第77話 町の調査

スタッ、スタッ、スタッ。

4人はナウサから3つ離れた町まで歩いて向かっていた。


町までは約50分、辺りを見回しつつ歩いていた。



「なあ、ノエルランス、目的の町はどんなところなんだ?」

「名前は。特別何か特徴がある町ではないけど、数日前にモンスターの襲撃で町は壊滅、逃げ出せた人たちは周りの町に引き取られたらしい。」

「それを引き起こしたのが、魔族。ここ数日でそんな情報を私たちは耳にしてないし、何か怪しいわね。」

「そういうこと、加えて僕が調べた限りでは、町の人たちは異形の姿をした化け物に襲われたとしか話してないらしい。早く調べないと、周りの町に被害が出かねないね。」


歩き始めて30分前後、4人はあることに気づく。



「なあ、なんでここまでの道にモンスターがいなかったと思う?」

「確かにそうね、ナウサの近くですらモンスターはいたのに変ね。」

「サリアの植物魔法で感じられる範囲にはなにもヒットしなかったよ。」

「俺も、音や匂いじゃなにも感じられなかった。……奇妙すぎるな。」


ナウサの町ですら、外に出て10分も歩けばサーベルウルフなどの弱いモンスターに出くわす。



だが、目の前にアイギオの町が見えるほど歩いてきたのに一度も接敵しないのは、初めてのことだった。



スタッ、スタッ。

そのまま、4人はアイギオの町に入る。



「ここが、町?」


サリアの疑問も正しい。


辺りには広い面積の土地があるが、家などの建物は片っ端から壊され、乾いた血が飛び散り、悲劇という言葉が似合ってしまう姿であった。



「ここの町だって、ギルドもあっただろ?冒険者がいたらここまで凄惨に姿になるか?」

「スンッ、スンッ。魔力の塵を感じるわ、確かに魔族はいたのかもしれないわね。だけど、魔力だけではない傷跡もたくさんあるわね。」

「そうだね、ここら辺の建物はどう見ても斧やハンマーなどで壊された形跡がある。だが、こんな腕力を持つ魔族はいるのかい?」

「正直あまり見たことないわね、家を真っ二つにするほどの力と武器。私ですら耳ににたことのない戦い方ね、だとしたら。」

「ああ、魔族の他に何かが絡んでる。」


スタッ、スタッ。

さらに4人は町を調べていく。



ズザッ。

クロウとアーシェは大きな建物の前で立ち止まる。



「これは、ギルドね。」

「ああ、ナウサにも負けず劣らずの大きさだ。この規模感のギルドが、あっさりと負けるとは思えない。それに、この荒々しい壊され方、もしかしたら。」

「ええ、この前戦ったゴーレムの可能性も大きいわね。捕まえた男はいまだになにも話さないけど、蠢く会が作り出した化け物、他のタイプがいてもおかしくないわね。」

「ひでぇな。こんなことして、その先にどんな世界があるっていうんだ。」


ギリッ。

クロウの拳に力が篭る。


「こんな近くで事件が起きてたのに、何もできないなんて、非力だな。」

「あなたが苦しむことではないわ。しょうがないとは言えないけど、実感してるはずでしょ。全ての命をクロウ1人で生き残らせることはできないって。」

「……ああ、頭では分かってる。けど、そう簡単に割り切れない。」


蠢く会に対する許せなさと、自分の非力さを痛感していた。



「クロウ、あなたはとても優しい、いえ、優しすぎる。だからこそ、抱え込みすぎないでよ、あなたは神ではない、この世界の1人の生き物でしかないんだから。」

「……ああ、ありがとうな。」

「クロくん!アーちゃん!」


スタッ、スタッ、スタッ。

反対方向から、サリアとノエルが歩いてくる。


「どうした?」

「大変なの、これ見て!」


スッ。

サリアの手のひらには、2つのチップが。


「これって、これまで戦ってきたモンスターと同じやつか?」

「多分そうだよ、それとこんなものまで。」


スッ。

もう片方の手には、金色の腕輪が。そこには、ワニの刻印が彫られていた。


「これって、魔族がつけてる腕輪か?」

「この紋章、魔族大使館のギルの紋章よ。本人が付けるものというより、その部下が付けることが多いわ。」

「ギルって、確かアーシェを連れ去ったやつだよな。あいつの部下がここに?」

「ノエルランスくんの情報が正しければ、あり得るよね。でも、なんで町を襲うなんて意味のなさそうな事を。」


シュンッ!

少し離れた先から、何かが投射されるのにクロウが気づく。



「ちっ! 雨の音アメノオト初式ショシキ! 時雨シグレ!」


スッ!

ジャギンッ!

折りたたみ式剣の居合斬りで、飛び込んできた矢を弾く。


「そこにいるのは誰!出てきなさい!」


アーシェの声と共に、崩れた家の陰から4体の魔族が姿を現す。


全て、ワニの頭をした魔族であった。



「あなた達、ギルの手下かしら。」

「はっ!それを知った上でおれ達に敵意を向けるとは、相当の自信家のようだな!」

「君たちが、この町を壊したのか!」

「さあ、それはどうかな。まあ、知る必要もないさ!お前達はここで、死ぬんだからな!」


ピキーンッ!

魔族が空高く赤い宝石を投げる。



すると、


ピカーンッ!

光を発し、中からは巨大な姿をした何かが。


体長6mほどあり、巨大な目が一つ。

頭には大きなツノが生え、両手に金属のハンマーと斧を一つづつ。

全身は緑色で、ギョロッとした大きな目も、全身を覆う防具が特徴。



「あの姿、サリア達が戦ったゴーレム!?」

「ただのゴーレムではないさ、こいつはここら辺のモンスターの力も注入された、アーマーゴーレムだ!」

「くそっ、嫌な気はしたけどやっぱりかよ。」

「ぐぉぉ!!!」


アーマーゴーレムの怒号が響き渡る。


「さあ、俺たちに殺されるんだな、愚かな冒険者!」

「やるしかねえな、ノエル!俺と一緒にアーマーゴーレムをやるぞ!魔族はアーシェとサリアに任せる!」

「分かったわ、終わったら助けに行くから無理しすぎないでよ!」

「おう!」


ズザッ!

新しいレイヴァーの戦いが始まった。

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