異世界バーテンダー 魔王ちゃん

Li'l Hatter

ラファドラソド〜ド ソラソドファ〜♪

ここは欲望の渦巻く異世界の歓楽街、『南狼町』。その街にある一風変わった酒場、『異世界BAR』へ向かうサラリーマン上司の『ゴブリン』と、その部下の『スライム』がいました。


「ついたぞ。ここが俺の行きつけの異世界BARだ」

「うわぁ、なんか雰囲気のある店っすね!」

「だろう? さあ、中に入るぞ」


──ラファドラソド〜ド ソラソドファ〜♪


ドアを開けると来客を知らせるフ○ミリーマートの入店音が鳴る。店内は薄暗く、カウンター席の他にテーブル席は6席もありました。


「いらっしゃいませー、カウンター席へどうぞー(棒読み)」


カウンターの奥からゆ○くりボイスのような声が聞こえてきます。そこにはバーテンダーの『魔王ちゃん(外見は15歳の女の子)』がいました。


「よぉ! 相変わらず棒読みみたいな話しかたするな〜、魔王ちゃん(笑)」

「おお、これはゴブリンパイセンじゃないですかー、いつもごひいきにしてもらって感謝しておりやすぜぇー(棒読み)」

「いいってことよ! じゃあ今日もいつものやつで頼むわ!」

「へい、毎度ありぃー(棒読み)」


バーテンダーの魔王ちゃんは慣れた手つきでシェイカーを振るいカクテルを作り始めました。


──カシャカシャン…………カシャカシャン…………


シェーカーを振る音が店内に響き渡ります。そして数秒後―――――――――


「へい、おまちどーさま(棒読み)」


目の前には透き通るような綺麗な青色をしたカクテルが置かれていました。


「うわ〜、きれいな色をしてるっすね!」

「ああ、この『シャーク・ワイバーン』というカクテルは『翼鮫の汗よくさめのあせ』から作られているんだ」

「へぇ〜そうなんっすか……って汗っ!?」

「そうだ、だからこんなにも美しい青色をしているんだよ」


ゴブリン上司は満面の笑みで語ります。


「ええ……そんなもの飲んじゃっても大丈夫なんすか?」

「おきゃくさん、そんなに心配しなくてもいいよー。翼鮫の汗には『疲労回復効果』があるんだぜぇー(棒読み)」


バーテンダーの魔王ちゃんはグラスを傾けながらニコリと微笑みました。


──ゴクリッ……


ごくりと固唾を飲み、恐る恐る口をつけるスライム。すると次の瞬間、体が熱くなり不思議な高揚感に包まれていきました。

まるで自分の体の中に眠る獅子を呼び覚まされるような感覚です。


「ふぅ……」


一息つくと体の疲れが取れていくように感じられました。


「どうだ? 理性がぶっ飛ぶほど美味しいだろ?」

「はい! とても飲みやすくて美味しいっす!」

「そうかそうか、それはよかった!」

「そ、それになんだか力がみなぎってくるみたいっす……うおおーっ!」

「おいおい、調子に乗って店の壁壊すなよ〜」

「お二人さん、これはサービスだよぉー(棒読み)」


バーテンダーの魔王ちゃんはカウンターの下から『キュウリ巻き』を2カン取り出しました。


「えっ!? これお寿司ですよね!? BARなのにどうして!?」

「実は魔王ちゃんは、前職で『寿司職人』をやっていてな、こうやって時々自分で握った寿司をお客さんに提供しているんだよ」

「へぇ〜、なんか意外っすね! よーし、それじゃ遠慮なくいただきまっす!!」


──パクッ モグモグ……


スライムはキュウリ巻きを頬張りました。


「う、うまい!! シャキシャキとした歯応えに程よい塩味が絶妙にマッチしてるっす!」

「だろ? でもな、魔王ちゃんの一番凄いところはそこじゃないんだぜ?」

「えっ、まだなんかあるんすか?」

「ああ! よく見てみろよ、魔王ちゃんの手の指先を」

「指先……?」


スライムはカウンター越しからバーテンダーの魔王ちゃんの手に目を向けました。


🫳🏻✨


「あっ! 指先が光ってる! まさかこれは

魔法の指先マジック・フィンガートリップ』っすか!?」

「その通り! 彼女は『魔法の力を使って寿司を握っている』のさ」

「なるほど! それであんなに美味しい仕上がりになるんすね! やるじゃないすか!」

「いやいや、それほどでもないよぉー(棒読み)」


バーテンダーの魔王ちゃんは謙遜しながら照れ笑いを浮かべています。


「しかし、そんな素晴らしい技を持っているのに、何故BARに転職したんすか?」

「いやぁー実はね、以前勤めてた寿司屋は『勇者』と名乗る寿司テロ野郎に物理的に破壊されちゃってさ……(棒読み)」

「あちゃ〜、それはお気の毒に……」

「それで仕方なく次の転職先を探していたら偶然この店を見つけてさー(棒読み)」

「ほうほう」

「で、面接を受けてみた結果、チーフバーテンダーのサキュバスさんが『君、ちょ〜面白い声してるね〜☆』とか言って即採用してくれたのー(棒読み)」

「おおー! それは運がいいっすね!」

「そうなんだよー。そのおかげで今はとても充実した毎日をエンジョイしているよー(棒読み)」


バーテンダーの魔王ちゃんは笑顔で語っています……棒読みで。


「うぅ……無事第二の人生を歩んで良かったっすね……(涙)あっ、翼鮫の汗お代わりお願いします!」

「あ、じゃあ俺も俺も!」

「まいどありぃー」


こうしてゴブリン上司と部下のスライムは、バーテンダーの魔王ちゃんが作る絶品カクテルを飲みながら楽しい夜を過ごしたのでした。


おしまい。

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