第98話 蠢く会との戦闘
スタッ、スタッ、スタッ。
ノエルを含めたレイヴァーは、キルキスの戦士達に別れを告げ、魔族大使館向け歩いていた。
キルキスの戦士達は、これからも協力してくれることを約束してくれたおかげで、レイヴァーの戦力アップに成功していた。
だが、敵の主力でもあるゴーレムについて解明しなくては、人族側の被害も増えていく一方。
なんとしても、解決の糸口を掴まなくてはいけなかった。
「魔族大使館はここから近いのかい?」
「ナウサの方へ向かう途中で、少し道を外れた山の方にあるぜ。名前の通り、血の気の多い魔族が大勢いるから、余計な戦闘は避けたいな。」
「分かった、なんとか見つからないようにステルスで動かないとだね。」
「アーちゃん、ギルと出会ったらどうする?最悪、アーちゃんの正体がバレちゃうかもしれないよね。」
「その可能性もあるけど、それ以上に大きな収穫がある気がするわ。バレないことに越したことはないけど、最悪のパターンは理解してるつもりよ。」
スタッ、スタッ。
少し歩くと、だんだん魔族大使館が見えてきた。
「あれだ、例の場所は。」
「久しぶりに来たわね、それじゃあ早速クエストスタートしましょうか。」
「ああ、そうだねーー。」
バゴーンッ!バゴーンッ!
4人の目に入っている、魔族大使館から大きな轟音と共に屋根や壁が吹き飛び火が上がる。
事故などではない、どう見ても意図的に起こされた爆発だ。
「は?爆発?」
「何が起こってるの?魔族だからって、自分の家の中で暴れたりはしないよね!?」
「そんな血の気の多いやつを、アテナイの魔族大使館に派遣しないわよ、何か起きてる。行きましょう!」
「ああ!」
スタタタタッ。
4人は爆発のあった大使館まで走る。
ドゴーンッ!バゴーンッ!
さらに爆発音は響き渡り、大きな屋根が崩れ落ちていく。
「くそっ、匂いや音じゃ何がいるか分からねえ。アーシェ!何か感じられるか!?」
「魔族の魔力は感じるわ。後、これは、人族の魔力?」
「え、人族?それって、人族が魔族の大使館を襲ってるってこと!?」
「理由はどうであれ、ギルが殺されるか捕まる方が厄介だ!早く行こう!」
ズザーッ!
4人は急ブレーキをかけ止まる。
するとそこには、
「ぐはっ、こいつら、なぜ。」
「お前、ギル!」
「はぁ、はぁ、なんだよ、レイヴァーまで来るってか、流石に詰みか。」
「なあなあ、ワニくん弱すぎない?そろそろ本気で殺しちゃうよ?」
スタッ、スタッ。
ギルの視線の先から、1人の男の声がする。
その男は、黒いローブを着ており顔が見えない。
背の低い体で、右手にメイスを持ちクルクル回している、
「げほっ、てめえらか、蠢く会ってのは。」
「そうだよ?弱々のワニくん!まあ、邪魔者なのは変わらないからね、ここで死んじゃえ!」
ブンッ!
目にも留まらぬ速さで男はギルに接近する。
「くっ……。」
「ははっ!!」
ガギーンッ!
メイスが激しい金属音を立て、何かに受け止められる。
「あん?なんだお前?」
「悪いな、俺もこいつに用があるんだ、勝手に殺されては困る。」
「生意気言ってんじゃねえぞ、クソガキーー。」
「貫け!
バキキキッ!
ガゴーンッ!
地面から氷柱が生え、男を襲う。
「おわっと!」
スタッ。
アーシェの攻撃を反射で避け、距離を取る。
「はあ、もう少しでこのワニを殺せるところだったのに、余計なことしないでよ。」
「言っただろ、俺たちもこいつに用があるんだ。そう簡単に殺されたら、困るんだよ。」
「それに、蠢く会のあなたにも話を聞きたいわ。大人しく、話をさせてくれる気はある?」
「あはは!!そんな気あるわけないじゃん!敵が増えた、それもメンバーから報告があったレイヴァーでしょ!やり合いたくてたまらないよ!」
ズザッ!
メイスを構え、クロウ目掛け突撃する。
「こいつ、バーサーカーかよ。
スッ!
ガギーンッ!
2刀の上段斬りがメイスとぶつかり合う。
バヒューンッ!
ぶつかり合った武器の衝撃波が、辺りに広がる。
「いいね、あのワニより全然強いじゃん!」
「お前、戦いを楽しんでるな?」
「当たり前じゃないか!弱い奴をいたぶって、強い奴には屈辱を与える!こんな楽しいことは他にないね!」
「いかれてるわね、あなた! 燃やせ!
ボァァ!!
ズザッ!
炎の玉を、容易く避ける。
「何だ、2人も僕と遊んでくれるんだね?」
「あなたの言う遊びは、どれだけ危険なものか教えてあげるわ。」
「そうだな、久しぶりに2人でやってやろうぜ、アーシェ!」
ドゴーンッ!
クロウとアーシェの後方から、さらに大きな爆発音が聞こえる。
「まだ敵が!?」
「ガォォ!!」
反対側から、1体の大きなモンスターが迫ってくる。
「ねえ、あれって。」
「ああ、サーベルウルフの巨大サイズだ。あれも、作り出されたものかもね。」
「じゃあ、サリア達でやるしかないね!」
「分かった、サリアリット、カバーは任せるよ。」
「任せて、ノエルランスくんも無理はしないでね!」
ズザッ!
サリアとノエルも、巨大なサーベルウルフ向け走り出す。
2チームの戦いが、突如始まってしまった。
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