一考




 自前の、いや、会社のパソコンに命を落とした場合、クロウとはもう、交わることはないのだろう。

 いや。

 世話になったのだから、自分の肉体をクロウに渡せばいいのではないか。

 自分は会社のパソコンの中で生きて、クロウは自分の肉体の中で生きる。

 一考に、心が躍る。

 思い立ったが吉日だ。

 クロウを肩に乗せて、九劉の元へと駆け走った。


「クロウヲチヤホヤシテクダサイ。ソレマデハサヨウナラ」


 珍しく、いや、出会ってから初めて高揚した道香を前に、けれど九劉が心を動かされることはなく、冷たく追い払ったのであった。


「しょうがない。自分でするか」


 自宅に戻って来た道香は、まずは情報収集だとパソコンの前に向かい合ったのであった。

 心は踊りっぱなしだった。











(2023.12.21)



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