第26話 萩原慎一郎の歌集「滑走路」を読んだ感想 〜俺も人生初の短歌を詠んでみた!〜

カクヨムで俺と親交のある詩歩子さんという人の紹介、もとい影響で、俺は萩原慎一郎さんの歌集“滑走路”をAmazonで購入した。そして今さっき読了した。俺は今、感動して泣いている。彼が青春時代から亡くなるまでずっと抱えてきた痛みが、俺には全く他人事に思えなかったからだ。


滑走路を読み終わった後、彼が中学から高校時代にかけて野球部の中で激しいいじめを受けていたこと、そしてそれがきっかけで精神的に不調になり、通院と自宅療養をしていたことを知った。そして彼が非正規雇用で働いていた様子は“滑走路”の中でも頻繁に出てくる。お昼に牛丼を食べに行く様子が頻繁に出る。そして、孤独も感じる。


彼は32歳の時、滑走路の出版を前に自死している。だが、滑走路の中の言葉たちはどれもが生きていると感じた。「彼はまだ生きている」と滑走路を読んで思った。


そういえば俺も、野球部の中でいじめにあっていた。大切なグローブを壊されたり、「死ね」と言われたり、鞄をゴミ箱に捨てられたりした。俺は普段、エッセイの中で自分のいじめ体験はほとんど書かない。中学時代や高校時代を思い出して苦しくなるからだ。


また、俺は、高校で野球部だった頃にいじめられてた奴を助けた事もある。今はもうそいつとは疎遠で、連絡は取り合わない。そいつのLINEも俺の方から消してしまった。


滑走路の作中では、【群衆】と【プラトンの書】と【僕たちのソファー】と【滑走路】と【箱詰めの社会】と【テロリズム】と【平凡を嘆きたる夜に】と【非正規】と【ソプラノ】と【言葉と言葉】と【光る蛇】と【あこがれのひと】と【理解者】と【自転車の空気】と【だだだだ、だだだ】と【カレーうどん】と【食べる】と【こころの扉】と【歌詠む理由】と【模索の果て】が特に好きかな。


全部良いんだけど、特に俺に刺さったのは、上記の短歌だった。


でも、どれがおすすめというよりは、音楽のアルバムみたいに最初から最後まで通して詠む事で「滑走路」という作品が完成すると思う。


俺はまともに歌集を読んだのは初めてだが、この本はまるでアルバムのようだった。俺は常にイヤホンをしているが、滑走路を読んでる時はイヤホンを自然と外していた。


萩原慎一郎さんは、もしかしたら少しだけ俺に似ている点があるかもしれない。彼は中学での野球部時代に心に深い傷を負ったそうだが、俺も高校時代、野球部でいじめに遭い、心に傷を負った。今でも夢で野球部時代の夢を見る。(ちなみに俺も萩原さん同様、野球そのものは大好きだ。俺のエッセイを読んでくれてる方は分かると思うが、俺はよく野球のことを書く)


彼の内奥にあった痛みを俺は細部まで知らない。だが、彼は病気と戦う中で希死念慮を持っていたのだと思う。


そして萩原慎一郎さんが短歌と出会ったのは17歳の時。俺が小説をネットで投稿するようになったのも、17歳の時。そこまで俺と一致している。俺は高校で孤立していて、いわゆる普通の青春なんて無かった。そこで俺は小説を書くことで自分の中の苦しみを作品へと昇華していた。(今はもうあんまり小説への情熱はないけど)


萩原慎一郎さんは、中学時代の野球部でのいじめをきっかけに精神的に不調になってしまい、通院と自宅療養をしていた。そんな中、彼は17歳で短歌と出会い、こころの叫びを書き続けた。俺もうつ病で精神科に通院しているし、生きる辛さをアルコールで解消したり、あとはカクヨムでこうして文を書くことで孤独を解消している。


萩原慎一郎さんはもうこの世にはいない。だが、滑走路の中の言葉の数々は間違いなく今を生きており、この地獄的な世界を生き抜く力を与えてくれる。今後、滑走路は俺の中でのバイブルになると思った。詩歩子さんはじめ、色んな人が「素晴らしい」と言っていた意味が分かった。素晴らしい作品を教えてくれてありがとう。


あと、俺も短歌に挑戦してみようと思う。31文字の中に俺の言いたい事を詠む。


そもそも短歌のルールすら知らない俺が短歌を書けるのかは不明だが、滑走路を参考にしつつ、ネットで勉強して短歌を書いてみたい。5・7・5・7・7で、季語は要らないんだな。



九頭龍一鬼さんが紹介してくれたオマル・ハイヤームの「ルバイヤート」と、濱野乱さんが紹介してくれた劉慈欣という人の短編集も後日読んで、感想を書けたらと思います。



最後に俺も3つほど短歌を詠んでみる。人生初の短歌だ。



【首吊り台】

「暗い部屋 孤独を抱いて 泣いている 黒い衝動 首吊り台へ」


【写真】

「あなたから 送られてきた 写真には 赤い鮮血 カッターナイフ」


【ブラックニッカ】

「天国で 元気にしてる? いつかまた 2人で飲もうぜ ブラックニッカ」



どうでしょうか? 生まれて初めて短歌を詠んでみました。31文字の中に必ず収める必要は無いらしいけど、31文字かつ5・7・5・7・7の中に収めるのは難しくもあり、楽しいと思った。


これからしばらくは、このエッセイの中で短歌を詠むかもしれません。


俺も歌人への道を歩み始めたかもしれん。


それだけ、萩原慎一郎氏の滑走路は素晴らしい作品でした。


皆さんも、ぜひ購読してみてください。傑作です。





27話に続く

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