第46話 新種のモンスター

「だ、誰か、助けーー。」

「グォア!!」


ガゴーンッ!

ドスンッ!

1人の商人が、モンスターの一撃で木に叩きつけられる。


「な、何でだよ、こんなやつ今までいなかったはずだろ!」


ズザッ。

1人の男は、腰が抜けて歩けない様子。


「グルルルルッ。」

目の前のモンスターは、ゆっくりと男に迫る。



その目は、狩りをするハンターを物語る。



ブァ!

モンスターの右手が振り上げられる。


「そんな、そんなーー。」

空の光ソラノヒカリ初式ショシキ! 半月ハンゲツ!」


グルンッ!

ガギーンッ!

風を切り、クロウが2刀の回転斬りで攻撃を受け止める。


「ガァ?」

「初めましてだな、てめえも!」


ガンッ!

その手を弾き飛ばし、追撃を仕掛けようとする。



だが、


シュンッ!

咄嗟にモンスターは距離を取り、クロウの射程範囲外に出る。


「っ!?こいつもか、最近のモンスターは知性働かせすぎじゃねえか?」

「クロくん!」


タタタタタッ。

後方からアーシェとサリアが駆け寄る。


「アーシェ!怪我人の治療を最優先に!俺とサリアで、あいつの動きを止める!」

「分かったわ!」

「OK!いくよ!」


ズザッ!

クロウは大剣に切り替え、サリアはダガーを構え突き進む。




「えほっ、えほっ。」

「動かないで、今手当てをするわ。 癒せ、 回復の霧ヒールミスト。」


フワァァ。

水の霧が、木に打ち付けられた男を覆い傷の進行を止める。


「おおっ、助かった。ありがとう。」

「怪我が治ったわけじゃないわ、この軟膏をひどい場所に塗って。少しはマシよ。他に仲間は?」

「俺と、そこにいるやつだけだ。後は……あの黒服野郎が。」

「黒服?近くには見当たらないようだけど?」


怪我をした男は、アーシェに話を続ける。


「俺たちは、2人でいつも動いてるんだ。けど、途中でナウサまで護衛してくれるっていう黒服の女がいたんだ。そいつが、笛みたいなのを吹いたらあいつがここに。」

「なるほど、意図的に呼び出されたってことね。情報ありがとう、あなたはあの人と一緒に離れてて。」


タタタタタッ。

アーシェはクロウたちに合流するため走る。



ガギーンッ!ガギーンッ!

クロウとサリアは目の前のモンスターと対峙していた。


「サリア!こいつの名前わかるか?」

「少し見た目が違うけど、だと思う。」



レッドパンサー……その名の通り、真っ赤な虎で鋭い牙に巨大化した命を刈り取る爪、全長は5mほどで一撃でも食らえば瀕死は確定。


しかし、この個体には背中に黒い線の模様がいれらており、それが恐怖を掻き立てる。

サリアの知識にはない部分だ。



「まあ、危険なやつってのは間違いねえな。こいつの爪に当たったら、俺たちの命は最後だ。気をつけていくぞ!」

「了解!」


ザザッ!

2人で挟み込む形を作り、狙いを定めさせない動きをする。


「射貫け!光線レイ!」


ピューンッ!

無属性の魔法光線が、顔面目掛け突き抜ける。


スサッ!

その体では想像できない華麗な身のこなしで、攻撃を避ける。


「背中がお留守だぜ!  獣の声ケモノノコエ三式サンシキ! 獅子の閃爪スフィンクス!」


ブンッ!

ガギーンッ!

完全に背後をとった大剣の突き。


しかし、強靭な尻尾で迎え撃たれる。


「おいおい、なんて反射神経だよ!」

「クロくん避けて!」


グルンッ!

その場でレッドパンサーは回転し、クロウを剥がしにかかる。


「ちっ!」


ズザッ!

体勢を崩され、前を向くと体1つ分と言っても過言ではない爪が。


「させないよ! 守れ! 守護シールド!」


ブワァ!!

キーンッ!

クロウの周りを葉が飛び交い、爪を受け流す。



そして、


「ありがとよ!サリア! 雨の音アメノオト初式ショシキ! 時雨シグレ!」


シュッ!

ジャギンッ!

弾かれた巨大な手から、腹下に潜り込み折りたたみ式剣で、すり抜けざまに斬り抜ける。



ピシャッ。

少し傷が入るが、痛がるそぶりは見せない。



「ガッツリと傷を入れるのは無理か、けど!」

「そこは、私のテリトリーよ! 穿て!紫電ライトニング!」


ビリリッ!

ガゴーンッ!

レッドパンサーの頭上から電撃が降り注ぐ。


「ウガァ。」

感電したのだろうか、少し動きが鈍る。


「ナイス、アーシェ!」

「私を誰だと思ってるの。」

「人付き合いが苦手なツンデレ魔族?」

「雷で黒焦げになる?」

「2人とも、見て!」


バゴーンッ!

雷を受けたレッドパンサーが口を開き、魔力を溜めている。


「おいおい、最近のモンスターって魔法使いだらけか!?」

「そんなわけないでしょ、このモンスターも特殊個体ってことよ。」

「日常的に出会い過ぎてレア度が低いっての。」

「くるよ!2人とも!」


バォォ!!

口からはアーシェの火炎弾ファイアーショットの3倍はあるであろう、炎の弾丸が地面を焼きながらクロウとアーシェに迫る。


「冗談きついぜ!」


ズザーッ!

2人は横に転がり、魔法を避ける。



通った道の草は、黒焦げになっている。



「グォァァ!!」

レッドパンサーの怒号が響き渡る。


「クロウ、サリー!レッドパンサーの動きを止めて!その間に、私が雷で撃ち抜くわ!」

「アーちゃん、信じてるよ!」

「おう、任せとけーー。」


ピキーンッ!

クロウは背中から嫌な何かを感じとる。


(この感覚、殺気!?)


ブンッ!

ガギーンッ!

振り返りざまに折りたたみ式剣で、背後からの殺気を受け止める。


そこには、黒いローブを着た者が2mはあるであろう槍でクロウを貫こうとしていた。


「へえ、やるじゃない。あんたがオールドタイプのクロウね。」

「俺を知ってるのか、その存在感の隠し方、一点に送る殺気の鋭さ、相当の手慣れだな。」

「クロウ! 貫け!氷柱アイシクル!」

「ちっ!」



バリリリッ!

ガゴーンッ!

地面から氷柱が生え、黒い者を貫こうとする。



しかし、攻撃を察知したその者は距離を取り魔法を避ける。


「邪魔しないでよ、これからがいいところなんだからさ。」

「ふざけないで、異質なあなたとクロウが釣り合うとは思えないわ。」

「あはっ!あんたも面白いね、魔族さん!」


黒いローブの正体はいったい。

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