第13話 協力してクエスト

「クエスト?あなた何か受けてる最中なの?」

「ああ、お前を運んだついでにお金稼ごうと思ってな、この町の畑が最近荒らされるらしいんだ。だから、夜にモンスターでも襲ってるんじゃないかと思って調べたけど、違うみたいなんだよな。」

「モンスターじゃないなら、人がやってるんじゃない?」

「やっぱそう思うよな、俺もそう思ってギルドに報告に行ったらお前と出会ったってところだ。」


グリグリグリッ。

クロウの肩の筋肉がほぐされる音がする。



「そうなのね、どんなふうに荒らされてれるの?」

「どうも意図的に一部分だけ削られてるんだよな、荒らしっていうか盗んでるってのが正しいかもしれない。」

「一部分だけ……私にも見せて、何かわかるかもしれないわ。」

「頼む。あと、アーシアは意外とマッサージ上手いんだな。」


グリッ、グリッ。

当たり前のように肩全体をアーシェはほぐしていく。


クロウの体が喜んでいるようにも感じられる。


「私は従者だからね、こういう知識や技術は心得てるわ。」

「従者……城のお付きの人か。アーシア、見た目によらず意外と家庭的なんだな。」


ギリッ。

肩の肉を摘まれ、クロウの顔が歪む。


「痛っ!」

「意外は余計よ。……クロウガルト、あなた思ったことすぐいうの直したほうがいいわよ、争いの火種になりかねないわ。」

「精進するよ。あと、クロウでいいぜ。」

「あ、わ、わかったわ、ク、クロウ。」


アーシェは戸惑いながら名前を呼ぶ。



それもそのはず、あだ名で呼ぶ友は彼女にはいないのだから。


スタッ、スタッ、スタッ。

2人は話を終え、荒らされた畑に向かう。


「ここが現場だ。ここの区画だけ、綺麗に荒らされてる。」

「確かに奇妙な削られかたね。……でも、この魔力の塵は、土魔法が使われたみたいよ。」

「すごいな、アーシアそんなことまで分かるのか。」

「ええ、私ならこれくらい、というより、魔族なら余裕よ。犯人は、この区画の土ごと盗んだみたいよ。」


クルッ、クルッ。

アーシェは辺りを見る。


すると、泥がところどころに落ちてるのが見える。


「犯人は、町の外に出てるみたいね。どうする、追ってみる?」

「そうだな、クエストは完遂したいし、アーシアは強そうだから俺も楽できそうだ。」

「あなた、初対面な私をずいぶん信頼するのね。魔族なんだから、あなたを背後から襲うかもしれないわよ。」

「だったら、さっきマッサージしてた時が俺を殺す絶好のチャンスだったろ。でも、お前は素直にマッサージをしてくれた、少なくとも敵対心はないと思ってるぜ。」


スタッ、スタッ、スタッ。

クロウは先に町の入り口に向かう。


(あの冒険者、クロウだったわね。ふざけている様にに見えるのは、敢えて本人がそう演じてるからか。……もう少し、品定めには時間がかかりそう。でも、強いのは分かる。)


タタタタタッ。

アーシェも小走りで後を追う。




2人はエデッサから出て、道沿いに土が落ちている方に歩く。


「あなた……クロウは1人で旅をしているの?」

「ん?まあ、そうだな。1人の方が自由だし、気楽だからな。」

「そう、あなたって見た目通り自由人なのね。」

「アーシアと違ってな、お前は何か重たいものを背負ってそうだ。」

「重たいもの……ね。」


スタッ、スタッ。

「こんにちは。」

「どうも。……っ!?」

道中2人が話していると、スタイル抜群の女性とすれ違う。


クロウの視線がそのスタイルに一瞬目がいったのはいうまでもない。


そして、すぐアーシェと比較したのも……。



直後、アーシアと目が合う。

(あっ、やべっ!)


「あ、心配するなアーシア!俺が言ったのは今の人とは違う意味だぞーー。」

「何も聞いてないでしょ、てか、そういう意味で言ったの!?」


サッ。

アーシェの顔が少し赤くなり、手で体を隠そうとする。


「いや、違う違う、それにアーシアはそこを心配しても意味がなさーー。」

「燃やすわよ??」


ボォッ!

アーシアの手のひらに怒りの炎が燃え盛る。

彼女の感情を移したかのように。


「あっ!犯人いるのあっちの方じゃねえかな〜。」

「あっ!ちょっと!あなたじゃ分からないでしょう!」


タタタタタッ。

2人は近くの崖の方に進む。

そして、アーシェは魔力を感じ取る。


「この近くね、だんだん魔力を感じるわ。」

「そうか、確認だけどアーシアは魔法使いでいいんだよな?」

「そうね、基本魔法しか使わないわ。クロウは、接近戦かしら?」

「ああ、俺は身につけてるこいつらしか使えない。そんじゃあ、後衛は任せるぜ!」

「ええ。……ん?使えない?」


ザザッ!

何かが動く音がする。


「聞こえたか?」

「ええ、あそこに見える洞窟に入ったみたい。」

「よし、俺らもいくぞ。」


タタタタタッ。

2人は洞窟も前まで走る。



すると、



「さすが土魔法使いのエース!こんなに金のブロンコリー持ってくるなんて、数ヶ月は働かないで済むぜ!」

「野菜はいいよな、地面に生えてくれるから盗みやすいぜ。」


6人の男達が、眩しく太陽のように光る野菜を囲んでいる。


彼らが育てたのではない、おそらくエデッサから盗んだものだ。



「さあて、後はこれを金にして町の中で潜んでればーー。」

「もしもーし、誰か入ってるか?」

「だ、誰だ!?」


スタッ、スタッ。

入り口にクロウとアーシェが立ちはだかる。



「何だお前ら、どうしてここが?」

「うーん、直感ってやつかもな。」

「話すのも面倒だわ、早く終わらせましょう。」

「男と女2人か、町からつけてきやがったな!いいぜ、こいつらもやっちまえ!」


チャキンッ!

男達は剣を取り出す。


「そんじゃあ、アーシアの力楽しみにしてるぜ!」

「私はこういうやつら嫌いなの、手加減できなかったら許しなさいね。」


2人の初めての共闘が始まろうとしていた。

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