第96話 魔族の狙い

スタッ、スタッ、スタッ。

ノエルを先頭に、レイヴァーはギルドに向かった。


「なあ、ノエル。魔族は何が目的でこんなことしてると思う?1つの意見として聞いてみたいんだ。」

「そうだね、可能性としてあるのは自分たちでこの世界を操りたいんじゃないかな。魔族はその性質上、自分たち以外の種族に服従しない部分があるからね。」

「なるほど、あり得る話だな。」

「まあ、これも魔族達に話してもらえれば分かることだよ。……どこまで話すか、分からないけど。」


スタッ、スタッ。

アーシェは話し合うクロウとノエルを見つめる。


少し、不機嫌そうな表情で。



「わっ!」

「ひっ!?」


ズザッ!

サリアが途端にアーシェの前に顔を出し、驚かす。


「びっくりした、どうしたの、サリー?」

「アーちゃん、顔怖いよ!」

「えっ、元からこの顔よーー。」

「そうじゃなくて!表情!確かに、ノエルランスくんを警戒するのは分かるけど、そんなに睨んでたらみんなが怖がっちゃうよ、サリアも警戒するから少し気を楽にして。じゃないと、キレイな顔が台無しだよ。」

「……そうね、頼らせてもらうわ、ありがとう、サリー。」


少し緊張を解いたアーシェは、2人の後を続く。



そして、ギルドに辿り着き、



「ああっ、君たちはレイヴァーだね?どうしたんだい?」

「少し、魔族に話を聞きたいんだ、牢屋に入っても良いかい?」

「おう、そうか。……あいつら、実はまだ何も話してなくてよ、何か情報を聞き出してくれたら助かるぜ。」

「そうなのか、分かった。僕もやれるだけのことはやってみるよ。」


キィーッ。

ギルドに入り、地下に繋がる道を歩く。



スタッ、スタッ。

少し歩くと、だんだんと牢屋が見えてくる。


じめっとした空間に、狭い部屋が6箇所ほど。



あまり長居したいところでは無い。




「ここか、魔族がいるのは。」

「そうみたいだな、あっ、あの部屋みたいだぜ。」


ズザッ。

4人は、とある扉の前で立ち止まる。



そこには、キルキスの近くで暴れていた4人の魔族が真っ黒な手錠を付け、入れられていた。


「ん?お前達は、アーマーゴーレムを倒した……。」

「ああ、そうだ。少し話をしたいんだけど、いいかい?」

「なんだこいつ、今までの奴と違って随分優しいじゃねえか。」

「そうかい?僕はこれが普通だと思ってるよ。」


スタッ。

ノエルは静かにしゃがみ、魔族の前に構える。



「何も話すことはねえよ、お前達にはな。」

「そうだろうね、じゃあ交換条件と行こうか。」

「交換条件?」

「ああ、君たちにただただ情報をもらうつもりはないよ。さあ、どうする?僕と取引するかい?」


ノエルの眉間にシワがより、少し険しくなる。


「……わかった、その条件とはなんだ?」

「そうだね、内容によってはここから出してあげよう。」

「あなた、何を勝手にーー。」

「待て、アーシェ。」


スッ。

アーシェが叫び出しそうになるところを、クロウが咄嗟に止める。


「離しなさい!勝手なことさせたらーー。」

「分かってる、いざとなったら俺がちゃんと止める。だから、少し俺を信じてくれないか。」

「……あなた、そこまで彼を信じる理由が私には分からないわ。」

「正直、俺にも俺のことが分からねえよ。けど、俺の直感がそう囁いてる、俺のことを信じてくれるなら、少し時間をくれ。」

「はぁ、分かったわ。後悔しないことを願ってるわ。」


スッ。

アーシェはクロウを信じ、その場は引き下がる。



「では、早速質問だ。君たちは、なぜこんなことをする?ゴーレムを使って、何が目的だ?」

WC計画ワールドコンクエストのためさ。それくらい、お前達でも知ってるだろ。」

「では、その計画について教えてもらおうか。」

「知らねえよ、俺たちは。」


ギリッ。

ノエルの目が狼のように鋭くなる。


「嘘だね、君の呼吸は何一つ変わっていない。用意した言葉を言ってるだけだ。」

「な、何を言ってやがる。俺たちの知ってることは何も無い!」

「立場を間違えるなよ、交換条件とは言ったが、君たちは捕まっている立場だ。その上で、使う言葉はしっかり選ぶんだ。チャンスは、そうないよ。」

「……ちっ、分かったよ。」


1人の魔族が、少しずつ口を割る。



「俺たちは、ハデス様の命令で動いている。計画の先に何があるかは詳しく知らねえ、けど、この世界を変えようとしてるのは間違いねえな。」

「どんな風にだい?例えば、蠢く会は世界そのものを作り変えようとしている。君らも、同じ考えかい?」

「いいや、少し違うな。なんでもハデス様は、この世界を魔族だけにしようとしてる。全てを殺すわけでは無い、って言ってたな。」

「魔族に変える?……まさか、血のホワイトデイと同じやり方か。」


サーッ。

その場に、寒さを感じる静かな風が流れ込む。


「さあな、そこまでは分からねえ。まあ、ニューマンを生み出したのはハデス様の力だ、何が起きても不思議じゃねえな。」

「今の魔王が、ニューマンを作り出した……そうか、分かった。」

「俺たちの知ってることはそんくらいだ、ほら、次はそっちの番だぜ。」

「そうだな、なら、これをあげよう。」


チャリンッ。

ノエルは懐から、金属音が鳴る袋を落とす。


「なんだこれ?」

「金だ、どう使うかは頭を回すんだな。」

「おい!これのどこが交換条件だ!」

「だから言ってるだろ、使い方を考えろと、もしかしたら今まで0だった出れる確率が、少しは増えるかもしれないよ。」

「てめぇ、ふざけやがって!」


ガゴーンッ!

魔族は檻に体当たりをする。


それをスルーして、ノエルは外に出ていく。



「クロウ、大丈夫?」

「……悪い、少し整理させてくれねえか。」

「そうよね、ギルドで話しましょう。それと、消せって方が難しいと思うけど、その殺気はどうにかしまいなさい、皆が怖がるわ。」

「ああ、分かってる。分かってるけど……。」

「安心しなさい、あなたの怒りは最もだわ。何も間違っていない、でも忘れないで、私もあなたと同じく今まで以上にキレているわ、あなたは1人じゃない。」


スタッ、スタッ。

アーシェはサリアを連れ牢屋を後にする。



クロウに、重すぎる真実が突き刺さっていた。

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