第94話 終わりと目的
クロウの目はかっぴらかれ、アーマーゴーレムから視線を外せない。
クロウの耳には届いていた、微かな声が。
「うそ、だろ。」
「どうしたの?クロウ?」
クルッ。
先を歩いていた2人が振り向く。
「なあ、2人は何か聞こえなかったか。」
「うん?サリアは特に聞こえてないよ、アーちゃんは?」
「私も聞こえなかったわ。クロウには何が聞こえたの?」
「……気のせいかもしれないけど、助けを求める声が聞こえたんだ。……あいつから。」
スッ。
クロウがアーマーゴーレムを指差す。
「どういうこと!?アーマーゴーレムが喋ったというの?」
「そんなことってあるの?サリア、今までそんなモンスターに出会ったことないよ?」
「けど、確かに聞こえたんだ。微かだけど、助けを求める声が。」
クルッ。
3人はアーマーゴーレムを見つめる。
「……考えたくないけど、やはりアーマーゴーレムは人工モンスターなのかしらね。」
「人工モンスター?それって、意図的に作り上げられたモンスターってこと?そんなこと可能なの?」
「正直確信はない、けど、俺が感じる複数の血の匂いと、アーシェが感じる複数の魔力。こんな特徴があるモンスターが今までいなかったとしたら、作り出されたっていうのが妥当じゃねえか?」
「それってさ、モンスターだけが素体なのかな?」
ドクンッ!
クロウの心臓が大きく鼓動する。
「サリア、まさか……。」
「うん、サリアの予想でしかないけど、モンスターとモンスターを融合させることって、過去も試されてたけど成功しなかったみたいなの。だとしたら、融合の大元となれる、器みたいなものが必要なんじゃないかな。」
「それが、これまで連れ去られた囚人や行方不明の人……。」
「可能性はあるわね、でも、憶測で考えすぎるのも良くないわ。まずは、アーマーゴーレムを拘束して回収しましょうーー。」
ピカーンッ!
アーマーゴーレムが突如光り輝き、小さな石となる。
シュンッ!
そのまま、崖の上の方へ飛んでいく。
「っ!?アーマーゴーレムが元に戻った?」
「おい!あれ見ろ!」
スッ!
クロウが指差す先には、
「あなたは、ギル将軍!」
ズザッ!
崖の上には、ナウサでアーシェを連れ去ったワニの魔獣、ギルの姿が。
「はっ!生きてたか、脱走者!貴様らがレイヴァーと言うんだな、再会できて嬉しいぜ。」
「てめえ、アーマーゴーレムをどうする気だ!」
「どうしようが俺たちの勝手だろ!これは、俺たちが作り出した道具なんだからよ!」
「それを作り出すのに、どれだけの犠牲を生んだ!てめえらなんだろ、行方不明になってる人たちを連れ出してるのは!」
ニヤリッ。
ギルの頬が緩み、不適な笑みを浮かべる。
「さぁ、どうだろうな。まあ、お前達が知る必要はないさ、この世界はもうすぐ生まれ変わる、俺たちに服従する準備をしておくんだな!」
「待ちなさい!あなた達なんでしょ!
「ほう、そこまで知っていたか。まあいい、そうさ!俺たちが進む道を阻むのなら、何者であっても排除するのみ!邪魔をするなら、お前達も殺すだけだ、忘れるなよ!」
ブワンッ!
ヒュイーンッ!!
ギルの背後に闇魔法でできた丸いゲートが生まれ、その中に消えていく。
「くそっ、逃げられた。」
「……魔族は何をしようとしているの。」
「2人とも!まずは他の冒険者の様子を見に行こう!話はそれから!」
「ああ、分かった。」
スタッ、スタッ、スタッ。
レイヴァーはノエル達と合流する。
「ノエル!」
「っ、レイヴァー、そっちも終わったのかい?」
「ああ、けど捕まえることはできなかった。魔族に回収されちまった。」
「そうか、まあ被害はかなり少なく終わらせられた。それだけでも喜ぼう。」
スタッ。
他の冒険者をまとめていた男がクロウ達の前に出てくる。
「ありがとうな、救援に来てくれて。お前達が噂のレイヴァーか?」
「噂になってるのか?レイヴァーなのは間違い無いぜ。」
「そうか、予想以上に逞しいチームだな。おかげで俺たちは誰1人死なずに済んだ、出来れば礼をしたいんだがキルキスに寄っていってもらえないか?」
「そうね、ありがたく寄らせてもらいましょうか。誰かさんのせいでお腹も減ったし、足も疲れたし。」
「だから、最善の選択をしただけだっての!俺だけを責めないでくれ!」
スタッ、スタッ。
レイヴァーと男はキルキスに向かう。
クルッ。
クロウは振り返り、ノエルを見る。
「おーい、ノエルも行くぞ。」
「ん?あ、ああ。今行くよ。」
「何か考え事か?」
「いや、なんでも無いよ、僕の集めた蠢く会の情報も共有したいから、キルキスに行けるならちょうどいい。」
スタッ、スタッ。
ノエルも皆の後をついていく。
町への道中、クロウは考えていた。
(ゴーレムがモンスターの融合体だけじゃなく、人族も素体として使ってるとしたら、これまで行方不明になった人のことも納得いく。)
スッ。
ゆっくりと空を見上げる。
(それにさっき聞こえた声、アーマーゴーレムから聞こえた気がする。くそっ、余計なことは考えるな、負の感情に囚われたらこの前と同じだ。)
少しずつゴーレムの正体が分かりつつあった。
第18章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第18章まで読んで頂きありがとうございました。
キルキスの魔族の襲撃を、レイヴァー及びノエルが活躍しなんとか退ける。
アーマーゴーレムを捕まえようとした時に聞こえた声、クロウは聞き逃さなかった。
ノエルからの情報をもらうことで、レイヴァーはどんな道に進んでいくのか。
少しずつ蠢く会についてわかる!?
戦いは終わらない。
レイヴァー応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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