分裂
一通り、ネットに挙がっていた文鳥との遊び方を実行した道香は、意気揚々と九劉の自宅兼研究所を訪れて、肩に乗った文鳥姿のままのクロウを引き渡したら、冷めきった目で言われたのだ。
会社のパソコンに命を落としたとしても、即刻ウイルスとして退治されて、終了だ。
「まあ、それも私の人生だったってことだ」
「あんた、ほんと。あ~。わかったよ。わかりました」
ガシガシガシガシ。
九劉は片目を隠すように長い前髪をかきあげては、後頭部の髪の毛と一緒にかき回すと、道香を睨んだ。
「あんたが文鳥姿になったクロウを慌てふためいてわしのところに連れて来た時は、あんたもこっちで生きていけるって思ったんだが。違ったみたいだな」
「ああ。そうだな」
「クロウは文鳥姿のままだ。それでもいいんだな」
「………それは、私のせいなら、申し訳ないと思うが。私にはもう、どうすることもできない」
「仕事には命を落とせるのに、クロウには命を落とせないんだな」
「ああ」
「即答かよ。少しは悩めよな。クロウには世話になっただろう?」
「ああ。だから、私の肉体を渡そうと思ったが、今のクロウには断られた」
「今も昔も未来も、クロウは断るわバカタレ」
「そうなのか。なら、私に返せるものはないな」
「なくねーわ。ったく。あ~あ。すまないな。クロウ。力になれなかったわ」
「は?」
文鳥姿のクロウを肩に乗せた九劉が向けた視線の先にいたのは、人型AIロボットのクロウだった。
「分裂?」
(2023.12.22)
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