第97話 2度目の大使館

スタッ、スタッ。

レイヴァーとノエルはギルドに戻ってきた。


「おう、何か情報は聞けたか?」

「あまり大きな情報を得られませんでしたが、収穫もありました。皆さんを、集めてもらえませんか?」

「みんな?わかったぜ。」


スタッ、スタッ。

1人の冒険者が辺りの戦士を集める。


「よう、アイアコスの戦士様、ここら辺の冒険者はこれで以上だ。」

「ありがとうございます。では少しだけ、僕の話を聞いてほしい。」


スッ。

ノエルは皆の前に立つ。


「先はどの魔族から得られた情報は2つです。

1つ目は、彼らはWC計画ワールドコンクエストによって、この世界の生き物を間引いて魔族だけの世界を作り出そうとしている。」

「はぁ!?そんなことが可能なのか?」

「実例があります。血のホワイトデイ、これはオールドタイプをニューマンに書き換えた大きな事件でした。故に、ここにいるクロウガルトを除く、大半の戦士はニューマンに変わってしまった、ただ、なんの違和感も感じずに。」

「な、なるほどな。」


ノエルが淡々と話していく。


「そしてもう1つ、この世界は魔族だけによって支配されようとしている。余計なものは、全て排除することだ。つまり、僕たちも彼らに邪魔と判断されたら、問答無用で消されることになる。」

「嘘だろ、なんでそんなことを!この世界は、今までに4カ国が手を取り合って作り上げた世界だ。そんな歴史あるものを壊そうとするなんて!」

「理由はまだ詳しくわかりません。ですが、この世界に魔族は何かしらの野望や疑問を抱えている。このまま放置していては、いつかアテナイにも被害が出て、取り返しのつかないことになりかねない。」

「くっ……。」


屈強な戦士達も、あまりにも大きな衝撃に言葉を失う。



「けどよ、俺たちは絶望を与えに来たわけじゃ無い!」

「あれは、レイヴァーのリーダー?」


ズザッ!

クロウが一歩前に出て話し始める。


「魔族が勝手にやろうとしてることを、全て鵜呑みにすることはねえ。この世界は、魔族も含めた4つの種族が作り上げてきた結晶体だ。それを壊そうとすることが、俺は間違ってると思う!」

「レイヴァー……。」

「確かに、強大な力を目にして、怖気つかずに戦うのは相当の精神が必要になるわ。でも、考えてみて!もし私たちがここであきらめて、これから先生まれてくる自分の息子娘、孫の代にまで同じ経験をさせたい?」

「そ、それは。」


クロウとアーシェの声には迫力が増されていく。


「今少しでも怖いと感じたやつは、これからの戦いには行かない方がいい。無駄に死んでほしくないから。けど、少しでも闘志が湧き出る、今の世界のまま成長していきたいと思う者は、俺たちに手を貸して欲しい!」

「サリア達は、確かに特殊部隊みたいに動いてるけど、作り上げたい世界は皆と同じ、この世界をより住みやすい場所に変えたいだけなの!だからお願い、サリア達に力を貸して!」


スッ。

3人は戦士の前で頭を下げる。



「そ、そうだね。僕からもよろしくお願いする。」


スッ。

ノエルも背中を曲げ、頭を下げる。




場の空気が、かなり、重くなった。


それもそのはず、今のまま戦っていればもしかしたら今の暮らしをキープできるかもしれない。



しかし、今回のような騒動が起きた場合、自分たちだけではどうにもできない。

自分達がこれからを生きるために最善の方法は。




「わかった。俺たちキルキスの戦士はレイヴァーに従う。この命はこの国を守るため、レイヴァーの邪魔する者を排除するために使う。もちろん、お前達の同じ未来を見るためにな。」


スッ。

リーダーのような屈強な戦士が、右手を伸ばす。


「ありがとう、あんた達がいてくれるだけでかなりの戦力アップだ。嬉しいよ。」

「まあ、お前達には敵わないけど、少しは助力するさ。」

「じゃあ、俺たちが行動する時のモットーを2つ言うな。」



スタッ。

クロウは全員の前にでる。



そして、



「おれ達レイヴァーの守るべきことは2つ!

1つは、自分の命がやばいと思ったら必ず逃げろ!

2つ、自分のためでも、仲間のためでも無い、その力は助けたいもののために全て捧げろ!」


ズーンッ。

クロウの心からの叫びが、あたりに響き渡る。


「これが俺たちのモットーだ、何か不安のある奴はいるか?」



少し間が空き、



パチッ、パチッ、パチッ。

1人ずつ着実に拍手が起きていく。



「分かりやすくていいな、要は守りたい者を守ればいいんだな!」

「そして、無理はしない。バカでも分かるぜ!けど、とても気にいった!」

「やろうぜ、キルキスの戦士!これからは、レイヴァーのために彼らに負けない功績をあげるぞ!」

「おおっ!!」


キルキスの士気はみるみるうちに滾っていた。



その姿を、アーシェは遠くから見つめていた。


「どうしたの?アーちゃん?」

「いえ、クロウってやっぱりすごいなって思って。誰かを惹きつける力というのは、これまでの誰よりも群を抜いている。彼についてきて、良かったって感じれるわ。」

「あれあれ?やっぱり、アーちゃんクロくんに恋してるんじゃないの?」

「し、してないわ!変なこと言わないで!」


アーシェは顔を赤くしながら、そっぽを向く。



(この感情は、多分尊敬よね。私もああなれたらいいって考えてる、けど、本当に私の中にも愛という感情があるなら。)



スッ。

もの寂しげに、アーシェは空を見つめた。



そんな中、クロウが次の作戦を言い渡す。



「なあ、ギルのいる大使館に突撃しないか?

あいつがアーマーゴーレムの石を持っていった。そこにいるなら、話を聞くのが1番だと思うんだけど、」

「そうね、素直にあってくれるか分からないけど、いく価値はあるわ。みんな、準備はいい?」

「うん、いいよ!」

「僕も大丈夫だ。」

「そんじゃあ、次は魔族大使館だな!」


スタッ、スタッ、スタッ。

4人は近くにあるギルの居城、魔族大使館に向かった。

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