参之幕間「緋色モーニングルーティン」

 緋色麦の朝は早い。

朝五時から動き始める。

肌に合った洗顔剤で顔を洗い丁寧に時間を掛けて歯を磨く。

髪は癖っ毛で朝起きた時は熱で踊る鰹節の如き様相。

清潔性を保つ為、丁寧に水と櫛で髪を整えていく。

身嗜みとは他人に見せる為のモノではない。

自らの意識をより高める為のモノなのだ。

 麦は満足気に綺麗に整った髪を見て微笑む。

 部屋の中は綺麗に整頓されており全ての物を決まった場所に仕舞う。

こうする事でいつ何が必要になっても探す事なくすぐに出す事ができる。実に合理的だ。

壁際には映画のBlu-rayディスクや本がズラリと並び、右端にあるのが買ったばかりのこれから楽しむ予定のものだ。

しかし部屋で最も目を見張るのは大きなクローゼット。

中にはお気に入りの洋服がズラリと並ぶ。

雑誌やネットで常に新しい物をサーチしている為常に新しい服が増えていく。

しかし整頓の為増え過ぎない程度に捨てるのも大切だ。

新しい物を探すのは好きだが流行り物を追っている訳では無い。

ただとにかく服が好きなのだ。

一つ雰囲気を変えるだけでまるで違う自分に成れる。

実に素晴らしいものではないか。

 毎日の日課で麦はクローゼットの中身を見てムフンと満足気に微笑んだ。

 時刻はまだ六時前。麦は机に向かってネットで定期購読している雑誌で新しい洋服を探し始める。

この時間が実に至福だ。この為にわざわざ早く起きて準備を済ませているのだから。

 麦は気になる服に付箋を付けてスマホの画面を落とす。

そしてゆっくりと扉を開け閉めして朝食を食べる為に食堂へと足を運んだ。

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