第15話 片目のウィリー/レビューありがとう

 気がつくと私は、日本の病院の真っ白い診察室にいた。目の前には白髪の精神科の主治医がいる。


「あれ……桑田先生」


 と、私は素っ頓狂に呟いた。


「あなたは“中村比奈”さんですね?」

「はい」

「あなたは“あいり”さんという“新しい交代人格”と入れ替わっていました」

「ああ……そうなんですか」


 そこで、私の記憶が飛んでいたことに関して全ての合点が行った。

 私は“解離性同一性障害”という持病を持っている。中村比奈という主人格の他に、4人の交代人格がいるが、そこに新しく“あいり”という人格が生まれてしまったらしい。

 やがて桑田先生は無表情で提案した。


「中村さん、しばらくまた入院してみますか?」

「え」

「最近は自傷行為や自殺念慮も切迫しているし、このままあなたを放っておくのはかなり危険です。風俗での仕事や援助交際を繰り返すのも、あなたの精神状態に悪い影響しか及ぼさない。しばらく休んでみましょうよ」

「病気の影響で、私には普通の仕事は就けません。それに施設育ちで両親も親戚も兄弟もいない。頼れる人なんていない。私は自分の体を売って生きるしか選択肢が無いんです。入院なんて、絶対できません」

「うーん……。じゃあ医療保護入院という形になりますが、いいですか?」

「嫌です」

「でも、中村さんは今危険な状態ですから、入院していただいた方が良いと思いますよ」


 そして、桑田先生は机の上の内線電話をかけ始めた。やばい。男の看護師を何人も呼んでくるつもりだ。このままだと私は入院しないといけなくなる……!

 少し時間が経つと、私の背後のスライドドアが開けられる音がした。

 そこには、3人の男性看護師が立っている。

 私はもう、逃げられないのか……。

 絶望したその瞬間だった。


「──比奈!!!!! 助けに来たぜ!」

「え? どうして涼太がここにいるの!?」


 声の主は、私の友人である“山田涼太”というニートだった。

 上下黒のスウェット姿の涼太は笑ってこう言った。


「どうしてって、比奈が“栃木の●●病院にいるから助けに来て”ってLINE送ってきただろうが。だから群馬からハーレーダビッドソンぶっ飛ばして来たわけよ。遅くなって悪かったな。さぁ行こうぜ比奈。比奈を入院なんてさせやしない!」

「涼太……!」


 私は涼太が初めてかっこよく見えた。


「誰だ、あんたは!?」


 と看護師の1人が涼太に言う。すると涼太は、


「中村比奈の恋人だ!!!!!」


 と叫んで、思いきり看護師の顔面を殴った。直後、涼太は他の2人の顔面も思いきり殴って、蹴っ飛ばした。


「警察だ! 警察を呼ぶぞ!」


 と桑田先生が勢いよく立ち上がった。すると涼太は診察室に入ってきて、初老の桑田先生の顔面も思いきり殴り飛ばした。

 直後、涼太は私の氷みたいに冷たい手を強く掴んで、笑顔でこう言った。


「ここから逃げるぞ! 駐車場に俺のバイクが停めてある! 来い!」


 私は涼太の暖かい手に引かれて立ち上がる。


「ど、どこに逃げるの!? 私にもう逃げ場なんて……」

「世界の果てまで逃げるんだよ!!! 俺ら2人で!!!!!!」


 涼太は笑顔でそう言って、私の手を引っ張った。そして私たちは走り始めた。気がつくと、私は笑っていた。こんな事って本当にあるんだ。白馬の王子様が私を迎えに来てくれた。涼太はバイクに乗ってるニートだけど。それでも今の私には王子様に見えた。

 私たちは沢山の人がいる病院内を全力で駆け抜けて、すぐに自動ドアを通り抜けて、駐車場まで辿り着いた。

 すると涼太は息を荒げながら、私にヘルメットを渡してきた。


「すぐに追っ手が来る! 早くヘルメットつけて俺の後ろに乗れ!」

「うん!」


 涼太は黒のハーレーダビッドソンに乗り、エンジンをかける。私は涼太の背中を思いきり強く抱く。


「よし、フルスロットルでブッ飛ばすぞ! すぐに高速道路に入る!!! しっかり掴まってろよ!!!!!!」

「うん!!!!!」


 私は更に涼太を強く抱きしめる。直後、ハーレーダビッドソンはとんでもないスピードで発進して、駐車場に停まっている他の車をバンバン蹴散らしていった。


「ははははは!」

「あはははは!」


 私は久しぶりに心から笑っていた。

 空は青々と雲1つ無く晴れ渡っている。

 そのまま駐車場から国道●●号に出て、しばらくハーレーは走った。スピードは法定速度を遥かに超えている。

 そして北関東自動車道という高速道路に乗り、栃木の足利インターチェンジから群馬の高崎インターチェンジを目指した。

 ハーレーはとんでもない速さで風を切り裂いていく。とても気持ちいい。こんなに気持ちいいの生まれて初めて。


「さらってくれてありがとう涼太。私このまま世界の果てまで涼太と一緒に走りたい。大好き」


 ──私の小さな独り言は、風の轟音に掻き消されて、すぐそばの涼太には聞こえなかった。





というわけで、バイクで風になった俺はマクドナルドの新作のゴジラバーガーを食べてみた。俺が注文したのは「旨辛肉厚ビーフ&ざく切りポテト」と「スモーキーペッパーチキン」です。


もう一つ「ダブルチーズ照り焼き」っていう新作があったけど、個人的に照り焼きソースがそこまで好きじゃないから、買わなかった。


食ってみた感想ですが、どっちも普通にうまかった。マックはいつ何を食ってもうまい。


でもチキン系の商品はマクドナルドよりもケンタッキーの方が圧倒的にうまいと思う。でもケンタッキーの方が値段が張るから、どっちを選ぶかはあなた次第ということだ。


うちの近所にはマックもケンタッキーもある。ケンタッキーの月見バーガーがめっちゃ好き。


ネットで見たけど、ケンタッキーのオリジナルチキンのレシピって企業秘密でみんな知らないらしい。あとコカコーラのレシピもみんな知らない。


ケンタッキーのチキンの味ってケンタッキーでしか味わえないし、相当な企業努力の末に生まれた商品なんだろうなと思う。


阪神タイガースが1985年に日本シリーズに勝った時、道頓堀の川にカーネル・サンダースの像が川に思いきり投げ入れられたが、2023年に阪神が38年ぶりに日本一になったことで、川に沈んだカーネルの像も報われたことでしょう。俺も阪神が勝って嬉しかった。(中日ドラゴンズファンだけど)


マックもケンタッキーも近年の物価高の煽りを受けていて、ワンコインでは買えない時代になった。でもヨーロッパとかの国だと日本の何倍も高いらしい。


うちのアパートの近所にガソリンスタンドがあるけど、最近ガソリンもめっちゃ高いもんな。嫌になる。最近俺は節約のために車ではなくママチャリをよく使う。自転車は運動にもなるし、いい。



あと、この連載に詩歩子さんとミツルさんがレビューをくれた。ありがとう。おかげでこの連載のフォロワーさんが何人もついてくれた。


レビュー書いてくれたお礼に、いつか日本のどこかの街で偶然すれ違ったら酒でも一杯おごる。いや、二杯、三杯、四杯、五杯、ぶっ倒れるまでおごる。(アルハラ)


俺の文をいつも読んでくれる人たちは、やっぱり俺と同じように「普通に生きる事ができない」人が多い。俺も普通に生きられなかった。いつか全ての痛みが過去になったら、みんなで集まってバーベキューでもしよう。みんなでビールでも飲もう。天国で乾杯しよう。


いつか全ての痛み、悲しみは過去になる。


いつか全てを笑って話せる時が来る。


そしたら俺に聞かせてくれ。たわいも無い、どうでもいい話と一緒に。



仕事やめて最近暇で、あんまりアパートの外に出ていない。


だが妄想の翼を広げたらどこまでも行ける。


俺は猫に会いたくなってきたので、チャリンコを漕いで実家に帰る。あと、実家にあるCDを取りに行く。


音楽はもう全てサブスクでしか聴かないが、めっちゃ好きなアーティストのCDはいつも記念に買う。syrup16gのCDは全部持ってる。


と思ったが、やっぱり実家に帰るのはやめる。めんどくせえ。


ちなみに今聴いてるのはTHE PINBALLSの「片目のウィリー」



暇潰しに5chを見ていて、不快な書き込みがあった。


発達障害とか精神疾患の人を「甘え」だと言う人がネット上には本当に沢山いる。


いったい、何をもって「甘え」なんだろう。


俺だって普通の事が普通に出来る健常者に生まれたかった。


俺自身、学校でも会社でも疎まれてきたし、ネットにすら、ほとんど居場所が無い。


「努力が足りない」と誰かが言う。もうそれでいい。


理解されたいなんて思わない。


でもこれだけは分かる。いじめも戦争も絶対に無くならねえよ。だって世の中“まともな奴ばかり”なんだから。


俺の全てが甘えだと言うなら、俺と代わってくれ。俺の脳を背負って生きてくれ。あんたは俺の欠陥だらけの脳を持っていても、俺より上手く生きられるんだろ?


……あんまりこういう攻撃的なモードになるのは、よくない。


単純に俺はこの世界と気が合わないだけ。それだけの話。


他人にとって俺の存在が不快で迷惑なら、別に俺はすぐ死んでもいい。


オレンジジュースで眠剤を飲んで寝る。






16話に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る