弐之幕間「渦巻モーニングルーティン」

 特亜課に所属する隊員は全員に必ず一部屋ずつ寮の部屋が用意される。

その部屋を使うか使わないかはそれぞれの意思に尊重され人によってはただの寝床、または倉庫の様になっている者もいる。

当然英雄や麦にも部屋が用意されていて、二人共寮を拠点にしていた。





 大きな欠伸と共にカーテンを開ける。

見た所中々の快晴具合で今日は朝から気分はさほど悪くない。

昔ならこういう日は良いランニング日和くらいにしか考えていなかった。

しかしボクシングを辞めてからは何となくその陽射しを浴びる事が良い事の様に感じる様になったのだ。

 英雄の部屋は実にシンプルだ。

物欲がない為あまり物は置かず、基本的な生活用品が主なインテリアとなっている。

特に誰かを呼ぶ気はないが妹が整頓好きだった影響からか部屋は中々綺麗な状態を保っていた。

幾つか棚に映画のDVDや音楽のCDが並べて置かれているが英雄の物ではなく麗蘭が半ば強引に貸してきた物だ。

お気に入りだと本人はけして言う事はないが“ロッキー”と“クリード”の映画は何度か視聴しているくらいには気に入っている。

音楽の趣味は完全に麗蘭の影響を受け“スピッツ”のみを聴くだけだ。

そんな面白味の無い部屋だが唯一と呼べる英雄の私物がある。

それはサイフォンなどの珈琲を淹れる為の器具だ。

英雄はボクシング以外に珈琲を嗜む。

それも本格的に自ら豆を挽き火を立てて珈琲を淹れる。

麗蘭が余程気に入っている様で定期的に飲みに来たりするレベルには自信がある。

年頃の男子とは思えない実にシンプルで味気無い部屋だが当の英雄は気に入っていて特に変える気もないのだ。

 英雄は朝の身支度を終えると朝食を取る為に廊下へと出ていった。

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