第63話 不殺の掟
「なに、この手紙?ノエルランスくんがもらったの?」
「まあ、半分は当たりだ。今しがた、僕もギルドに依頼しにきたんだけど、この町の入り口に落ちてたらしいんだ。大急ぎでお爺さんが届けにきてたからね。」
「へぇ、それを何であなたが持っているの?」
「僕が冒険者だと分かったお爺さんが渡してきたんだ、もしかしたら大変なことになるかもしれないからそのお爺さんは町の人に警告をしに行くって。」
手紙の1番下に書いてある、Oについて4人は考える。
「確か、この前の手紙はNだったよな?次はO、何かの暗号か?」
「多分ね、それにこの単調な書き方は仲間内に渡すべき内容な気もするわ。どういう作戦かわかる人間でないと、意味を汲み取れない可能性すらあるし、何より落とすのが不思議だけど危険なのは今の私たちならよく分かるわ。」
「やはり君たちなら分かるのか、なら、この場所に一緒に行ってはもらえないかい?」
「一緒に?ノエルランスもついてくるのか?」
スッ。
クロウはノエルランスの全身を観察する。
「言っただろう、僕も冒険者だ。戦う術は持ち合わせてるし、何よりこの実験体っていうのが危険な気がする。レイヴァーが強いのは承知だから、なおのこと依頼したいんだ。僕だけでどうにかできることではなさそうだし。」
「なら、ギルドに正式に依頼したら?ダイカンやリィンなら、快く受け入れてくれるだろうし、私たちに正式に依頼すると思うわ。」
ギッ。
アーシェは目を狐の様に細め話進める。
「そうしたいんだが、そう言った手続きは時間がかかるものだろ?」
「それでも、正式に受けた方が動きやすいのも事実だわ。」
「今すぐ向かえば救える命があるとしてもかい?アーシェリーゼくんは、救える命を見逃すと?」
「あなたっーー。」
バッ。
飛びかかりそうになるアーシェをクロウが体を前に入れ抑える。
「言いたいことはわかった、ノエルランス。お前の要求を受け入れるぜ。」
「クロウ!何勝手なことを!」
「この手紙が怪しいのも事実だし、ギルドの補助も欲しいのは事実だ。なら、俺とアーシェ、ノエルランスが先に向かう。サリアにはギルドに報告してもらってから合流してもらう。これでどうだ?」
「僕は構わないよ。」
「……後悔しても知らないわよ、クロウ。」
ズッ。
アーシェは内に気持ちを抑え、クロウの指示に従う。
「ありがとうな、アーシェ。サリア、この手紙でリィン達に依頼を頼む。俺たちは先に向かうから、追いかけてきてくれ。」
「OK!サリアの足は早いから、すぐ追いついちゃうよ!……けど、無理だけはしないでね。」
「ええ、もちろんよ。」
「ありがとう、レイヴァー。では、さっそく向かおうか。」
ズザッ!
クロウ、アーシェ、ノエルランスはナウサの森の近くへ、サリアはギルドに手紙を届けに行った。
数分走ると、ノエルランスが2人に質問してきた。
「2人に聞いても良いかい?」
「何だ?」
スタタタタッ。
3人は走りながら話し始める。
「なぜ、君たちは命の危険を冒してまでモンスター達を倒すんだい?怖くないのかい、最悪死ぬことが。」
「何当たり前なこと聞くんだ、怖いに決まってんだろ。」
「ええ、私だって怖いわ。怖くないわけがない。」
「ならなぜ?」
疑問に思うノエルランスは、低い声で問う。
「……まあ、自分が死ぬことも怖いけど、それ以上に助けられるかもしれない命が目の前で消える方がもっと怖いんだ。」
「私もクロウと似てるわ。後悔をしたくないのよ、やっておけばよかったなんて取り戻せない時間を恨んで。」
「……なるほど、それがレイヴァーの姿か。でも、やはり納得がいかない。オールドタイプと失墜した魔王の娘、それに町を1つ壊滅させた
「何がだ?」
クロウがノエルランスに問いかける。
「だって、君たちは少なからず大半の存在に疎まれる存在だろ、それが敵扱いしてくる者達に力を貸すなんてどうかしてるとしか思えない。」
「そう考える人がいてもおかしくないわ、けど、反発するだけじゃ世界は変わらないのよ。」
「そうだな、やられたからやり返すだけじゃ先に進めない。俺たちが欲しいのは、未来だ。そのためなら、何だってやってやる。」
2人の硬い眼差しに、ノエルランスは言葉を失う。
(そんな綺麗事で命を賭けるなんて、やはり理解できない。)
ノエルランスが心に迷いを浮かべていると、
「おらおら!てめえら邪魔だ!金目のもの置いてどこかいけ!」
「誰か!助けて!」
ナウサの森の近くで盗賊らしき集団が、5名パーティを襲っていた。
「おいおい、モンスターの前に盗賊かよ、アーシェ、いけるか?」
「ええ、もちろんよ、クロウ。……安心しなさい、あなたが言いたいことはわかるわ。」
「どういうことだい?早くターゲットを探さなくてはーー。」
「あのパーティを助けることが最優先だ!ノエルランス、今お前はレイヴァーとして動いてる、俺たちの方針には従ってもらうぜ。」
ズザッ!
2人は盗賊に向かって突き進む。
「嘘だろ、こんな時に。くそっ!」
タタタタタッ。
3人は盗賊に一直線。
「ん?なんだーー。」
「
「へぐっ!」
ガゴーンッ!
雷のように鋭い掌底突きが腹に直撃。
「ノエルランス!1つ命令だ!誰1人殺すな、必ず捕えることだけに専念しろ!」
「はぁ!?正気か君は!」
「うちのクロウは本気よ、当たり前でしょ。ほら、やるわよ!」
3人は盗賊との戦いを始めた。
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