第17話 レイヴンズとは

スタッ、スタッ、スタッ。

2人はクエストを終え、少しの怪我を負いながらも何とかエデッサに戻る。


「じゃあ、ギルドに報告行こうぜ。」

「ええ。」


キィーッ。

ギルドのドアが開かれ、中には2人の帰りを待っていたギルド長が。


「おかえり、話は聞いたよ、この町の冒険者達が結託してブロンコリーを盗んでたって。」

「ああ、そこまで知ってるってことは、あいつらから聞いたんだな。処罰はあんたに任せる、けど、償うチャンスを与えてくれたら俺は嬉しい。」

「現場にいたのは君たちだ。君たちの判断を信じよう。」

「ありがとうな。」


ドサッ。

2人の目の前に大きな袋が置かれる。


「報酬だ。」

「いや、多くないか?こんなクエストじゃ。」

「いいんだ、君たちが助けてくれなかったらもっと被害が出てた。これはお礼も含めてある、受け取ってくれ。」

「……分かった、なんかあったら連絡してくれ。あいつらが何かやらかしたら、特に。」

「ああ、ありがとう、優しき冒険者。」


スタッ、スタッ、スタッ。

2人はギルドを後にする。


「いくらもらったの?」

「えーと、銀貨10枚に、銅貨が30枚だ。本当は、銀貨5枚のはずだったんだけどな。」




この世界の価値観


金貨……10万円に近い価値。

銀貨……1000円に近い価値。

銅貨……10円に近い価値。


1人で町の平均的なご飯にかかる費用は、1食銅貨30枚。

泊まりは1泊銀貨1枚。



「アーシア、山分けでいいか?」

「そんなに私がもらっていいの?あなたに恩返しをしただけよ。」

「だからって、スパルタから逃げてきた魔族のアーシアがお金持ってるのか?」

「そ、それは、ないけど。」


フフッ。

クロウは微笑みをこぼす。


「俺のために力を貸してくれたんだ、俺が対価を払いたいと思っても何の不思議もないだろ。」

「ありがとう、クロウ。」

「じゃあ、俺はもう1つのクエストを報告しないとだから、隣町のアルタに向かうけど、お前はどうする?」

「え?あ、そうね。……行き場所もないし、同行してもいいかしら?」


ニコッ。

クロウは笑顔で受け入れる。


「おう、アーシアみたいな後衛がいてくれたら嬉しいばかりだ。じゃあ、もう少しよろしくな。」

「ええ、よろしくーー。」


グゥー。

アーシェのお腹辺りから、地響きのような大きい音がする。


「アーシア、腹減ってるのか?」

「そ、そんなわけーー。」


グゥー。

さらに音は耳に聞こえやすくなる。


「う、動いたら少し消化したのかもしれないわね。何か食べてからでもいいかしら?」

「ああ、てか、最初から素直に言えばいいのによ。」


ギリッ。

鋭い眼光が、クロウを突き刺す。


「オーケー、そこの飯屋で食べていこうぜ。」

「そうね、先行ってるわ。」


スタタタタッ。

小走りでアーシェは料理屋に向かう。


「あれは、女だからなのか?それとも魔族だからか?……アーシアの個性とか?全く分からねえ。」


スタッ、スタッ、スタッ。

アーシェの気持ちを読み取れないクロウも、後を追う。



カチャ、カチャ、カチャ。

ゴクンッ。

目の前のテーブルに大量の空き皿が積み重なる。


「な、なあ、アーシア。そんなに食って平気か?」

「なにが?お金はさっき稼いだし、そこは計算してるわ。」

「いや、そこは別にいいんだけど、胃袋の容量的に……。」

「何?文句でもある?」


すでにテーブルには、大皿が5つ、パンなどのお皿が7つ、飲み物が入っていた樽も1つ空いている。


「ふぅ、これで少しはもつわ。」

「少しなのか、大食いってすごいな。」

「あっ??」

「さて、会計してアルタに行こうぜ。」


スタタタタッ。

恐怖の視線を背中に感じながら、クロウは会計を済まし外に出ようとする。


「あっ、ちょっと待ちなさい!」


タタタタタッ。

アーシェも急いで後を追う。




2人は町を出て、アルタに向かう。


そこで、先ほどクロウの発した言葉についてアーシェが言及する。


「ねえ、あなたがオールドタイプってことは、血のホワイトデイの時外の国にいたの?」

「いや、俺はアテナイにいたぜ。けど、ニューマンにはならなかったんだ。」

「そんなことがあり得るの?何か理由は分かる?」

「分からねえ、可能性があるとしたら今行方不明な父親と兄貴が俺に何かしてくれたってところかな。」


スタッ、スタッ、スタッ。

2人はお互いを知りながら、アルタに向かう。


「そうなのね、あと、レイヴンズってどういう存在なの?」

「レイヴンズか、まあ、アテナイで活動してた有名な戦士のグループだ。今じゃ、俺以外生き残ってるのか知らねえけどな。」

「ねえ、レイヴンズについて教えてくれない?」

「いいぜ。」



レイヴンズとは、アテナイの町でモンスター退治や犯罪者を捕まえ、平和であるために多くの行動をしてきた団体。


彼らの信念はただ1つ。



他人の命を無闇に奪わず、未来に希望を持たせると言う意味でレイヴンズの1つの掟となった。


その中で1番力を証明したのが、アレス家。



そう、クロウの血筋である。


血のホワイトデイまでは、各町で彼らレイヴンズを知らない人はいないほど有名な団体だった。


しかし、血のホワイトデイにより当時の人族、今のオールドタイプはほぼ全滅。

ニューマンに生まれ変わり、彼らの記憶にレイヴンズのことは残っていない。



「まあ、ざっとはこんなところだ。」

「そうだったのね、じゃあ、クロウはオールドタイプ、レイヴンズの人たちを探して旅をしているの?」

「それもあるけど、見つけられる可能性はかなり低い。だったら、俺はそのために、今は旅をしてるところだ。」


クロウの旅の理由が明かされ、少しずつアーシェも理解できてきた。


そんな2人に、平和な時間というのは、あまりないようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る