味気
ペット型AIロボットだと認識しているクロウは家事を一切せず、自宅の中を自由気ままにあちらこちらと飛んでは、跳ねては、留まっては、時折遊びましょうと道香を誘ってくる。
この遊びに付き合うことが、チヤホヤするということなのだろうか。
休日のことだった。
家に持ち帰った仕事を終えて、自室で椅子に座りぼーっとしていると、クロウが遊びましょうと言ってきたが、道香がおまえだけで遊べと返せば、道香を一周するとそのまま居間へと飛び去ってしまった。
あれで当分は話しかけてこないはず。
クロウが家事をしなくなったこの環境にはもう適応できた。
いや、以前の環境を思い出しては馴染んだと言うべきか。
彩も音もなくなった自宅に、けれど、味気ないと思わなくなってきた。
修理をしろと、九劉の元へ駆け寄ったのは、あの一度きり。
もう必要ない。
必要なくなった。
もともと、必要なかったのだ。
「っふ。あんなに慌てる必要などなかったのにな」
クロウの文鳥姿を初めて見た時の己の浅薄な言動を嘲笑してのち、まとめ買いしていた冷凍弁当を食べようと立ち上がった。
冷凍弁当は六か月も保存できるらしいので、冷凍庫に入る分だけ買っておいた。
米は非常食用にもなる、ご飯パック。
これで食器を出し入れすることも洗い物をせずに済む。
食事に関しては、手間がなくなったわけだ。
洗濯はコインランドリーで乾燥まで済ませばよし。
部屋の掃除は、掃除機をかけておしまい。
浴槽もシャワーだけなので、風呂上りに水で流しておしまい。
クロウがいなくても、大丈夫だったのだ。
(2023.12.21)
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