第93話 アーマーゴーレムとの再戦

「がぁぁ!!」


ブンッ!ブンッ!

体長は7mほどあり、まるで動く大木。


加えて、斧とハンマーを振り回しながら突進してくる。


「さあて、見ての通り固いのはお墨付きだ。けど、今の俺たちならいけるだろ!」

「そうね、武器だけじゃなくて体も万全、私たちの力を見せてあげましょう。」

「じゃあ、いつも通りクロくんが近接、アーちゃんが遠距離、サリアが柔軟に対応って感じで!」

「おう!いくぞ!」


ズザッ!

クロウが先頭で走り出し、アーマーゴーレムの足元を潜り抜ける。


「うが?」

「さあて、俺たちの力、しっかり味わってくれよ! 雨の音アメノオト五式ゴシキ驟雨ムラサメ!」


スッ!

サッ!サッ!

足元をくぐると同時に、一撃折りたたみ式剣で斬り、振り返りざまにもう一度傷を入れる。


だが、傷をつけただけであまりダメージは見て取れない。


「がぁ!」

「はぁ、本当に硬いな。俺もゴリゴリのマッチョマンになればもっと切れるんかな?」


ブワッ!

風を切り、大振りの斧攻撃がクロウに迫る。


「遅すぎだ!」


シュッ!

高く飛び上がり、斧を避け、そのまま体を駆け上る。


その勢いのまま、


拳の響ケンノヒビキ七式ナナシキ雷神ライジン!」


シュッ!

バゴーンッ!

体を踏み台にして高く飛び上がり、降下する加速をつけたまま顔面を雷のように殴りつける。


「がぁ。」


ズザッ。

流石によろめいたアーマーゴーレム。


その隙を、アーシェは見逃さなかった。


「さすが、いい拳ね! 斬り落とせ!烈風の翼ゲイルウィング!」


ジャギンッ!ジャギンッ!

風の鋭い刃が両足に傷をつける。


「うがぁ!?」


ガクッ。

力を入れられずバランスを崩したアーマーゴーレムが、両膝をつく体勢になる。


そして、


「最後はサリアだね!  陸の舞ロクノマイ希望の夢想曲ホープトロイメライ!」


グルンッ!

ガギーンッ!

ドリルのように回転し、顔面を捉える。


だが、貫くほどの威力は出せない。


「がぁ!!」

「くっ、重た。」

「そのまま抑えてろ! 空の光ソラノヒカリ初式ショシキ半月ハンゲツ!」


グルンッ!

ジャギーンッ!

空中で横回転した2刀の攻撃が頸を捉える。


だが、強靭な肉体を斬り裂く事はできない。


「ちっ、化け物が!生き物の弱点は頸って相場が決まってるだろ!」

「2人とも!離れなさい!」

「っ!?」

「ぐぁぁ!!」


グルンッ!

その大木のような体を回転させ、2人を弾き飛ばす。


ズザーッ!

なんとか体勢を整え、2人は着地する。


「はぁ、予想通りっていうか、それ以上に硬すぎんだろ。」

「でも、体が軽いおかげで最小限のダメージでこっちは抑えられたね。」

「2人とも!私の動きに合わせなさい!」


ズザッ!

反対側にいるアーシェの声が聞こえるとともに、アーマーゴーレムのターゲットがアーシェに切り替わる。


「ははっ、いいね、アーシェっぽくない戦い方だな!」

「でも、サリア達なら出来る!」


ズザッ!

2人もアーマーゴーレムに突撃する。


「ぐぁぁ!!」


ブンッ!ブンッ!

斧とハンマーが、アーシェの体を吹き飛ばさんと迫る。


(やはり動きは遅い、この前の暴れた時とは雰囲気が違うわね。てことは、何かトリガーがあるということ、ならそれを使わせる前に!)


「鋭いわよ!水の斬撃アクアエッジ!」


ピシャンッ!ピシャンッ!

水魔法の斬撃が顔を狙う。


「ぐっ!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

その攻撃は斧によって容易く弾かれる。


「サリア!」

「OK!」


生まれた僅かな隙を2人は見逃さなかった。


「がぁ!」

肆の舞シノマイ友の協奏曲フレンズコンチェルト!」


シュンッ!

チャキンッ!

回転射出されたダガーが、ハンマーを持つ手を切り裂く。


少し体の反応が鈍くなったところで、


「いくぞ!アーシェ!」

「合わせなさい!クロウ!」


ズザッ!

2人はアーマーゴーレムの真下に潜り込み、


「ぶっ飛べ!」

「空の彼方まで!逆滝リバースウォーターフォール!」


ドゴーンッ!

バシャァ!!

拳で空高く打ち上げ、追い打ちをかけるかのように水が滝のように地面から登る。


共鳴術技リンクアーツの発動だ。


「がぁぁ!!」


バシャンッ!

アーマーゴーレムは持ち前のパワーで、水を弾き飛ばす。


すると、目の前にはサリアとアーシェが。


「サリアたちに貫けないものは!」

「なにもない!氷華の弾丸フリージングスラグ!」


バゴーンッ!

氷魔法を纏った木の塊が、大砲の様に撃ち出される。


共鳴術技リンクアーツの二撃目。


「ぐぁぁ!!」


ガギーンッ!

斧とハンマーで打ち砕かんと対抗する。


ズザッ!

2つの影がアーマーゴーレムの上に生まれる。


「仕上げるぞ!」

「うん!」


空からクロウとサリアが降下してくる。


完全にアーマーゴーレムの背後をとった。



「これは眩しいよ!」

「目隠し必須だぜ!光の翼ヒカリノツバサよ!」


ピカーンッ!

ジャギーンッ!

無属性魔法を纏った折りたたみ式剣が光り輝き、アーマーゴーレムを斬り裂く。


共鳴術技リンクアーツを3連続で発動させた。


打ち合わせなど特にない、即興で成し遂げたレイヴァー。

やはり、彼らの信頼関係は磨きがかかっていた。


「うぎゃぁ!!」


ドスンッ!

大きなダメージを負ったアーマーゴーレムは地面に叩きつけられる。


スタッ。

レイヴァーの3人はアーマーゴーレムの前に立つ。


「よしっ、なんとかなったな。」

「ええ、2人を信じた甲斐があったわ。」

「珍しいな、アーシェからこんなこと急に提案するなんて、明日は雨か?」

「あ?1発ヴェルダンにしてもいいのよ?」

「ほらほら!早く決着をつけるよ!」


スタッ、スタッ。

レイヴァーがアーマーゴーレムに近づくと、


「……て。」


ピクッ。

クロウの耳が何かを聞き取る。


大きな音ではない、しかし、確実に何かがクロウの耳に届く。


(なんだ、声?)


「……し、て。」


(アーシェでもサリアでもない、周りに冒険者はいないし……まさか!?)


ザッ!

クロウはアーマーゴーレムの顔を見る。


すると、


「……こ、……し、て。」

「っ!?」


クロウの目に止まったもの。


それは、はたして。

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