第14話 真の敵は……

「ガキどもがなめんなよ! 火の玉ファイア!」


ボァッ!ボァッ!ボァッ!

3人が火の玉を放つ。


「おっと、忘れてた。アーシア、こいつらに話を聞くからよ!」

「はっ?……分かったわ、努力してみる。 燃やせ!火炎弾ファイアーショット!」


ボァァ!!

男達の火の玉より一回り大きい火の弾丸が魔法を打ち消す。


「いいね、予想通りの強さだ! 拳の響ケンノヒビキ四式シシキ! 雷光ライコウ!」


ガゴーンッ!

正拳突きが剣を持った男の腹をえぐる。


「げほっ!」

「こいつ、生身でやるつもりか!」


シュンッ!

シュンッ!

2人の男が剣を振るが、その場にクロウはいない。


「なっ、消えたーー。」

「俺は透明人間じゃねえ、ここにいるよ! 拳の響ケンノヒビキ三式サンシキ! 猛雷タケリイカヅチ!」


ガギーンッ!

鋭い回し蹴りが、剣ごと男を吹き飛ばす。


「こいつ、生意気なーー。」

「敵はクロウだけじゃないのよ。 止まれ!感電ボルト!」


ビリリッ!

紫色の雷が、真っ直ぐ男に向かう。


「あがががががっ!」


バタンッ。

感電した男はその場に倒れる。


この10秒ほどで、3人の男はやられた。



「何だこいつら、こんな上級冒険者この近くにはいないはずだろ!」

「俺らが上なのか、お前達が下なのか、そこが疑問だけどな。」

「うざいな、お前ら! 火の玉ファイア!」

「それはさっき通じなかったでしょ、学習しなさい。 降り注げ!滝水スプラッシュ!」


ジュワァ!

火の玉の上から大量の水が降り注ぎ、鎮火する。


「くそっ、あの魔法使いから殺せ!」

「おうっ!!」


ダダダダダッ!

2人の男がアーシェに向かい走り出す。


「おいおい、いくらアーシアが綺麗だからって、俺を無視しないでくれよ。 拳の響ケンノヒビキ初式ショシキ! イカヅチ!」


ガスッ!

男の横腹を掌底突きがクリーンヒット。



だが、1人の男はアーシェの前までたどり着く。


「ははっ!とった!」

「確かに、私は魔法をメインに使うわ、けど、格闘ができないなんて言った覚えはないわ!」


スパーンッ!

アーシェの足蹴りが、男の顎先を捉える。


「ふがっ。」


バタンッ。

これで男は後1人となってしまった。


「く、くそ、こうならヤケだ!出てこい!キラーアント!」

「キラーアント?」


クロウが疑問に思っていると。




ドダダダダッ!!

洞窟の奥から巨大な赤い蟻が走り寄る。


「モンスターを呼んだ、あいつはテイマーのようね。」

「テイマー、戦闘で使うやつは初めて見たぜ。」


テイマー……その名の通り、モンスターや動物をテイムすることで、ペットのように扱える存在。主に、馬や牛などの家畜をテイムすることで活用するが、異端ではあるがモンスターをテイムする人も存在するという。



「そら!こいつに食われちまいな!」

「キィィ!!」



キラーアント……赤い巨大な体が特徴の蟻で、見た目とは裏腹な獅子のようなスピード、岩すらも噛み砕ける強靭な顎を持つモンスター。


ドダダダダッ!!

さらに加速してクロウ達に突進してくる。



だが、1つ不思議な点がある。



目の前のモンスターのターゲットは、男に向いている。


(俺とアーシアにターゲティングしてない?まさか、こいつ!?)


ダダダダダッ!

クロウは直感を信じ走り出す。


「あ、ちょっと!」

「はっ!今更俺を倒しても意味がなーー。」


ガシッ!

ゴロロロンッ!

クロウは男を掴みながら転がり避ける。



すると、


ガゴーンッ!

男がいた場所をキラーアントがその頑丈な顎で掘り返していた。


「なっ、なんで。」

「お前!本当にあいつをテイムしてたのか!」

「あ、ああ。あいつをテイムしてから、魔法の檻で俺たちで飼ってた。」

「それはテイムでも何でもないわ!ただ、このモンスターを縛り付けてたに過ぎない!」


カタカタカタッ。

キラーアントはターゲットを座り込んだ男に絞る。


「こいつの狙いはお前だ、相当恨み買ってるみたいだぜ。」

「そ、そんな、嫌だ、死にたくねえよ!助けてくれよ!」

「何ふざけたこと言ってるの、あなた達は私たちを殺そうとしたのよ。そんな人たちを、助ける人がいると思う?」

「そ、それは……。」


アーシェの正論に反抗ができない。



そんな中、少し続いた静寂をクロウが破る。


「アーシア、こいつを倒すぞ。」

「はっ?なんで?ここにいる男達は、私たちに何ももたらさないわ。助ける意味があるの?」

「確かに、俺たちにとって助ける意味を持ち得ない存在だとは思う。……けど、こいつらが死ぬのは勝手だが、

「クロウ、何を言ってーー。」

「キシァァ!!」


キラーアントが耳をつんざく音を響かせる。


「ああ、もう!クエストの受注者はあなただから、今回は従ってあげるわ!」

「ありがとうな、必ず礼はする!」


チャキンッ。

クロウは2刀を構える。

アーシェも魔法の詠唱の体勢に入る。


「おい!そこのあんた!こいつの強さはどのくらいか分かるか?」

「た、多分、スパルタとアテナイの間にすぐ生息するって言ってたから、かなりの強さのはずだ……。」

「言ってた?……いろいろ聞きたいことはあるけど、まずはこのモンスターを倒すわよ!」

「ああ!前線は俺が支える、援護は任せるぜ!」


ダダダダダッ!

スピードに乗って、クロウはキラーアントに迫る。


「キシャァ!」

空の光ソラノヒカリ三式サンシキ! 日輪ニチリン!」


ガギーンッ!

2刀の上段斬りが、強靭な顎とぶつかり合う。


強敵との戦いが始まった。

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