第5話 初めての戦闘

タタタタタッ。

クロウは風を切り目的地に向け突き進む。


(確か、出て行ったのは男3人だったよな。足跡が残ってはいるけど、これを追うのは厳しいか。)


スンッ、スンッ。

クロウは鼻をつかい男達の匂いを感じ取ろうとする。


(けど、人が通った匂いは残ってる。こっちで合ってるな、あとは足音でも聞こえればーー。)


五感を巧みに使い、ターゲットの位置を割り出そうとする。



すると、


「誰かっ!助けてください!」

「っ!?そこか!」


タタタタタッ。

遠くからの悲鳴を拾い上げる。



クロウはもちろんただの人間だ。


だが、自分の父フェルナンドから受け継いだ生き延びる術をこれまで常に体に覚えさせ、鍛錬を積み上げた結果、五感がとても鋭くなっていた。


そして、戦闘技術もとても高くなり、そこら辺のモンスターには引けを取らない。




「いたっ!」

クロウの目にひたすらに逃げる親子の姿が映る。


その親子を囲むように、3人の男達が襲ってるように見える。



「わ、私たちはオールドタイプではありません!皆さんと同じニューマンです!」

「じゃあ、どうやって証明する?」

「それは、こ、これです! 光って!光の玉ライト!」


ピカーンッ!

女性の手のひらに明るい光の玉が生まれる。


辺りを明るくする、初級の光魔法だ。



「ほ、ほら!魔法を使えるのはニューマンだけです、だから、私たちはオールドタイプではありませーー。」

「はあ、まあ、正直言うとそんなのどっちでもいいんだよな、俺たちにとっちゃ。」

「え??」


女性は目をまんまるにして驚く。

彼らの言葉の意味を理解できない。


「俺たちは、お前が何者なのかはどっちでもいいんだ。丁度よ、俺たちはが欲しかったんだ!」



奴隷……アテナイの国王ラストが数年前から採用した奴隷制度。人が人を従わせ、最低限の生活を保障することを条件に勧められた。……奴隷に何をさせるか、何をするかは、生きていればなんでもありな制度。



「そ、そんな、なんで私たちが。」

「そんなの、なんとなくだよ!お前達はオールドタイプってことに今はなってる。だからよ、ここでいなくなっても、困る奴は誰もいないんだ。オールドタイプは、俺たち全員の敵だからな!」

「そ、そんなーー。」


ガシッ!

女性が男に手を掴まれる。

そのまま引きずろうとする。


「いや、いやだ!離して!」

「いいじゃねえか、最低限の生活は保障してやるからよ、俺に従っておけよ!じゃないと、オールドタイプとして殺されちゃうぜ?」

「お母さん!」

「ガキは邪魔だ!どいてろ!」


ドスッ。

もう1人の男は子供を押し倒す。


「うわっ!」

「ああ!やめて!誰か、誰か助けて!」

「そう騒ぐな、この辺りのモンスターにバレたら面倒臭いだろうが!」


ザザザッ!

男は女性を引きずる。



しかし、その男に突如違和感が。




トンッ、トンッ。

女性の手を引く男の肩が何者かに軽く叩かれる。


「ん?誰だ?てめえ。」

「悪い、ちょっと聞いていいか、通りすがりの冒険者なんだが。」

「んあ?ちょっと今取り込んでてな、後にしてくれないかーー。」


ガゴーンッ!

声をかけた男の拳が、連れ去ろうとする男の顔を打ち抜く。


殴られた男の顔が歪み、



「うがぁぁ!!」


ザザーッ!

地面を削りながら、吹き飛ばされる。



「てめえ!何しやがる!」

「それはこっちのセリフだ、クソ野郎ども。」

「何か勘違いしてんじゃねえのか?こいつがオールドタイプだから連れて行こうとしただけだ!」

「オールドタイプ?それって、俺のことじゃねえのか?」


殴った青年は、クロウであった。



「はっ?何言ってんだてめえは?」

「そら、見とけよ、これが証明だ。ファイア、フリーズ、サンダー、ウォータ、ウィンド、ロック、ライト、ダーク。」



クロウは全ての初級の魔法を発する。



本来は、どれか1つの魔法は発動するのが今の人族。




しかし、クロウは何も発動できなかった。


「ま、まさか、こいつ本当に!」

「オールドタイプ!?」


クロウに対する冒険者の目が変わる。



「くそっ、けど当たりだ!奴隷だけじゃなくこいつも手渡せば賞金も手に入るぜ!」

「そうだ、1つ忘れてるぜ。今のアテナイに奴隷制度は確かにある、けどよ、それが奴隷制度だ。

「たかが1人でなめやがって、魔法を使えないオールドタイプが、俺たち優秀なニューマンに勝てると思うなよ!」


ヒューンッ!!

2人の男の手のひらに炎が集まる。


「くらえ! 火の玉ファイア!」


ボッ!ボッ!

火の玉がクロウに向け飛び交う。

大きさはそれほどでもないが、スピードは目で追うのがやっと。


シュンッ!

クロウは2人の攻撃を頭容易く避け、1人の男の目の前にまで迫る。


「こいつっーー。」

拳の響ケンノヒビキ初式ショシキ! イカヅチ!」


ガゴーンッ!

雷のように鋭い掌底突きが、男の腹にめり込む。


「ぐへぁ!」


バタンッ!

痛みに耐えられず、口から涎を垂らしながら男はその場に倒れ込む。


「てめえ、なにしやがった!」

「心配すんな、死んでねえよ。ただの物理だ、……まあ、お前達がやったことを後悔することにはなるだろうけどな!」

「くそが!おい!こいつをぶっ殺せ!」

「へっ、こいよ!オールドタイプってのは、案外強いんだぜ!」


冒険者3人とクロウの戦いが始まった。

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