの！さっきまで、私も残った方が良かったかもってあたふたしてたのにーー。」

「してないってば！」

グニッ！

アーシェがサリアの頬をつねる。

「痛い痛い！」

「おいおい、落ち着けって2人とも。俺たちがそう簡単にやられるなんて思ってないだろ？ゴーレムの資料も無事なんだし、問題なしじゃねえか。」

「まあ、そうね。それじゃあ、先にリィンにもお願いしてゴーレムについてまとめてたから話し合いましょうか。」

「あ、その前に少しノエルに時間をもらえないか？」

スタッ。

ノエルが一歩前に出る。

「なに？何かあったの？」

「なんか難しそうな顔してるね、サリア達何かした？」

「2人に相談があるんだ。……僕を、レイヴァーの一員にして欲しいんだ。」

「……。」

シラーッ。

その場の空気が少し冷たくなる。

心なしか2人は不安を顔に浮かべた。

そして、最初に口を開いたのはアーシェだった。

「なんで、レイヴァーに入りたいの？」

「僕も、みんなと同じく多くの人を助けたい。蠢く会や、魔族達と戦って人の役に立ちたいんだ。」

「それだけ？」

「それだけってのは、どういう意味だい？」

ズザッ。

アーシェはおもむろに立ち上がる。

「ノエルランス、あなたは、蠢く会のメンバーじゃないの？」

「っ……。」

「おい、アーシェ、いきなり何を言ってーー。」

「クロウは黙ってて！」

ギリッ。

アーシェの目が狼のように鋭くなる。

「私は疑問だったのよ、あなたがどこで蠢く会の情報を集めてるのか、なんで私たちでは知り得なかった情報を手に入れられたのか。」

「そ、それは。」

「それと、2通の不思議な手紙。私たちにモンスター退治を依頼するあの手紙に書いてあったローマ字は、あなたのイニシャルを取ったものよね。初めがN、次がO。」

「……ああ、そうだ。」

ノエルは素直に打ち明ける。

「確かに、僕は蠢く会のメンバーと交流をしていた。ただ、もうそれは出来なくなったんだ。」

「どういうこと？裏切ったってこと？」

「いや、裏切るも何もまだメンバーではなかったし、交流していた僕の友が蠢く会によって消されたんだ。だから、彼らからは距離を取ろうとした。」

「じゃあ、なんで手紙で私たちにモンスター退治を依頼したの？」

「僕だけでは倒さないと判断したんだ。かといって、放っておいていいものでもない、だったらレイヴァーの力を借りようと思ったんだ。クエスト依頼ではなく怪しさを出せる手紙なら、最優先で来てくれると思ってね。」

ズザッ。

アーシェは静かに座る。

「私はチームに入ることに関しては半々よ。もし入ったとしても、警戒はし続けるわ。」

「サリアも今は心からはいとは言えない。ただ、ノエルランスくんのことについては、もう少し知りたい。何か、教えてもらえるものはない？」

「そうだね、僕も話そうと思ってたんだ。なぜ僕が、アイアコス家を出たのかとかね。」

ノエルは自分の過去について話し始めた。