第34話 アレス家、奇襲

「アレス家って、どんな家柄なの?」

「俺の父さんは、王国の騎士団団長として任務についてたよ。除隊してからは、俺と兄さんを強くするために修行をつけてくれた。」

「王国の騎士団に所属って、すごいことなんじゃないの?アテナイがどんな制度か知らないけど、テーベでは血筋と実績がないと王女アンジュ様の近くにはいれなかったよ。」

「多分、アレス家に伝わるこの力が目に留まったんだろうな。」


ピッ。

クロウは左手中指に付けている指輪を見せる。


「赤い宝石の嵌められた指輪?」

「ああ、血のホワイトデイの時に父さんから与えられたものだ。俺も初めてこの力を使えた時は、頭がどうにかなりそうだった。」



ここからは、クロウの過去の話。



血のホワイトデイが起きるまでは、父フェルナンドと兄ベルリと共に楽しく暮らし、同じく騎士団に入隊するために修行をしていた。


特にクロウは多くの武器に適性があり、拳、2刀、大剣、折りたたみ式剣を扱っていた。



その4つの武器での戦い方が、過去より受け継がれるのがアレス家なのだ。

クロウは運命か、たまたまか全てを使いこなせた。



そして、もう1つ受け継がれている力。


アレス家の加護、感情解放エモーションリリース



喜び、怒り、哀れみ、楽しみの感情を増幅させることで特定の力が一時的に限界を越えるのだ。



喜び……瞬発力を増幅

怒り……筋力を増幅

哀れみ……思考力を増幅

楽しみ……技術力を増幅



現状1分使うことができ、使用後は体にその負荷が一気にのしかかる。



この力の欠点もある。


そう、本人の意思に反して発動してしまうこともある。

本人の潜在意識に反応して、誰かを守る、誰かを倒すために発動する可能性も。




本来はモンスター倒す際にのみ使うことを許され、増幅させすぎると暴走を引き起こすと言われている。



アレス家のこの力は特別なものであり、さらにフェルナンドは鍛え上げられた体と力を駆使して騎士団長として国に名を馳せていた。





しかし、血のホワイトデイによりフェルナンドとベルリは行方不明。


クロウはなぜかアテナイにて、オールドタイプのまま生き残り、アルタの町で修行を重ね自分を磨き上げていた。



そして、時間があれば家族の情報を探し、血のホワイトデイの真相について調べる。

それが、クロウのこれまでの行動だ。



「なるほどね、あなたも苦労してるのね。」

「まあ、2人に託されたこの命だ。必ず血のホワイトデイのことを明らかにするし、2人は生きてると信じてる。俺は、この世界を知りたい。」

「すごいね、クロくんの目標は大きい。その目標、サリアも手伝っていい?」

「いいのか?」


ガシッ。

サリアはクロウの手を握る。


「この手がなかったら、サリアは死んでた。生き死になんてどうでもいいって思ってた時には感じられなかった気持ちが、今はある。サリアは、クロくんの力になりたい。」

「ははっ、嬉しいぜ、俺からも頼むよ、サリア。お前の力は興味がある。」

「任せて!アーシアちゃんは?」

「え?……まあ、私も血のホワイトデイについて知りたいのは同じだわ。同じ目的なら、協力してもいいわ。」


コソコソッ。

サリアがクロウに耳打ちする。


「アーシアちゃんってさ、少しツンデレかな?」

「ん?そうなのか?アーシアがツンデレーー。」

「誰がツンデレよ!余計なこと言うなら、ウェルダンにするわよ!」

「お、落ち着け!協力してくれるんだろ、じゃあこれからも頼むぜ!」


クロウは慌てて場を治める。


「はぁ、ええ。これからも力を貸すわ。」

「じゃあ、ご飯も食べ終わったしまたクエストでも受ける?」

「クロウは怪我してるんだし、留守番しててね。」

「は?少しくらい見にいくだけならいいだろーー。」


カンカンカンッ!

突如外で鐘が鳴り響く。


「なに!?」

「この音は、冒険者の緊急招集の音だよ!行こう、2人とも!」

「ああ!ごちそうさま!お金はここにおいとくぜ!」


タタタタタッ。

3人は外に走る。



「この町にモンスターが来るとか?」

「いや、町のこの警報は主にこの近くで起きたことに対する鐘なの!多分、外で何かーー。」

「おーい!クロウ!アーシア!サリア!」

「ダイカン!どうした!」


タタタタタッ。

ギルド長のダイカンが走り寄る。


その顔は、焦りで強張っていた。



「3人とも、帰ってきたばかりで悪いんだが、ここに向かう途中で行商人が襲われたみたいなんだ!信号弾を300mくらい先から捉えた、行ってもらえないか?」

「いいぜ、俺たちに任せろ!」

「けど、クロくんその傷じゃ!」

「いいわ、あなたに無理はさせない。それに、ブラックマンティスみたいなやつだったら、クロウがいないと厳しいわ。3人でいきましょう。」

「ありがとう、礼は弾む。頼むぜ!」


ダダダダダッ!

3人はナウサの町を出て、信号弾が上がった場所に向かう。





数分走ると、



「あれだ!モンスターの群れがいるぞ!」

「ドスフロッグに、サーベルウルフ、アサルトビーがあんなに!?」


3種類のモンスターが20体ほどいる。



襲われている行商人は、護衛と共になんとか凌いでいる。



「いくぞ、俺たちの力を見せる時だ!」

「ええ、今回は私も前衛をするわ。3人で、臨機応変に戦うわよ!」

「OK!クロくん、アーシアちゃん、サリア、今すごい幸せ!早く終わらせて、町に帰ろう!」

「おう!」


チャキンッ!

3人は武器を構え、モンスターの群れに突っ込んでいった。

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