第4話 町に流れ込んだのは真実か嘘か

チュンッ、チュンッ。

外で小鳥が囀り、眩しい太陽が快晴を告げる。


日差しは、1人の男の顔に差し込む。


「うんっ、朝か。」

青年は目を細め、白い天井を目に映す。


バサッ。

クロウはベッドから起き上がり、身支度をしていく。


顔を洗い、歯を磨き、髪を整え、朝食を作っていく。

スムーズな準備だ。



卵を2つ割り、そこに緑の野菜と赤い野菜を入れ、早い手捌きでオムレツを作っていく。


テーブルの上には、丸いパンが二つとコップ1杯のミルク。


健康的な食事を準備していた。


パンッ。

「いただきます。」


サラッ。

オムレツにナイフを入れると、中からトロトロの卵が流れ、甘い匂いを漂わせる。

そして、野菜たっぷりのオムレツを食べ進める。


パンは適度に柔らかく、ミルクで喉を潤す。


日差しが窓から差し込み、部屋を明るく照らす。

今日も世界は平和なようだ。


「ふぅ、ごちそうさま。」


スタッ。

カチャッ、カチャッ。

皿を片付け、服を着替え、武器を携え、忘れずに形見として嵌めている指輪を確認する。


ガサッ。

家を出る前に、テーブルの上にあった小さな袋を手に持つ。


「よしっ、行くか。」


キィーッ。

外に出ると、太陽が迎えてくれる。

起きたばかりはキツく感じたが、やはり心地よい日差しである。



「さてと、そろそろ金も無くなってきたし、クエストでも受けるか。リィンに怒られないくらいにしないとな。」


スタッ、スタッ、スタッ。

クロウはアルタの町の真ん中にある、ギルドへ向け歩く。


「早く早く!」

「待ってよ〜。」


タタタタタッ。

子供達が楽しそうに遊んでいる。


賑やかな町を見ているとこちらも元気になれそうだ。



ただ、クロウの頭には疑問が常に残っている。


(あの子供達も、魔法を使えるんだよな。マジで分かんねえけど、血のホワイトデイで何が起きたってんだ。)


クロウは巷で言う、オールドタイプ。



彼がニューマンにならなかった理由はまだ分かっていない。




スタッ、スタッ、スタッ。

だんだんとギルドが見えてきた。



すると、


ドスッ、ドスッ、ドスッ、ドスッ。

ギルドの中から数人の戦士が走って町の外へ向かう。

歯をのぞかせ、何かを狙う獣のように。


「なんだ?外で何かあったのか?」


クロウは気にしつつも、ギルドに入る。



キィーッ。

中には、数十名の冒険者が屯していた。



「あっ、クロウさん!」

「よぉ、リィン、今回は少し日が経ちすぎたな。」

「確かに前回のクエストからいつもより日が空いてますね、忙しかったんですか?」

「うーん、まあ、少しな。あとこれ、昨日作ってみたんだ、リィンにやるよ。」


スサッ。

クロウが手に持っていた袋を渡す。


「なんですかこれ?」

「近くの町で教わった、クッキーってお菓子だ。木の実とか果物とか入れて焼いた、焼き菓子ってやつでーー。」

「わぁ!!美味しそう!クロウさんが焼いたんですか!?」

「話くらい聞けよ、まあそうだ。あと、リィンの分しかないから休憩の時まで隠しとけよ。」


ササッ。

目にも留まらぬ速さで懐にお菓子をしまう。

彼女の顔は、喜びで目が輝いている。


「ありがとうございます!それで、今日もクエストでいいですか?」

「ああ、少し金も無くなってきてな、いい感じのクエストを発注してくれ。」

「そうですね、クロウさんには討伐系がいいでしょうし……これとか、これとか、これですかね?」


スサッ。

3枚のクエスト用紙が置かれる。



「うーん、どれもシンプルだな。なんなら、これを全部まとめて受けるってのはーー。」

「ぜーんーぶー??」


キリッ。

鋭いだけでなく、強い圧力をクロウは感じとる。


「ってのは冗談で、このサーベルウルフ5体の討伐にするぜ!」

「はぁ、良かったです。次無茶なクエスト達成の仕方をしたら、ある意味出禁にするところでした。」

「危ねぇ。」

「では、クロウさんにこのクエストを依頼しますね。」


ポンッ。

ハンコが押され、クエストを受注する。


サーベルウルフ……灰色の毛並みで、大きな牙が2本尖っており、口に収まりきっていないのが特徴。



「アルタに続く町近くの森だよな?このサーベルウルフが生息してるのは?」

「そうですね、最近モンスター自体が増えてきてるので気をつけてくださいね。……まあ、あたしはクロウさんが無理しないかの方が心配ですが。」

「今回は問題なく帰ってくるよ。じゃあ、行ってくる!」

「クロウさんに、アテナイのご加護があらんことを。」


スタッ、スタッ、スタッ。

クロウはギルドを出て、町の門へ向かう。




すると、ここ10年間鍛え続けていたクロウの五感に聞こえてくるものがあった。




「ねえねえ聞いた?近くにオールドタイプがいたんですって!」

「本当なの!?オールドタイプなんて、この世界の1番危険な存在じゃない!だから、さっき冒険者達が外に走って行ったのかしら?」


(外にオールドタイプ?こんな辺鄙な町の外に限って、そんなことあり得るのか?)



クロウは疑問に感じつつも、足早に外へ向かう。




「まあ、数少ない貴重な情報かも知れねえ。行ってみるか。」


シュンッ!

タタタタタッ!

クロウは狼のように静かかつ、高速で走っていく。




この世界でオールドタイプはもはや、稀有な存在。



その情報は、真実か嘘なのか。


クロウの1日はここから始まる。

そして、彼が見たものとは……。

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