第35話 モンスターの異変

「くそっ!なんでこんなところにモンスターの群れが!」

「ここは荷物を捨てて逃げましょう、でないと我々も危険です!」

「だがどこに逃げる!こんな数のモンスターから逃げ切れるか!?」

「なら、どうにか僕が活路を開くーー。」


シューンッ。

アサルトビーがその30cmほどある針で、商人の心臓を貫こうと迫る。



「しまっーー。」

「刈り取れ!風刃カッター!」


ブンッ!

ジャギンッ!

風の刃が、空を切りアサルトビーを真っ二つ。


「おお!救援が来た!」

「お待たせ、ヒーローの到着だよ! 参の舞サンノマイ! 悲哀の挽歌ソローエレジー!」


スッ!

シュンッ!

瞬足で走り込み、サーベルウルフを斬り捨てる。


「俺たちがモンスターを引き受ける!あんた達3人は、荷車を守っててくれ!」

「わ、わかった!」

「そらっ! 拳の響ケンノヒビキ三式サンシキ! 猛雷タケリイカヅチ!」


グルンッ!

ガゴーンッ!

高速の回転蹴りがドスフロッグを打ち抜く。


ガゴーンッ!

ボォォ!

3人は着実に数を減らす。


「サリア、敵の残りは?」

「サーベルウルフ6体、アサルトビー5体、ドスフロッグ8体だよ。クロくん、作戦は?」

「作戦?ええと、あーと。」

「クロウにそんなもの考えられるわけないでしょ。各個撃破でいくわよ!」


ザザッ!

アーシェが先行する。


「クロくん、落ち込んじゃダメだよ!まだチャンスはあるから!」

「その励ましが余計に傷つくっての!」


ズザッ!

2人もモンスターに突っ込む。



「グアォ!」

「モンスターが商人を襲うなんて、いったい何が起きてるの? 貫け!氷柱アイシクル!」


ガキガキガキッ!

ガゴーンッ!

地面に生成された氷柱がドスフロッグを突き刺す。


「この荷車の中からは、特別モンスターが襲いそうな匂いはしないぜ。 雨の音アメノオト三式サンシキ! 霧雨キリサメ!」


グルグルグルッ!

ズシャン!

高く跳び、折りたたみ式の剣での回転斬りがアサルトビーを斬り裂く。


「だとしたら、この人達が何かモンスターを焚き付けてる? 降り注げ!光のライトシャワー!」


ヒューンッ!

ザザァ!

空に魔銃で大きな弾丸を放ち、そこから雨の如く無属性魔法が降り注ぐ。


3人は今までよりもより強固な連携で立ち回る。


クロウが接近すれば、アーシェが距離を取り魔法を放つ。

サリアがアーシェの背後をカバーし、サリアを追うモンスターをクロウが狩る。



着実にモンスターを倒していき、残り6体。



「ねえ、アーシアちゃん!ちょっと、サリアに合わせてみて!」

「え?いきなり何を?」


ザザッ!

サリアは群れの中に真正面から突き進む。


「ガァ!!」

「分かるでしょ、サリアのやりたいこと、アーシアちゃんなら!」


シュッ!

植物魔法を使い、両手にロープのように枝を持つ。


「もう!あなたといいクロウといい、自分勝手な人が多いわね!」

「なんか俺もディスられた!?」


ボァァ!!

アーシェの手のひらに火の玉が2つ生み出される。



「さすがアーシアちゃん、いつでもいいよ!」

「後悔しないでよ!」


ブンッ!ブンッ!

ボァァ!!

枝に火の玉が纏わり、炎の鞭と化す。



そして、



「燃え上がりなさい!」

炎の鞭フレイムウィップ!」


パシンッ!パシンッ!

ボゴォォォ!!

炎の鞭が全てのモンスターを焼き尽くす。



そこに残ったのは、素材のみ。

すべてのモンスターを倒し切ったようだ。



「ふぅ、アーシアちゃんさすが!」

「もう、少し連携について話し合っておく必要があるわね、毎回こんなんじゃ疲れてしょうがないわ。」

「なぁ、なんで俺もディスられた?」

「当たり前でしょ。ほら、早く行商人を助けて帰るわよ。」

「解せない……。」



スタッ、スタッ、スタッ。

3人は行商人の元へ向かう。



「あ、ありがとう。おかげで死なずに済んだ。」

「信号弾を撃つタイミングが良かったんだ、あんたの生きる意思が結果に繋がったんだよ。」

「嬉しいね、私は見ての通り商人だ、町に戻ったらお礼をさせてくれ。」

「ああ、ありがとうなーー。」



ゴゴゴゴゴッ。

何かが走ってくる音が響く。



「クロウ!まだ終わってなさそうよ!」

「みたいだな、それにこの音……かなりでかいな。」

「商人さん達は道沿いにナウサに戻って!サリア達がここは抑え込む!」

「あ、ああ、すまない。」


ザザザザザッ。

荷車を引き、3人の商人は町に向かう。



「なんだ、何が来る。」

「こんな平地でする音じゃないね、また新種?」

「嫌なこと言うのはやめなさい、サリア。本当にそうなったらーー。」


ドドドドドッ!

近くの木を薙ぎ倒し、1体のモンスターが突進してくる。


ボアホーンのようだ。



しかし、何かが違う。


本来のボアホーンは体長1mほどあり、猪のような体に尖ったドリルのような角が特徴的。




だが、どう見てもサイズ感が桁違い。


ぱっと見5倍はあるだろう。



「おい、なんだあいつ!?」

「ボアホーン……にしては大きすぎるわね。」

「もう、アーシアちゃんがフラグ建てるから回収しちゃうじゃん!」

「私のせいではないでしょ!とにかく、あれも倒すわよ!」


ズザッ!

3人も真正面から立ち向かう。



「ブォォ!」

「上がれ!岩壁ウォール!」


ゴゴゴッ!

バゴーンッ!

岩の壁を生み出すも、何もないかのように貫く。


「明らかに力も膨れ上がってるわ!油断しないで!」

「なら! 射貫け!光線レイ!」


ピューンッ!

カキーンッ!

無属性魔法のビームも弾かれる。


「まるで効果ないね、どんな体してるの?」

「速さが売りなら、足をやれば! 雨の音アメノオト初式ショシキ! 時雨シグレ!」


シュンッ!

折りたたみ式の剣で居合斬りを右足にターゲティング。



だが、


ズザァ!

巨大ボアホーンが急に動きを止め、後ろ足で蹴り飛ばそうとする。


「んなっ!?」


ズザーッ!

急遽技をやめ、スライディングして足技を避ける。


「何今の動き!?ボアホーンがクロくんの攻撃に反応した!?」

「こんなの、本来のボアホーンの動きじゃないわね。」

「こいつ、かなり厄介だぞ。」



クロウの頭に1つの予感が。


(こいつ、本当にただのモンスターか?今の動き、)



「ブォォ!!」

巨大ボアホーンの怒号が鳴り響く。



「こんなの、ナウサに近づけさせられない!やるわよ、クロウ!サリア!」


3人の戦闘はさらに激化していった。

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