第60話 2人の決意

スタッ、スタッ、スタッ。

レイヴァーは満身創痍でナウサの街に戻る。


「はあ、はあ、流石に疲れたな。」

「そうね、少し休憩して回復しないと次何かあったら動けないもしれないわね。」

「サリアも休憩賛成!ご飯とかいろいろ行きたい!それに武器もあるし!!」


キィーッ。

3人はギルドに入る。


「おう、お帰り。て、お前ら大怪我じゃねえか!早く医務室に行ってこい!」

「ああ、その前にこれだけ持っておいてくれ、今回のモンスターからもチップが出てきた。」

「分かった、蠢く会の仕業だな、後は任せてくれ。」

「頼むわね、ダイカン。」


タッ、タッ、タッ。

3人が外に出る姿をダイカンは見送る。


「……俺は、お前達に頼り過ぎている。どうにか対策を考えないとな。」

「ねえ、お父さん。」


スタッ、スタッ。

受付のバックヤードからリィンが姿を現す。



「どうした、リィン?」

「あのさ、お願いがあるんだけど。」

「お願い?珍しいな。」

「うん、実はさ……。」


静かにリィンがダイカンに耳打ちした。



「……本気なのか、リィン。」

「うん、あたしもあの人たちの力になりたいの。」

「……今すぐどうこうできることじゃない、まあ、じっくり考えて出した答えなら俺は何も言わない。これからさらに努力しないとな。」

「うん!ありがとう!」


リィンは笑みを浮かべ、仕事に戻った。




「はい!これで治療は終わったよ!」

「ありがとう、助かったわ。」


スタッ。

3人は医務室で治療を受け、食事処に向かった。



「あ、アーちゃん!こっちこっち!」

「お待たせ、2人とも。」

「良かった、3人とも何とか生きてるな。このお店の全メニュー頼んでおいたから、早く食おうぜ。」

「気がきくわね、ありがたく食べるわ。」



パクッ、パクッ、パクッ。

3人は勢いよく食べ進めていく。


特に、アーシェの食べるスピードはブラックホールのよう。



「いつもながらすごいスピードだな、本当にどこに吸収されてるんだ?」

「あなた達が少食なだけよ、これくらい食べれば回復も早いわ。」

「いや、そんなわけないだろ、普通限界があるっての。アーシェの胃袋ってかなりバカなんだろうなーー。」

「あっ??」


ボアッ!

手のひらに炎が生まれる。


「ごめんなさい、ウェルダンは許してください。」

「じゃあ、レアならいいかしら?」

「そういう問題じゃねえ!」

「2人とも相変わらず仲がいいね!」

「そんなわけあるか!」


3人の何気ない会話が、いつもの彼らなのだと安心させてくれる。


「今日から3日間、お休みなんだよね?どうする?」

「とりあえず、レイのところに行って装備を確認しようぜ。俺たちに合わせて作ってくれるみたいだし。」

「そうね、食べ終えたら行ってみましょうか。」


ゴクンッ。

アーシェが全ての料理の8割ほどを食べ終え、3人は外に出る。



「そういえば気になってたのだけど、何でクロウはそんなに多くの武器が使えるの?ずっと訓練してたわけ?」

「ん?まあ、訓練はアルタにいた時まで続けてたけど、父さんからアレス家に伝わる秘伝書をもらってたんだ。」

「秘伝書?」

「ああ、そこに拳、2刀、大剣、隠し剣の使い方が載ってたんだ。」


ズザッ。

アーシェとサリアが動きを止める。


2人が止まったことを確認したクロウが振り返る。



「まさかとは思うけど、載っていたから全ての武器を使えるようにしたなんて言わないわよね?」

「え、そうだけど何かおかしいか?」

「……はぁ、クロくんってバカなのか才能があるのか分からないね。多分、お父さんのその秘伝書は過去のアレス家の人達が培ってきたものを残したんじゃないかな?だから、1つでもマスターできたらOK的な。」

「え、そうなのか?」


スサーッ。

キョトン顔したクロウの髪が、優しい風で揺れる。


「サリーのいう通りだと思うわ、あなたが規格外だからマスター出来ちゃっただけで、本当は1つをマスターするべきものなんだと思うわ。」

「……ま、まあいいか!出来ちゃったものは出来ちゃったんだし、気にしてもダメだな!」

「クロくんのおかげで助けられてることはたくさんあるから、サリア達は嬉しいんだけど、クロくんのバカさがまた露呈したね!」

「うるせえ!ほら、早くいくぞ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

クロウは足早にレイの元に向かう。


「あははっ、やっぱりクロくんは天性のおバカさんだね!……けど、それだからサリア達はついて行こうと思える、クロくんの目指してる世界が見たいから。」

「そうね、彼はオールドタイプとしてすごく多くのことを経験して今を生きてる。私たちには見せないけど、本当に大きなことを背負ってるはず、なら、仲間として私は支えたい。」

「うん、サリア達でクロくんの力になろう!クロくんに、サリア達は生きる意味を教えてもらった、その恩返しは一生かけてでも続けていく。」

「もちろんよ、さあ、行きましょう。」


2人もクロウの後を追った。




キィーッ。

3人がレイの工房を訪れる。


「ん?おお!きたか、レイヴァー。」

「ああ、調子はどうだ?」

「いい感じだ、まだクロウのにしか手はつけられてないが、ほら!」


レイが大剣を見せてきた。

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