第50話 アーシェの力、白き世界成就

「そんじゃあ聞かせてくれ、商人達に何があったんだ?」

「襲われてた理由までは正直わかんねえ。けど、蠢く会がレッドパンサーっていうモンスターをを呼び寄せて襲わせてたってのが事実だ。」

「レッドパンサーとはいっても、通常とは違う個体だったよ。背中に黒い模様が入ってて、獰猛ていうよりも戦闘の仕方を知ってるみたいだった。」

「今までのボアホーンとか、ネオスコーピオン、ブラックマンティスと同じか。蠢く会の方はどうだったんだ?」


ダイカンに話を振られ、アーシェが話し始める。


「私が戦ったのが、ライアっていう蠢く会のメンバーだったわ。彼女もかなり戦闘訓練は積んでるみたいだったわ、あと、レッドパンサーのことを実験体とも言ってたわね。」

「実験体?そんなことできるものなんですか?」

「実際、彼女は何か笛のようなものを使ってレッドパンサーを呼び寄せていたわ。それと、共通して言えるのがこのチップね。」


サッ。

アーシェはこれまでの特殊個体から手に入れたチップを取り出す。


「なんだこれは?小さい機械みたいだが。」

「俺たちにもよく分からねえ。だから、少しでも情報が欲しいんだ、蠢く会が何を目的としてるのか。白き世界成就のためって言ってた事も気になる。」

「蠢く会の目的がそれなんですかね?あたしも聞いた事ないし、このギルドでも話してる人は見たことありませんね。」

「表立って動いてないのは確かよ。……事実、アルタの町で出会ったハーデンと、今回のライア、それまで私たちは存在すら知らなかったんだから。」


話の途中で、クロウはアーシェがライアと戦ってた時の様子を聞く。



「そういや、ライアと戦ってた時アーシェ何か力を使ってよな?あれはなんだ?」

「ああ、あなたと少し似てる力よ、クロウ。私のは、っていう魔力の上限を一時的にあげることができる鍵があるの。全部で3段階、今は2段階までしか使えないけど、あなたと同じく2段階を使ったらしばらく動けなくなるわ。」

「諸刃の剣ってところか。俺もアーシェも、癖のある力を持っちまってるな。」

「けど、その力がアーシェとクロウ、さらにはこの町を助けてくれてる。無理しすぎない程度に使っては欲しい力だな。」


モゾモゾッ。

サリアは体を揺らし、何かを隠している様子。



「それじゃあ、皆さんには怪我の完治まで安静にしてもらいたいので、それまでこの町で情報収集なんてどうですか?」

「そうだな、蠢く会のことを知らないとこれからのことも決められない、2人もそれでいいか?」

「ええ、構わないわ。」

「サリアもOK!」


ズザッ!

3人は立ち上がり、ギルドの扉まで向かう。


「それでは、あたしも少し情報を探ってみるんで皆さんもお気をつけて!」

「ありがとう、それとごちそうさま。リィンのおかげで、心も体も暖まれたわ。」

「それは良かったです!……ん?心も?」

「細かいことは気にしないで!リィンちゃん!じゃあ、行ってきます!」


レイヴァーはダイカンからリィンの過去を聞いたことは触れずに外に出た。



数分後、リィンが勝手に過去の話をしたダイカンのことを顔を真っ赤にして怒ったことは言うまでもない。





レッドパンサー討伐から、1日が経過。



レイヴァーはナウサに蠢く会のことを知る人がいないか探していた。


だが、詳しい情報はおろか存在を知ってる人もほとんどいなかった。


1度休憩するために、レイヴァーは宿屋に戻っていた。



「やっぱり、そう簡単に情報って手に入らないね。」

「それもそうよね、私はまだしも2人はアテナイに少しは長くいるのに今まで情報を聞いたことがないとなると、相当機密性が高い集団よね。」

「そんな奴らが、俺たちの前に姿を数回も現した。それに、実験体も複数投入してる。何が目的かわからねえけど、これからも襲ってくるのはまちがいないな。……ほらよ、できたぜ。」


サッ。

テーブルの上にはチョコレートをメインに使ったお菓子が。

ホールケーキであろう、カットした断面は三層に分かれており、1番下はきめ細やかな黄色いスポンジ、真ん中の層は柑橘系のフルーツが取り入れられたクリームが、1番上の層は刻んだチョコも入れられたスポンジとなっており、最後にチョコレートでコーティングされている。


それを、クロウは宿屋のキッチンを借りて休憩するついでということで作り上げた。


「すごーい!!クロくん、本当にお菓子作りできるんだ!」

「信じ難いと思うけど、クロウは料理もお菓子も上手なのよね、本当に悔しいけど。」

「取り上げんぞ。」

「うそうそ!じゃあ、いただきます!」


カチャッ、カチャッ。

3人はケーキとお茶を飲みながら一息つく。


「けど、俺たちの前にだけ現れてるってのも考えにくいよな。他の町とか、それこそスパルタとかテーベにも現れてるんじゃねえか?人族だけって限られてるわけじゃねえし。」

「確かに、あり得るわね。まあ、そこまで調べる力は今の私たちにはないわ。まずは身の回りからね、それの、白き世界成就の意味もどうにか導かないと。」

「これはさ、サリアの想像なんだけどなんで白い世界なんだと思う?」

「なんで?……ピンと来ないな。サリアはどう思ってるんだ?」

「サリアはさ、白色って全てを無にする色だと思うの。だからさ、蠢く会は


サァー。

サリアの発言は辺りを静寂に変える。


「そんなことあり得るのか!?でも、0とは言えないか……。」

「私は、正直可能性は高いと思うわ。この世界が作り上げられてもう何年も経つ、各地の一部の人たちが疑問を感じて動き出しても何も不思議じゃない。」

「じゃあ、モンスターを操ってるのもこの世界に住む種族を減らすため?」

「クロくんの予想は当たってると思う。この世界の1番の障害は、サリア達全種族って考えてる可能性もあるからね。」


彼らが立ち向かっている蠢く会、彼らの想像を遥かに超える存在なのではないかと感じられてきていた。



その次の日、彼らに1通の手紙が送られた。

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