第72話 準備運動

「この伝言、どういう意味だ?てか、あいつも無事だったんだな、良かったぜ。」

「あいつも怪我はしていたが、お前たち3人ほど重症じゃなかった。俺とリィンが戦闘音が響いてる方に向かったら、3人は力尽きてたが、あいつは体を震わせながら怯えてた。」

「仕方ないことだろ、ゴーレムなんて新種のモンスターと戦って俺たちの最大限の力も目の当たりにした、情報を処理しきれないのが普通だ。」

「頭では分かっているけど、私はまだ彼を信用しきれないわ。」


アーシェがクロウの意見に対抗する。


「彼は、私たちがどういうチームなのかを知っている上で付いてきたのよ、それくらいの精神を持ってもらわないとこれから先の同行は認めたくないわ。」

「確かに途中であいつは戦闘継続ができなくなったけど、ゴーレムの時はかなり役に立ってくれてたぜ?戦う力は、相当なもののはずだ。」

「サリアも、ノエルランスくんの戦闘力は確かに評価できると思う。けど、大切な場面で動けなかったら彼の命も、サリアたちの命も失いかねないよ。」

「クロウ、あなたはなんでそんなにノエルランスをレイヴァーに入れようとするの?彼に何かあるの?」


ズザッ!

アーシェとサリアがクロウの顔を真正面から見る。


「なんて言うかよ、あいつは少し前の俺と同じ気がするんだ。お前たちに出会って、一緒に生きていく仲間を作れる前の。」

「どういうこと?私には理解できないわ。」

「まあ、俺の直感でしかないから間違えてたら悪い。ただよ、あいつは迷ってるんじゃねえかな?多分俺たちの中の誰よりも蠢く会について詳しい気がする、けど、そのやり方に対して疑問も感じてるんじゃねえかな?」

「でも、もしノエルランスくんが蠢く会から送られてきた密偵だったらどうする?サリアたちの動きが筒抜けになる可能性もあるよ。」


クイッ。

クロウは顎に手を当て考える。


「まあ、2人の意見の方が正しいよな。」

「……けど、私たちはクロウのおかげで今を生きてる、だからあなたの直感を信じたいのも本当だわ。あなたを責めたいわけじゃないの、私たちがこれから安全に生きていく方法を導き出したいだけ。」

「そうしたら、こういうのはどう?ノエルランスくんが望むなら、私たちのチームに仮入部してもらうの!それで、お互いの利害が一致したらそのまま本加入、どちらか一方でも合わなければこの話は無し!それが、お互いにとって1番いいんじゃないかな?」

「……そうだな、2人が良ければ俺はそれでいい。」


クロウが2人に問いかける。


「まあ、それなら構わないわ。けど、命を任せる相手として多めに見る事はしないから。」

「サリアもOKだよ!」

「よしっ、それじゃあノエルランスが戻ってきたら話をするか。それまで、俺たちも体ならしがてら、クエストでも行こうぜ!」

「あ、分かりました!そしたら、クエスト持ってきますね!」


タッ、タッ、タッ。

リィンは奥の部屋からクエストの一覧表を持ってくる。



「ええと、近くの安全なクエストであれば、この辺りがいいですかね。」

「この前の、蓮草の採取に、金芋の採取、ってなんかパッとしないものばかりだな。何か討伐系のクエストはーー。」

「何か言いましたか??」


スーッ。

クロウがリィンを見上げると、獅子のような形相で見つめていた。


「あ、いえ、それじゃあこの紫ニンジンの採取をさせて頂きたいです……。」

「はーい!紫ニンジンですね!最近採取量が減ってるし、宿屋のオーナーさんも使いたいはずだから丁度いいと思います!今発注しますね!」


スタッ、スタッ。

リィンはクエストを発注しにいく。


「リィンがいてくれれば、私たちもさらに安全に過ごしていけそうね。」

「すごい圧力を感じたけど、おかげさまでサリアたちも間違える事はしにくくなりそうだね!」

「そうだな、俺たちも運動がてら外に行きたいし紫ニンジンもできるだけ多めに取ってくるか。」

「そうね、100本もあれば十分かしら?」

「取りすぎだろ、絶滅したらどうする。」


スタッ、スタッ。

リィンがクエストを発注して戻ってくる。


「では、5本以上の紫ニンジンを採取してきてください!近くの平地の先に生えてるはずです!」

「ほら、100本でもセーフじゃない。」

「常識的に考えろって。」

「あなたに言われると腹が立つわね。」

「ほーら2人とも!喧嘩してないで早くいくよ!リィンちゃん、行ってきます!」


サリアが場をまとめ、ギルドの外に出る。


「行ってらっしゃい!お気をつけて!」


リィンは元気よくレイヴァーを見送った。





ところ変わり、とある建物の中。


そこで、黒ずくめの人たちが話をしている。



「ゴーレムの戦果はどうだった?」

「どうやら、最近活躍しているレイヴァーには勝てなかったようだ。さらに、改造する必要があるな。」

「けど、改造するったって楽じゃ無いねん、素体となるやつも探さんとやし、なにより金がかかって仕方がない。」

「大丈夫だろ、力を欲しがる金持ちは腐るほどいる。試作型をたくさん売って、そのデータを元に我々が白き世界を作りだせば。あいつからの報告でも、そこら辺の一般人がいま名を馳せている冒険者と同等の力を持てる強さと来てる。我々の悲願成就も、そお遠くはない。」


黒ずくめの者たちが話している事はいったい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る