第45話 3人の異名、異変

レイヴァーとして、クロウ、アーシェ、サリアの3人は部隊を結成。


この報せは、町中にすぐ広まった。



もちろん、戸惑う声も上がっていた。

どれだけ町の総意で受け入れると決めたとしても、全てを認められるほど人族は良くできていない。



公表した次の日、

朝食を宿屋でとっていたところに、クロウがある提案をする。


「なあ、俺たち3人それぞれ目標ってのはあるけどよ、そこにたどり着くにはまだ時間がかかるよな。」

「まあ、そうね。私は両親を助けたいけど、今のままじゃ捕まって終わってしまうわ。」

「サリアは2人と行動できれば何でもいいけど、いつかはお母さんを助けたいな。エルフは長生きって言っても辛いことには変わらないから……。」

「だよな、なら、まず俺たちは周りからの評価を上げるべきだと思うんだ。」


ペラッ。

クロウは一枚の紙をテーブルの上に置く。


「クロくん、何これ?」

「俺が感じた3人の特徴一覧だ。」



そこに書かれていたこと。



クロウ……戦闘向き、戦い方や料理の知識とスキルを持つ、頭悪め。


アーシェ……知識向き、魔法の知識や世界の知識を多く持つ、人付き合い苦手。


サリア……人付き合いが良く、世界のいろんなものを知ってる、常識低め。



と、簡単にまとめられていた。


「これが、俺が直感で書いてみた特徴だ!割といいだろ!」

「まあ、そうね、あとで1発引っ叩くけど言いたいことは分かるわ。」

「そうだね、もう少し伝え方が良かったら100点なんだけど、あとでサリアも叩く。」

「なぜ!?」


クロウの反応を起点に、ガヤガヤと賑やかになる。


「それで、これでどうするつもりなの?」

「簡単だ、俺たちがになればいいんだ!俺が討伐クエストを、アーシェがその知識を活かして困ってる人に指導を、サリアが種族関係を作り出してくれたら!」

「そうか!サリア達でお助けすればいいんだね!」

「ああ、そうすれば少しは俺たちの評価も上がるだろう!」


コクッ。

アーシェが首を傾げる。


「でも、これですぐに良い関係性が作り上げられるわけじゃないわよね。」

「そりゃそうだろ。だったら、時間をかけて鉄よりも固い信頼を作らねえとな!」

「……それもそうね、分かったわ。クロウの作戦でいきましょう。」

「よしっ!善は急げ、今日から行くぞ!」


スタッ。

3人は立ち上がり、身支度を整え宿の入り口に向かう。


「レイヴァーのみんな、今日も頑張ってね!」


後ろから宿屋のオーナー声が届く。


「ああ!行ってくる!」


スタッ、スタッ、スタッ。

3人は暖かい太陽に迎え入れられ、外に出る。


「さてと、まずはギルドだな!」


スパーンッ!

パシッ!

クロウに2つの衝撃音が響く。


背中を叩かれ、右頬にデコピンがクリーンヒット。


「痛っ!?」

「さっき言ったでしょ、良い案だとは思うけど1発引っ叩くって。」

「サリアも言ったから、これでちゃらね!」

「俺何もしてないよな?」


腑に落ちていないクロウをよそに、3人はギルドに入る。



キィーッ。

中に入ると、ちょうどリィンがこちらに歩いて来た。


「あ、おはようございます!レイヴァーの皆さん!」

「おはよう、リィン。ダイカンはいるかしら?」

「いますよ!ちょっと待っててくださいね!」


ザザッ。

椅子に腰掛け、3人はダイカンを待つ。


「おう、どうした?」

「ちょっと相談なんだけどさ、ダイカンさんにサリア達の考え聞いてほしいの!」



3人は、自分たちがやりたいことをダイカンに話していく。



「なるほどな、つまりは何でも屋として町からの評判を上げると。俺は良い考えだと思うぜ、少しは力も貸せるだろうしな。」

「良いじゃないですか!私もお手伝いしたいです!」

「ありがとう2人とも、それじゃあ早速動きましょうか。」

「おぉー!!」


ここから3日間ほど、各々が役割を果たしていった。





拳の響ケンノヒビキ二式ニシキ! 雷鳴カミナリ!」


ガゴーンッ!

回転で勢いを増したかかと落としが、サーベルウルフを討伐する。



「お疲れ様です!クロウさん!」

「おう、リィンもありがとうな。」

「いえいえ!私もたまには体を動かさないと鈍ってしまいますから!」


クロウは町の近くで異常発生するモンスターの討伐、商人の護衛などを担当した。


そして、時々リィンとも協力してクエストをこなしていった。




「ここは、水源が近いからこの作物を育てると良いわ。それと、肥料はこっちの方がこの野菜には良いわね。」

「ほぇ、あんた物知りだな!ありがとう、やってみるよ!」


アーシェは膨大な知識を活かし、町がより活気付くように作物の育て方や、効率的な商売の仕方を伝授していた。




「サリアお姉ちゃん!これって何の花?」

「これはね、ヒルガオっていってお昼になると花がパーッと咲くきれいなオレンジ色の花だよ!あとこれはねーー。」


サリアは植物について、子供達に教えていた。


クロウやアーシェにはない、人との接し方の巧さが発揮されていた。


「サリアさん、この前はありがとうね。おかげさまで、毒のある花とない花の見た目がわかるようになったわ。」

「本当!良かった!」



こうしてレイヴァーは町の中で徐々に信頼を得ていった。




そうした3日後、



3人はギルドで今後について話し合っていた。


「もう少しこの町で慣れたら、少し周りの町も見てみるか。もしかしたら、有益な情報も得られるかも知れねえ。」

「そうね、同じ場所だけに固執していても意味がないし。」

「じゃあね、次行く場所はーー。」



カンカンカンッ!

数日前にも聞いた、町の緊急を知らせる鐘が鳴り響く。


「この音って!」

「ああ、近くでモンスターが出たんだ!行くぞ、アーシェ!サリア!」


ダダッ!

3人は外に出る。



「おおっ!レイヴァーのみなさん!」

「あなたは、この前の商人さん!」


タッ、タッ、タッ。

目の前から、数日前に襲撃から助けた商人が走ってくる。


「ああ、すまない、この近くでまたモンスターが出たみたいなんだ!今度は、私の仲間の商人が襲われたみたいで。」

「また商人狙いか、さすがに怪しいな。」

「ええ、裏で誰かが糸を引いてるかもしれないわね。」

「とにかく助けに行こう!ほら、2人とも走るよ!」

「すまない、レイヴァー。よろしく頼む。」


タタタタタッ。

3人は町を出て、襲撃地点まで向かう。



はたして、そこにいるのは。

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