第6話 付き合い方は大切に

「おらぁ!!」


ブンッ!

ガギーンッ!

男の剣が地面を斬りつける。


クロウの速さについてこれないようだ。



「くそ!ちょこまかと!」

「俺が速いのか?いいや、お前が遅いんだな。 拳の響ケンノヒビキ初式ショシキ! イカヅチ!」


ガゴーンッ!

目の前の男にも、見事な掌底突きがはいる。


「げほっ!化け物かよ、こいつ。」

「化け物じゃねえよ、さっき言っただろ、俺はただのオールドタイプだってよ。」

「なめやがって!」


ヒューンッ!

ボッ!ボッ!

火の玉が連続でクロウに向かってくる。


「魔法を連続で使える、あんた、少しは強いんじゃねえか。」


ススッ!

しかし、その火の玉はクロウにはなんの意味もない。


「くそっ!オールドタイプが生意気な!」

「お前は、オールドタイプがどんなやつか知ってんのか?」

「あぁ!?そんなの簡単だ、アトランティスを傷つける最悪の種族だろうが!」

「お前も同じ考えか、たくよ、俺以外のオールドタイプはどこかにいないんかな。」


シュッ!シュッ!

クロウは自慢の足で左右に跳び、男を翻弄する。


「俺たちはニューマンだ!異端の種族が、人間様に楯突いてんじゃねえよ!」

「異端、か、それはどっちのことなんだかな。 拳の響ケンノヒビキ初式ショシキ! イカヅチ! 」


ガゴーンッ!

3人目の男にも掌底突きがクリーンヒット。


「くそっ、こんなはずじゃ。」

ほらっ、早く失せろ。俺は人を殺す趣味はねえ、俺の気が変わらないうちにどっかに行け。」


ギリッ。

クロウの顔がカラスのように尖った目になる。



「くそっ、てめえのこと忘れねえぞ!」


ダダダダダッ!

男3人はお腹を庇いながら町の方へ逃げる。



「はぁ、結局情報はなしか。早くサーベルウルフを倒して帰るかな。」

「あ、あの。」

「んっ?」


女性がクロウに声をかける。

その声は少し震えていた。


「あなたは、本当にオールドタイプなんですか?」

「……あぁ、そうだ。俺は魔法が使えない種族、オールドタイプだ。」

「そんな、教わってきたことと全く違う。」

「まあ、俺が例外なだけかもしれないぜ。俺だけで判断しない方がいい。」


スタッ、スタッ、スタッ。

クロウは親子の元から離れる。


「あ、あの!助けてくださり、ありがとうございます!何かお礼を!」

「やめといた方がいい、オールドタイプと関わると碌なことがない、その気持ちだけ受け取っておくよ。」

「で、ですが。」


女性の言葉を気に留めず、クロウは森の方へ向かい歩く。


「お、お兄ちゃん!」

「んっ?」


スサッ。

クロウは声の方へ振り返る。


「ありがとう!」

「……ふっ。」


ニコッ。

クロウは優しく微笑みかけ、姿を消していった。





数分歩いたところで、クロウはクエストの目的のサーベルウルフを探していた。



「いつもこの近くにいるよな?なんでこういう時に限っていないんだ?」


キョロッ、キョロッ。

辺りを見渡しても、モンスターが1体もいない。


「足音も、匂いもしねえ。なんだ?サーベルウルフって絶滅危惧種だったのか?」


スタッ、スタッ、スタッ。

少し歩くと、




バゴーンッ!バゴーンッ!

森の奥から大きな爆発音が聞こえる。



「なんだ!?……これは、燃えた匂い?火を使えるモンスターなんてこの近くにはいないはーー。」


ドダダダダッ!!

森の中からモンスターの大群が慌てた形相で飛び出してくる。


数は10体。


「おいおい、サーベルウルフ5体に、ドスフロッグ5体って、そんなおまけいらねえっての!」

「ガゥゥ!」


サーベルウルフが大きな牙をのぞかせ迫ってくる。


「ガァ!」

空の光ソラノヒカリ初式ショシキ! 半月ハンゲツ!」


チャキンッ!チャキンッ!

ズシャン!

2本の刀を構え、横回転斬りでサーベルウルフを斬り裂く。


「ガゥゥ!!」


シュンッ!

もう1体のサーベルウルフが高く跳び、爪で引っ掻こうとする。


「こんな数、俺じゃなきゃ死んじまうっての! 空の光ソラノヒカリ二式ニシキ! 満月マンゲツ!」


グルンッ!

ジャギーンッ!

2本の刀で縦回転斬りをくり出す。


「ふぅ、まずは2体。」


ドダダダダッ!!

目の前からドスフロッグが突進してくる。



ドスフロッグ……体長は1メートルほどある巨体のカエルで、見た目にそぐわぬ跳躍力と突進するスピードが速いのが特徴。



「ちっ!」


ガギーンッ!

真正面から突進を受け止め、何とか耐える。


「お前の素材持っていったら、リィンに怒られるってのによ!」


スッ!

手から刀を離し、後方に跳び距離を取る。




そして、


雨の音アメノオト初式ショシキ! 時雨シグレ!」


スッ!

ジャギンッ!

折りたたみ式の剣で、居合斬りを直撃。



これで、サーベルウルフ3体、ドスフロッグが4体にまで減らした。



「こんな数のモンスターが、しかも違う種類の奴らがこんなに共闘するか?……まさかこいつら、何かに棲家を追われたのか?」

「グルルルルッ!」

「ゲゴッ!」


サーベルウルフの顔が険しくなり、ドスフロッグは舌を出し入れして、殺気だっている姿が目に映る。


「人1人を襲う殺気じゃねえよな、この森で何が起きてんだ?って言っても、モンスターと話す力なんてねえし、やるしかねえか。」

「ゲゴッ!」


シュッ!

ドスフロッグが宙を舞い、クロウを潰さんと落ちてくる。


「今日もついてないな、やってやるよ!」


突如として、モンスターの大群とクロウの戦いが始まってしまった。

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