追放された者達、旅をしてたら世界を救っちゃった件

第103話 力合わせ

「くそっ、なんなんだこいつは！人族じゃねえのかよ！」

「いいや、ホルム兄さんはただの人族だよ。けど、あの力は何かおかしい。」

「お前もこの力が欲しいか、ノエル！アイアコス家を追い出された同志として、お前にだけならくれてやってもいいぜ！」

「ノエル、あんなのに耳を貸すな、俺たちでこいつを抑えるぞ！」

「ああ、分かってる！」

ズザッ！

2人は同時に走り出し、再びカイアスと戦い始める。

「はぁ、じゃあ不死身のホルムと人族2人組、どっちが強いかな！！」

ガギーンッ！ガギーンッ！

薙刀で大剣を受け止め、ノエルの足技をもう片方の手で受け止める。

「いいね、こんなに連携を取れるとは驚いたよ、ノエル！」

「僕だって、変わってきてるんだよ！もう兄さんの知ってる、ノエルランスじゃない！　迅（ジン）、一の型（イチノカタ）！貫通撃（ライフル）！」

ズガッ！

ガゴーンッ！

右拳の2段攻撃がカイアスを捉える。

「へへっ、そうか、嬉しいぜ兄貴としてよ！」

「嬉しいなら襲ってこないで欲しいね！　剛（ゴウ）、三の型（サンノカタ）！鎌（サイス）！」

ジャギーンッ！

薙刀と鎌のように振り切った足蹴りが火花を散らす。

「けど、お前だけじゃ弱いな！」

ズザッ！

そこに、クロウが追い打ちをかける。

「じゃあ、俺も混ぜ合わせたらどうかな！　 獣の声（ケモノノコエ）、二式（ニシキ）！獅子の重撃（ネメアー）！」

ガゴーンッ！

カイアスは大剣の衝撃に耐えられず、地面を滑る。

着実に、カイアスの体には傷が生まれている。

「なあ、お前の兄貴って何者だ？ただのアイアコス家の長男ってだけじゃねえだろ。」

「うん、彼もかなり訳ありでね。後で説明するけど、ここで時間を費やすのは惜しい、早く決着をつけよう。」

「ああ、なら俺が力を解放するーー。」

「あはははっ！！」

シュンッ！

ガギーンッ！

甲高い笑い声をあげ、途端にギアを上げてクロウを攻める。

ギリギリ2刀で防げたレベルだ。

「うぐっ、いきなりギアを上げてきやがった。」

「そりゃそうだろ、こんなに楽しい状況は楽しまなきゃ損だろ！」

「そうかよ、なら付き合ってやるよ！　空の光（ソラノヒカリ）、六式（ロクシキ）！ 下弦の月（カゲンノツキ）！」

ズザッ！

ジャギーンッ！

滑り込みながら、2刀で足を斬る。

「痛っ、やってくれるじゃねえかクロウガルト！」

ガゴーンッ！

ズザーッ！

薙刀を思いっきり投げ飛ばし、クロウを弾く。

「なんだ、いきなり強さが増した？まさか、これまで手加減してたのか？」

「クロウガルト！大丈夫か！」

ノエルの声が響く。

「ああ、なんとかな。ただ、こいつの力が急に増してる、本気を出したってところか？」

「いいや、違うよ。兄さんの体を回る魔力が変わった、何か別の理由がありそうだ。」

「マジかよ、だったらどうする、そう簡単に止められそうにないぞ。」

「分かってる、兄さんには僕が話をつけて見せるよ。」

「ノエル、何をするつもりだーー。」

スサーッ。

ノエルの周りの空気が重くなる。

そして、

「力の解放（パワーブースト）！」

ゴォォ！！

ノエルの力が増幅し、両手が真っ赤に染まる。

「ノエル、その力。」

「ああ、君たちと同じ力を解放するものだよ。クロウガルト、そこで少し見ていてくれ、これが僕の覚悟だ！」

ザッ！

ノエルはカイアスに突っ込む。

「へぇ、俺とタイマン張ろうってか！偉くなったもんだな、ノエルランス！」

「言っただろ、今の僕はカイアス兄さんが知ってる僕じゃないよ！　剛（ゴウ）、五の型（ゴノカタ）！麻布螺（マフラー）！」

グルッ！

ズザッ！

足をマフラーのように首を巻き、そのまま投げ捨てる。

「うおっ、独特な技だな、お前らしい相手が嫌がることをしやがるぜ！」

「そうかな、僕は全くそのつもりはないよ！　迅（ジン）、六の型（ロクノカタ）！弾頭（ロケット）！」

「はぁぁ！！」

サッ！

ガギーンッ！

空高く飛び上がり、その落下の加速をつけた拳と薙刀が激しくぶつかり合う。

バヒューンッ！

辺りには凄まじい衝撃波が。

「ノエル、お前そんな技まで使えたのかよ。想像以上の強さじゃねえか、けど、やっぱりあいつの兄貴は何かおかしい。俺の体が、恐怖とは違う何かを感じてる。」

バギーンッ！バギーンッ！

2人の攻防がさらに激しくなる。

「兄さん、なんで僕たちを襲うんだ！蠢く会の目的はこの世界を変えることで、他の種族や人を襲うことではないはずだ！」

「ああそうだよ、ノエル！だけどよ、邪魔者ってのは先に処理しとかねえと後々面倒くさくなるもんだからな、特にレイヴァー！あいつらは消しておくべき存在だ！」

「彼らはこの世界の人たちを守り続けている！そんな彼らを消すことに、なんの意味も感じない！」

「お前も分かるだろ、アイアコス家にいたなら！力があるものしか周りを従えさせられない！なら、自分より力を持ってる存在は先に消しておくに限るんだよ！」

ガギーンッ！

2人は距離を取る。

「全てを拒絶するつもりか！兄さん達は！白き世界の中に、入りたいと願う人たちを入れないつもりか！」

「そうだな、白き世界には選ばれた者しか必要ないんだよ！」

「そんな世界ふざけてる！全てを否定しては、自分達以外存在しない今までの歴史を否定する姿になってしまう！」

「それでいいんだ！お前も気づいてるだろ、計画は第2段階に入ってる、早く戻らねえとお前も終わるぞ。」

ドクンッ！

ノエルの心臓が大きく鼓動する。

度々出てくる第2段階、それが指す意味とは。