第95話 蠢く会の目的
スタッ、スタッ。
レイヴァーとノエルはキルキスの町を歩いていた。
ナウサほど人の行き来や、盛り上がりはないが、屈強な体をした人たちが大きな声で商いをしていた。
その姿を見て、キルキスの人たちが強いと言われる所以が理解できた。
「ささやかながら、何かお礼をしたい。命の恩人たちよ、何か欲しいものはあるか?」
「欲しいものか、それなら。」
スッ。
クロウはフォークとナイフの絵が描かれた建物を指差す。
「美味しいものをもらえたらとても嬉しいかな。」
「おお、それくらい任せろ!あの店はここら辺の大男達が胃を満たす場所だ、大層満足してもらえるはずだ!」
「あら、ぜひ入りたいわね。ちょうどお腹も空いてたし。」
「最初から行く気満々だろ。」
「お金のことは気にしないで腹いっぱい食べてくれ!」
キィーッ。
ドアを開き、4人は席に着く。
5分後、
ドタドタドタッ。
大皿が波のように押し寄せる。
「あんた達がこの町を守ってくれたんだね!ほら、うちの名物片っ端から持ってくるから食べておくれ!」
これまた、大盤振る舞いのお店のオーナーさんが、たくさんの料理を持ってくる。
桶に入った緑の葉と赤い果物のサラダに、こんがりきつね色に揚げられた肉、焼かれた巨大な魚やふわふわとしたパンなど各皿に10人前は乗っているであろう大盛りサイズが。
「こ、こんなに大丈夫なのかい?」
ノエルは不安そうにクロウに聞く。
「まあ、余裕だろ、ほら。」
ピカーンッ!
アーシェは目を見開き、今か今かと食べ始める合図を待っている。
「よし、出来立てをいただこうぜ。いただきます。」
「いただきます!」
ガツガツガツッ。
大皿のものをとりわけ、皆食事を進めていく。
店の料理はただ多いだけではなかった。
サラダには、体の健康を意識された多くの野菜が取り入れられており、揚げられた肉は切るだけで肉汁がジュワッと溢れる、クオリティも高いものばかりであった。
この中で1人、明らかに置いていかれている人がいた。
そう、ノエルだ。
「ガッ、ゴクンッ。」
「す、すごいね、アーシェリーゼは。」
「俺はもう見慣れたぜ、アーシェの胃はブラックホールだ、限界をいまだに見たことないくらいのな。」
「アーちゃんは魔力をたくさん使うから、食事もたくさん摂るって言ってたけどノエルくんも同じ?」
「いや、ここまでは規格外だと思うよ。どんなに頑張っても、彼女に勝てるビジョンが浮かばない。」
カチャ、カチャ。
3人も自分のペースで食べ進める。
おおよそ30分後、
「ふぅ、久しぶりにたくさん食べた気がするわ。」
「さすがだな、アーシェは。」
合計15皿の大皿が綺麗に空いている。
7割ほどはアーシェのブラックホールの中に消えたようだ。
「この町の料理は、ナウサよりも迫力あるというか、パンチがあってボリュームも多くて私好みだわ。」
「嫌いなもんなんてあるのか?」
「何言ってるの?誰かが作ってくれたものに嫌いなものがあるわけないじゃない。」
「まあ、それもそうか。」
「アーちゃん、とても良いことをサラッと言うよね。」
スッ。
ノエルが席を立ち、3人の注目を浴びる。
「3人とも、少し時間をもらって良いかい?」
「ええ、ちょうど食事も終わったしぜひ聞かせて欲しいわ、蠢く会のこととか。」
「僕もそのつもりだよ。今僕が知っていること、全て話すよ。」
蠢く会は、7人の幹部で構成されており、現トップがハーデン。
そして、クロウ達はライラとも出会っているため残り5人まだいることになる。
蠢く会の主力は、各地域に点在してる信者と、テイマーによってテイムされたモンスター、そしてゴーレムだ。
テイムされたモンスターには、特殊な発信機をつけることで遠隔でも操作できるようにしている。
過去に出会った、キラーアントやボアホーンから手に入れたチップのようなものがそれである。
ゴーレムもクロウ達が予想した通り、モンスターを素体にして融合した存在。
だが、人を使っているかまでは不明と。
そして、白き世界成就について。
狙いは簡単、この世界を0の状態に戻すこと。
余計な戦争や争いがない、完全平和であった状態に戻し0から作っていくというのが彼らの思想だ。
そこには、とある神の崇拝も関係してるという。
現時点では、人族、巨人族の蠢く会の信者がいることは確認されている。
「これが、僕が集められた情報かな。」
「なるほどな、ろくなこと考えないな、蠢く会の奴らは。」
「本当ね、全てを0にするって正気なのかしら。そんなことしたら、ここまで作り上げるのにかけてきた何千年って歴史が無駄になってしまうわ。」
「それと、ゴーレムについてがサリアは1番気になるね、何をどうやって作り出しているのか、そこの原理が分からないとただただ無駄に多くのゴーレムを倒すことになっちゃう。」
「うん、それは絶対に避けたい。だから、さっきの魔族と話をしようと思うんだ。キルキスの牢屋に入れられてるらしいし、少しは情報を手に入れられると思う。」
ノエルが魔族との話し合いを提案する。
「まあ、それが1番確実だな。俺たちも同行する、尋問は任せても良いか?」
「ああ、幸か不幸か経験したことあるからね、任せてくれ。」
「……。」
アーシェは黙り込んでいる。
彼女は考えていた。
なぜ、ノエルがそんなことを経験してるのか。
普通に生活していて身につくスキルではない。
アーシェの警戒はそう簡単に解けるものではなかった。
そして、店を出た彼らはキルキスのギルドに向かっていた。
魔族達と話をするために。
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