第52話 作り出された存在、2つ目の力

ガギーンッ!ガギーンッ!

クロウは2刀で攻撃を弾きながら、距離を詰める。


「サリア!こいつの腕落とせるか?」

「かなり厳しいかな、 射貫け!光線レイ!」


ピューンッ!

ガギーンッ!

無属性の魔法ビームが容易く弾かれる。


「クロウ!あなたのパワーでも切れないの?」

「やってみてるけど、手応えなしだ!  獣の声ケモノノコエ二式ニシキ! 獅子の重撃ネメアー!」


ブンッ!

ガギーンッ!

大剣のジャンプ斬りでもその手は斬り落とさない。


「シャァァ!!」

「くそっ!!」


バギーンッ!

ズザーッ!

もう片方の尖った手が、クロウの大剣の防御ごと弾き飛ばす。


「クロくん!」

「サリー!前!」

「っ!? 壊せ!根の侵攻ルーツバスター!」


ガガガガガッ!

バゴーンッ!

トレントが放った横薙ぎ攻撃を、地面から根を浮かばせ対処する。


「周りを気にする余裕もないなんて。」

「そのまま抑えてて! 斬り落とせ!烈風の翼ゲイルウィング!」


ブワンッ!

ズシャン!

大きな風の斬撃が、トレントの腕に傷をつける。


「よしっ、少しはダメージをーー。」

「アーちゃん!後ろ!」

「っ!?」


シュンッ!

アーシェの背後から、どこから生まれたか不明、尖った枝が弾丸のようなスピードで迫る。


「くっ、間に合わなーー。」

「守れ! 守護シールド!」


キンッ!キンッ!キンッ!

アーシェを葉が囲い、衝撃を緩める。


ズザッ!

2人の横をクロウが低姿勢で走り抜ける。


「合わせろ!アーシェ!」

「分かったわ!」


ズザーッ!

クロウはスライディングして攻撃を避け、本体の目の前に迫る。



そして、


「燃え尽きなさい!」

焔の拳バーンナックル!」


ボァァ!!

ガゴーンッ!

炎を纏った拳が、本体に直撃。


「イシャァァ!!」

「いいぞ、効いてる!」

「そのまま一気に……っ!?クロウ!離れなさい!」

「っ!?」


バゴーンッ!

地面を無数の根が突き破り、クロウを弾き飛ばす。


地面の揺れを感じたクロウは、直撃を避けるが手足に傷を負い血を流す。


「痛っ、こいつ!」

「クロくん、サリアが前に入る!」


カキンッ!カキンッ!

ダガーで鋭い刺し攻撃を弾きながら、サリアは距離を詰める。


「援護するわ! 穿て!紫電ライトニング!」


バゴーンッ!バゴーンッ!

雷の衝撃で、アーシェは攻撃を弾きサリアの道を作る。



「イシャァァ!!」

「植物なら、サリアも詳しいよ! 初舞ハジマリノマイ! 剣舞ブレイドダンス!」


チャキンッ!チャキンッ!チャキンッ!

踊るように本体全身を斬り刻んでいく。


本体は手ほど硬くはなく、少しずつ傷を入れられる。


「俺が手は抑える!本体は2人に任せるぞ!  獣の声ケモノノコエ初式ショシキ! 番犬の迅牙オルトロス!」


ズザッ!

ガギーンッ!ガギーンッ!

大振りの大剣の攻撃で、なんとか両手を自由にさせない。


シュッ!シュッ!シュッ!

クロウとアーシェ目掛け、複数の尖った枝が弾丸のように迫る。


「避けてる暇がーー。」

「燃え上がれ!白炎花フローラム!」


ボァァ!!

ドゴーンッ!

お互いの背後から炎が湧き出し、枝を撃ち落とす。


「サリア!いけるか!」

「うん! 参の舞サンノマイ! 悲哀の挽歌ソローエレジー!」


シュンッ!

ジャギンッ!

目にも止まらぬ速さで繰り出されたダガーの一撃が、さらにトレントを追い込む。


「シャァ……。」


トレントから魔力が抜けたのだろうか、少し縮んだように見える。


「いくわよ!サリー!」

「うん!」


ズザッ!

2人は隙を見逃さずに、突撃する。



そして、


「燃え上がりなさい!」

炎の鞭フレイムウィップ!」


パチーンッ!パチーンッ!

炎を纏った木のロープが、トレントに直撃。


「やった!!」

「これで、終わりにーー。」

「まだだ!!」


ゴゴゴゴゴッ。

辺りの木々が揺れ始め、トレントの周りに魔力が溜め込まれる。


「そんな!?」

「アーシェ!!」

「分かってる!!」


ザッ!

クロウとアーシェがサリアの前に立ち、魔力の衝撃を弾こうとする。


獣の声ケモノノコエ三式サンシキ! 獅子の閃爪スフィンクス!」

「爆ぜなさい!爆焔華アマリリス!」


バゴーンッ!

ガギーンッ!

衝撃波に対して、炎の大きな弾丸と渾身の突き攻撃が反抗する。



「ぐっ、重てえ。」

「こんな力、隠してたなんてーー。」

「シャァ!!」


ガゴーンッ!

魔法の衝撃波がその場で爆発し、クロウとアーシェを巻き込む。


「うはっ!」

「くっ……。」


数メートル吹き飛ばされた2人は、全身に傷が生まれる。


「クロくん!アーちゃん!」

「えほっ、えほっ。ちぃ、足が。」

「はぁ、はぁ、肺がやられたかしら、魔力が練れない。」


2人とも戦闘が継続できないダメージを。


「シャァァ!!」


ビュンッ!!

2本の鋭い槍のような手が、2人にとどめを刺そうとする。


「ちっ!せめて、アーシェだけでも。」

「あなた、何言ってーー。」


その距離、残り2m。




ドクンッ!ドクンッ!

この瞬間、サリアの心臓が大きく鳴り響いていた。

うるさいとすら感じるほどに。


(死なせない。ねえ、見てるんでしょ、力を貸して。)


サリアは心の中で話し始める。



すると、


(へえ、久しぶりにうちの力が使いたいんか?)

(そう、この体を好きに使って構わない、だから、2人を助けて。)

(うーん、まあええよ。うちもたまには暴れたいんや、壊れても勘弁やで。)

(覚悟はできてるよ、お願い、。)



ゴォォ!!

サリアの周りに普段とは違うオーラが纏わる。

いつものサリアが太陽なら、影のような暗い力が。


そして、



憑依セカンド交代チェンジ!」


ヒュンッ!

音をおいてくるかのように、サリアは2人の元に駆けつける。


「サ、サリア!」

「ダメよ、あなただけの力じゃ!」

「ぬるいこと言ってる場合じゃないで、お2人さん! 肆の舞シノマイ友の協奏曲フレンズコンチェルト!」


グルンッ!

ガギーンッ!

回転射出したダガーが、トレントの腕を弾く。


「なんや、そんなもんかいな。」

「シャァァ!!」


トレントは怒りを露わにし、戦闘態勢。


「サリア、なのか?」

「ん?ああ、今は違うよ、クロの兄さん。」

「この魔力、確かにサリーとは違う。あなたは、誰?」

「そうやね、アーの姉さん。うちの名前は!」


ズザッ!

ダガーを構え、トレントに突撃する。




「エリカリットや!覚えておき!!」


ガギーンッ!

力を解放したサリアとトレントの一騎打ちが始まった。

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