第31話 トレバー・バウアー大炎上の件、つづき。

トレバー・バウアーのSNSでの大炎上から、俺はモヤモヤした感覚に脳が支配されている。頭が悪くて言語化できないのがもどかしい。とりあえず音楽聴いてタバコ吸ってオレンジジュース飲んで、酒が入ってないシラフのモードで、このモヤモヤの言語化を試みる事にする。


俺は前回、バウアー大炎上の件について書いたが、俺もバウアーと同じように悪気なく他人を傷付けてしまうASDの典型的なタイプで、今まで多くの人から嫌われてきた。不要な発言や他者の気持ちを軽んじる発言など、自爆する形でいつも居場所を失い孤立してきた。おれは、他人の気持ちがわからないのだと思う。


ASDの当事者である俺から見て、バウアーも俺と同じくASDなのではないかと思う。俺には差別的な意図は全くない。ただ単に俺から見て、バウアーの性格というか特性が俺にかなり似ていると感じただけだ。


バウアーはおそらく、悪気があって他人から嫌われてしまう言動を取ってきたわけではない。彼は究極的に不器用なだけなのだと思う。社会でうまくやっていけないタイプだ。


バウアーは野球選手としては超一流だが、その発言や言動から、アメリカでは“変わり者”や“嫌われ者”として居場所を完全に無くして、今日本でも同じように居場所を無くそうとしている。


でも彼は、決して悪気があって他人を傷付けてしまうわけではないと思う。何か決定的な根拠があるわけではない。でも俺も悪気なく他人を傷付けることが多い当事者、また不器用な奴、また変わり者として、バウアーをとても不憫に思うというか同情的に思っている。


バウアーは去年、日本のプロ野球の横浜DeNAベイスターズで大活躍し、ユーチューブ活動も活発にしていて、野球に対して真摯で熱く、人柄やファンサービスも最高で、大人気の選手だった。俺もバウアーの大ファンで、とても応援していた。


それが、たった一つのSNSの投稿で、日本のファンは手のひら返し。一夜にしてめちゃくちゃ嫌われ者になってしまった。


たしかに、日本人2人を車で殺害したアメリカ兵の釈放を祝福する言葉をSNSで発信した事は、かなり問題だ。


でも俺はバウアーを嫌いになりきれない。


バウアーは去年「アメリカ人として日本人側の視点から戦争を学びたい」と言って、広島の原爆ドームに行ったり、また、福島県の被災地にも足を運んだりした。そのバウアーの気持ちが嘘だったとは、俺は思えないのだ。


ユーチューブやSNSや掲示板のコメント欄には、バウアーへの怒りや失望や悲しみの書き込みがめちゃくちゃ多く寄せられている。めちゃくちゃ叩かれている。


「2度と日本の土を踏むな」とか「絶対に許さない」とか「こんな最低な人間を応援してた自分が恥ずかしい」とか。


野球ファンがみんなバウアーを大好きだったからこそ、批判の声はかなり大きくて、まさに大炎上している。


人間、積み重ねた信用が崩れる時は一瞬だ。



それでも俺はやっぱり、バウアーのことを嫌いになれない。なんだか、バウアーへの苛烈な批判を見ていると、俺が批判されてるような気持ちになってくる。俺の「モヤモヤ」の正体は、この気持ちだったのか。


たしかに俺も多くの野球ファンと同様バウアーの発言にはかなりショックを受けたけれども、それでも彼を嫌いにはなりきれない。


ユーチューブの動画内でバウアー本人が「学生時代は孤立していた」と悲しそうに言っていた。俺も高校時代からは嫌われて孤立していた。


俺は、バウアーには悪気は無いと思う。


他人の気持ちを考える想像力や、客観性に欠けているだけだと思う。つまり究極的に不器用なだけで、悪人ではない。


もう、日本の野球ファンでバウアーを応援する人はほとんどいなくなったと思う。


でも俺は、密かにバウアーの今後を応援したい。


だから最後はこう締めくくる。


「頑張れ、バウアー」





次回に続く

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彼女いらなすぎて逆に彼女めっちゃ欲しい【連載】 Unknown @unknown_saigo

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