義理




 よしさっさとチヤホヤして、会社のパソコンに命を落とそう。

 礼をしたかっただなんて結構自分は義理堅かったのだなと、新たな一面に新鮮な気持ちを抱きつつ即決した道香は、居間の食卓から床へ飛び降りては床から食卓へ飛び乗るを繰り返していたクロウに、どうチヤホヤしてほしいんだと直接尋ねれば、一緒に遊んでくださいと言われた。


「遊ぶって、何をして遊びたいんだ?」

「私はペット型AIロボットです。あなたが望む遊びをしたいです」

「私はおまえが望む遊びをしたい」

「私が望む遊び………思いつきません」

「ふむ」


 一緒に遊びたいと甘えはしても、こうしたいですという答えは学習していないのか。


(AIだから学習していてもおかしくはないんだが。世話をする人間の答えを待つと固定されているのか。だが、家事型の時は積極的に自立行動を取っていたはずだが)


 提案に対し自分は好きにしろと言って、その通りに、クロウは好きにしていた。


(いやそもそも、好きにさせていた、と、チヤホヤしていた、は同義語ではないのか?)


 クロウをチヤホヤしろチヤホヤしろと、九劉はうるさく言っていたが、自分はチヤホヤしていたのではないか。


(………わからん。チヤホヤって何だ?)


 わからないが、わからないことに思考と時間を費やすのは、仕事の専売特許である。

 道香はスマホをパンツの前ポケットから取り出して検索、文鳥との遊び方を見つけると、とりあえずぜんぶやってみるぞと、クロウに言ったのであった。











(2023.12.21)



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