第61話 魔法使いの素質
レイはクロウに新しい大剣を持たせる。
その形は、サバイバルナイフのように片方だけ削られ漆黒という表現が似合う色味。
刀身だけでも1.3mほどあり、背中に背負って引き摺らないギリギリなサイズ感。
グリップはグレーで、滑り止めもついており取り回しが良くクロウの激しい戦い方にあった作りをされている。
「すげぇな、この1本だけであんたの実力ってのが良くわかるぜ。持ちやすさや軽さもそうだけど、何よりとても頑丈だ。最近特殊個体が多いから、割れにくいってのはとても助かるぜ。」
「気に入ってもらえたらそれでいい、特別武器を使わないアーシェにはブレスレットで魔力を練りやすくしておくぜ。」
「ありがとう、完成が待ち遠しいわ。」
「このペースなら、3日後には完成できそうだ。その時にまた来てくれ。」
「うん!お願いね、レイさん!」
スタッ、スタッ、スタッ。
3人はレイの鍛冶屋を後にする。
「にしてもすげえな、あいつら。いつ死ぬかもわからない戦場で、誰かのために命を張って戦ってる。……俺には武器を作るしか脳がねえからな、お前達の役に立つものを絶対作ってやる、こりゃ徹夜だな!」
カンッ!カンッ!
レイも武器作りに精を出していた。
3人は町を散策しながら、宿屋へと向かう。
そこで、会話はアーシェの魔法についての話になる。
「なあ、アーシェってなんで光魔法以外使えるんだ?俺はオールドタイプだからよく分かんねえけど、大抵1人2属性が限界って聞いたけどお前は違うよな?」
「まあ、そうね。それが、アフロディテ家の宿命でもあるのよ。」
「宿命?アーシェちゃんの家柄ってそういうところなの?」
「まあ、そうね。……少し、昔話をしようかしら。」
アーシェが過去の話を始める。
アーシェはアフロディテ家の長女として生まれ落ち、父ザインと母エウレアに育てられる。
そして、父のアフロディテ家は昔から研究一家でもあった。
研究対象は、魔法。
この世界の魔法は、
その
植物から発生してるという声もあれば、動物から、はたまた空気中に常に存在しているなどの声も。
それを解き明かそうと常に研究を続け、生まれつき魔力量が多かったアーシェはその研究に力を貸していた。
その中で、アーシェは光魔法以外の適性があることが判明しその力を遺憾無く発揮していった。
将来的に王女にすることを目標に、ザイン、エウレアは力を蓄え、仲間を作り同じ道を進む先導者として魔王へとなった。
しかし、血のホワイトデイが起きたことによりザインは失墜、アーシェは国を脱出した。
彼女の中に魔力量がとても多いこと、そこから多くの魔法を使える理由まではまだわからないでいた。
とはいえ、ザイン達の研究は他の魔族にも危険視されていた。
そのため、アーシェがどこに潜伏しているか探しており、存在を消すために動いてもいた。
「これが、私の過去よ。私自身も、なんでこんなに魔法が使えるかはわかっていないの。」
「ふーん、まあ、アーシェは器用そうだしな。そんだけたくさんの魔法使えても、俺はなんとも思わねえな。」
「たしかに、クロくんよりは器用なのは間違いないね!サリアも魔法は使えるけど、アーちゃんほどは使えないから羨ましいよ!」
「……ふふっ、本当に2人は変わってるわね。こんなこと言われて、そのまま受け入れるなんて。けど、そんな2人だから今まで話せなかったことを話してしまったのかもね。」
「いいじゃねえか、もっとたくさん話してくれよ。俺はアーシェのことをもっと知りたい。」
ドクンッ!
アーシェの心臓が大きく鳴り響く。
その顔は少し赤く火照っていた。
「そ、そう、ま、まあ別に、減るもんじゃないから話してあげなくもないわ。」
「減るのはアーシェの腹だけだもんな。」
「……クロくん、空気読もうよ。」
「ウェルダンになる覚悟はいい?私はできてるわ。」
「あ、あ、なんで、あの、ごめんなさい。」
ズザッ。
瞬時にクロウは謝罪をして場を収める。
「はあ、ほら、とりあえず近くを歩きましょう。少しナウサの町を見たいし。」
「うん!サリアも見たい!」
「あ、おい!待てって!」
スタッ、スタッ。
アーシェは足早に市場の方へ向かう。
(なんなの、この心臓の鼓動は。なんでクロウにこんなに苦しい気持ちにさせられるの?この感情は何?)
アーシェは考え事をしながら、3人で辺りを散策していた。
「それじゃあ、今日は休むか。」
「そうね、ゆっくりしましょう。また明日ね、2人とも。」
「うん!おやすみ!」
ガチャンッ。
3人は各々の部屋に分かれ、それぞれの時間を過ごす。
ここは、アーシェの部屋。
(ああ、やっぱり1つ気がかりだわ。あのギルドに来た男は何?)
アーシェはアリゲイル討伐を依頼してきた男について考えていた。
(すごい怪我をしているようだったけど、クロウみたいに重傷の時とは違う心音だった。あれは、もしかして演技?けど、そんなことして何か生まれる?)
バタンッ。
ベッドに横になる。
(警戒しておくべきね、私だけでも。もしもの時は、2人にも手伝ってもらう、そうするしかないわね。)
スッ。
アーシェは静かに目を閉じた。
そして3日が経ち、3人は再びレイの元を訪れていた。
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