第53話 彼らの存在、影

「はぁぁ!! 次舞ツギノマイ! 影の円舞曲シャドーワルツ!」


シュイーンッ!

ガギーンッ!

自分の影から分身を作り出し、トレントとぶつからせる。


「シィァ!」

「へっ!遅いんや!眠くなってまうわ!」


ジャギンッ!ジャギンッ!

軽やかなステップと、巧みな体捌きでトレントを翻弄していく。



「すげえ、あれがサリアなのか?」

「半分は当たってて、半分は違うと思うわ。エリカリット、ってさっき名乗ってたわね。見た目はサリーのままだけど、魔力の質も量も桁違いに増えてる、別の人格かもしれないわ。」

「そんな力を持ってたのかよ、サリア。お前、凄すぎんだろ。」

「けど、大丈夫かしら、あんな動き。」


ガゴーンッ!

ザッ!

トレントの攻撃を華麗に避け、ダガーでダメージを与えていく。


「そらそら! 降り注げ!光の雨ライトシャワー!」


ヒューンッ!!

ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!

空から無属性の魔法が雨のように降り注ぐ。


「シャァァ!!」


ブンッ!ブンッ!ブンッ!

複数の枝を弾丸のように飛ばし対抗する。


「そんなの! 刺せ! ニードル!」


ドガッ!ドガッ!ドガッ!

枝同士が粉々に砕け散る。


ズザーッ!

続け様に、足元に滑り込み、


参の舞サンノマイ! 悲哀の挽歌ソローエレジー!」


ジャキーンッ!

高速の一撃が、顔面を斬りつける。


「イシャァァ!!」

「さあ、もっとあげていくで!」


ヒュイーンッ!!

バゴーンッ!

なんとか抵抗するかのように、全身を赤く光らせ衝撃波を全身から放つ。


「ぐっ!」


ズザーッ!

衝撃に耐えられず、サリアは転がる。



しかし、痛がるそぶりはない。


「こんなもので、うちを止められると思わんといてや!」


シュッ!

血を流しながらも、さらに突撃していく。


「イシャァァ!!」

「かなりキレとるな!そのない脳みそで、うちに殺されない方法を探し出すんやな!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

さらに2人の一騎打ちは激しさを増していく。


「早い、それに判断力もエグいぜ。でも、あのままだと。」

「ええ、体を酷使しすぎている。いずれは体が追いつかなくなって、トレントにやられるわ。……クロウ、足は?」

「まあ、折れてはいねえ。一発くらいならぶちかませるぜ。そっちは?」

「少し時間かかるけど、一発なら私も打てるわ。後は私たちがサリア、いえ、エリカリットに合わせるだけね。」


2人は傷を負った体に鞭を打ち、ここぞというタイミングを測る。


「シャァァ!!」

「遅い言うてるやろ! 肆の舞シノマイ友の協奏曲フレンズコンチェルト!」


ブンッ!ブンッ!

ジャギンッ!

高速回転したダガーが、さらに傷をつける。


続けて、


「壊せ!根の侵攻ルーツバスター!」


ゴゴゴッ!

ズシャ!

地面から突き刺す根が、トレントを刺す。


「シャァァ。」

「流石に疲れてきたか、ならこのままーー。」


ガクッ。

エリカリットの体が急に重くなったかのように沈み込む。

そう、体力の限界だ。


右足を地面につき、両手からダガーを落とす。


「ちっ、この体ももう持たんか。サリアリット、あんたもう少し鍛えとけっちゅうねん!」

「シャァァ!!」

「ただ、厄介やな。」


ブンッ!

両手の槍のような手が貫こうと迫る。


(この攻撃なら、片腕犠牲にすれば耐えられる。堪忍な、サリアリット!)


ズザッ!

エリカリットは動き出そうとすると、


「しゃがんどけ!サリア! 獣の声ケモノノコエ六式ロクシキ冥犬の裂破ケルベロス!」


ブンッ!

ガギーンッ!

大剣を槍投げの如く投げ、腕を弾く。


「シャァ!?」

「反対の腕ももらうわよ! 爆ぜなさい!爆焔華アマリリス!」


ボァァ!!

バゴーンッ!

もう片方の手もアーシェの大きな炎の弾丸で弾く。


「いけ!サリア!」

「へぇ、これがサリアリットのいう仲間ね、おもろいやんか。けど、うちには関係のないこと。」


ズザッ!

ダガーを拾い上げ、トレントを駆け上がり空高く飛び上がる。


そして、



「斬り刻んだる! 伍の舞ゴノマイ眠りの小夜曲スリープセレナーデ!」


グルルルルッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!ジャギンッ!

トレントのてっぺんから、足元まで回転斬りしながら裂いていく。



「イシャァ!!」

「はっ!ここで眠りや、あんたも色々あるモンスターなんやろうけど、うちの前に出てきたからにはここで終わりや!」


ズシャン!

全身を真っ二つに斬る。


「イシャァァ。」


シュインッ。

ポトッ。

トレントは素材に変わり、小さなチップも落ちる。



激しい戦闘は、なんとか終わりを迎えた。


「はぁ、サリアリット、あんたの思い通りに動いてやったんや、後で言うこと聞いてもらうで。」


シューンッ。

パタンッ。

力が抜け、サリアはその場に倒れ込む。


「サリア!」

「サリー!」


タッ、タッ、タッ。

体を引きずりながら、2人は近寄る。


「おい、サリア!おい!」

「っ、ん。は、はあ、よかった。みんな生きてるんだね。」

「ああ、お前のおかげでな。」

「サリー……。」


クイッ。

サリアはアーシェの顔を見る。


「あははっ、ごめんね、まだ隠し事してて。ちゃんと話すからさ、そんな泣きそうな顔しないで。」

「ぐすっ、そんな顔してないわ。けど、ちゃんと話しなさい、私とクロウにはできる限り。じゃないと、さらに仲を深めることはできないんだから。」

「うん、ちゃんと話すよ。クロくんも、ごめんね。」

「いや、お前の力で助かったのは事実だ。けど、お互いをもっと知って、支え合って最高のパーティにしていく。それが俺たちの目標だ。


ニコッ。

クロウは優しく微笑みかける。


「うん、サリアも、もっと大切な仲間……家族になりたい。今は、少し疲れちゃったからさ、2人とも肩借りていい?」

「ええ、もちろん。」

「サリアは軽いから良いぜ。」

「誰だと重いのかしら?クロウ?」


ボァァ!

静かにアーシェの手のひらで炎が立つ。


「いや、まだアーシェとは言ってないだろ。」

「まだ、ね。一旦ウェルダンにしていいかしら?」

「ごめんなさい。」

「もう、サリア達傷だらけなんだから早く帰るよ!」


辛勝ながらも、彼らの賑やかさは変わらずであった。






3人がその場を去り数分後、



とある黒服の者が現れる。



「こいつも倒せるか、さすがはレイヴァー。そろそろいいかな、僕が出ていっても。」


バサッ。

黒服はフードを外す。



そこには、茶髪のショートヘアーの男が。


「待っててくれよ、レイヴァー。」



スッ。

男はその場から静かに消える。


彼はいったい……。


第10章 完




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第10章まで読んで頂きありがとうございました。


クロウ達3人は、謎の手紙によりモンスターと出会いました。

そして、サリアの覚醒。

黒服の男も動く!?


蠢く会はまだ止まらない!

男の正体が明らかに!?

3人とも応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

ぜひ、レビューの記載

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!


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