第18話 2人の帰還、忙しない日々

2人はアルタの町にたどり着いた。


道中飛び出してきた少数の魔物も倒し、本来のクエスト【サーベルウルフの討伐5体】の予定だったが……。


キィーッ。

2人はギルドに入る。


「戻ったぜ、リィンいるか?」

「ん?あっ!クロウさん!よかったです、ご無事で……そちらの方は?」

「ん?あぁ、アーシア、軽く自己紹介してくれ。」

「アーシアよ、縁があって隣のエデッサから一緒に同行させてもらってるわ。」


スッ。

アーシェはリィンに向け静かに手を伸ばす。


「あ、これはご丁寧にどうも!アルタの町の受付嬢、リィン・キヒです!よろしくお願いします!」


サッ。

2人は握手を交わす。


「でも、何でクロウさんはエデッサに?クエスト依頼のサーベルウルフはそこまで行かなくてもいたと思うんですが?」

「ああ、まあ、少し足を伸ばして休憩がてら寄っただけだ。」

「……まさか、クロウさん??」


ニコッ。

満面の笑みでリィンはクロウに近寄る。


何故だろう、変な圧力を感じられる。


「クエスト以上のモンスターと、戦ってきたわけじゃありませんよね??」

「え、あ、えっと、それはーー。」

「これが今回ここまで来るのに倒したモンスターの素材よ、はい。」


ドサッ!

サーベルウルフ5体だけの重さじゃない音が、テーブルの上に響く。


「ちょっ!アーシア!」

「ありがとうございます、アーシアさん!さあて、何が入ってるか見ないと!」

「待ってくれリィンーー。」

「はい??」


ニコッ。

恐怖すら感じる満面の笑み。


「……な、何でもありません。」


スンッ。

クロウは観念して、体をすぼめる。


「サーベルウルフが8体に、ドスフロッグが7体、あとこれは……見たことありませんね、何の素材でしょうか?」

「私もあまり詳しくないのだけど、少し知ってる人たちからはキラーアントって呼ばれてたわ。」

「キラーアント!?名前は聞いたことありますが、少なくともここら辺に依頼が出されるようなモンスターじゃありませんよ!?」

「そ、そうなのか、ふーん。」


ギリッ。

優しい顔から一変、リィンは目を尖らせクロウを見る。


「クロウさん、私言いましたよね!!」

「あ、はい。」

「何でこんな無理ばかりするんですか!サーベルウルフもドスフロッグも危険なのは変わりませんし、キラーアントなんて情報すらないモンスターまで!」


ギルド内にリィンの怒号が響き渡る。


「わ、悪いーー。」

「悪いじゃ済まないんですよ!今回はアーシアさんがいたかもしれませんが、こんな無理ばかりするんじゃ本当にあたしはクエストを発行できませんよ!」

「そ、それだけは……え?あたしは?ギルドがじゃなくてか?」

「あっ……。」


スッ。

アーシェはその場から離れようとする。


(私はここにいるべきじゃないわね。)


タッ、タッ、タッ。

静かな足取りでアーシェはギルドの外へ向かう。


「はぁ、言っちゃった。……そうですよ!ギルドからはクエストを出すな、なんてそんな通達は出てません!ただ、

「そ、そうだったのか。……ごめんな、リィン。」


シュンッ。

スノウは深くお辞儀をして謝罪をする。


「別にいいですよ、あたしもクロウさん1人だったらもうクエストを出さなかったかもしれませんが、アーシアさんが今は一緒にいる。少しくらいは、大目に見ます。」

「ありがとう、リィン。」

「とりあえず、報酬は少し待ってください、こっちで計算するので。少しはアルタに留まるんですよね?」

「そうだな、また明日来るよ。」



スタッ、スタッ、スタッ。

クロウもギルドを出る。


すると、そこにはアーシェが待っていた。


「あら、終わったの?」

「ああ、何とかリィンにも理解してもらえた。アーシアがいなかったら相当お咎めがあっただろうな。」

「そう、愛されてるのね、あなたは。」

「そうか?まあ、嫌われてるよりはいいか。」


スタッ、スタッ、スタッ。

2人はアルタの町を歩く。


「どこに行くの?」

「そうだな、確か俺の家に昨日作ったクッキーが残ってた気がする、取りに行っていいか?」

「行きましょう、今すぐに。」


どうやら、アーシェは食に目がないようだ。


2人は、クロウの家に向かう。




辺りでは子供達が走り合い、チャンバラのようなことをしている。


肉や魚を売る大きな声や、傷薬を売る声など賑やかな音が2人の耳に届く。






そんな日常的風景の中に、突如似つかわしくない警報音が鳴り響く。


ウーンッ!ウーンッ!

甲高い警報音が、町の人たちに危険を知らせる。


「なんだ!?」

「この音って、襲撃時の音じゃない!?」


クロウとアーシェは辺りを見渡す。



「なになになに!?」

「怖いよ、お母さん。」


ザワザワザワッ。

辺りの町の人たちもパニックになる。



「この音……かなりの数の何かが来る!」

「音?そんなもの、私には聞こえなーー。」

「クロウさん!アーシアさん!」


タタタタタッ。

リィンがギルドから血相を変えて走り寄る。


「リィン!何があった!」

「町の入り口から、数えきれないモンスターが攻め入ってきてます!こんなこと、今までなかったのに。」

「この町に攻めてきてる!?くそっ、アルタを壊させるわけにいくか!!」

「私も手伝うわ!」


ダダダダダッ!

クロウとアーシェは入り口に走り出す。


なぜアルタの町にいきなりモンスターが攻めてきたのか、2人は町を守ることはできるのだろうか?

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