第2話 書を捨てず、街に出よ

「書を捨てよ、街に出よ」という寺山修司の言葉が有名だが、俺は書を捨てないまま街に出る予定である。


前回「小説も創作も好きじゃない」と書いたが、本当は大好きだ。俺自身、昔は読書家だったし、17歳の時から小説を書いていた。


個人的にはセリーヌとか村上龍とか森見登美彦とか中島らもが好き。あとパラニュークも好き。バロウズも好き。ブコウスキーも好き。あと「ライ麦畑でつかまえて」を書いたサリンジャーも好き。サリンジャーで合ってるっけ?


かつて俺の友達に韓国人とロシア人の女性がいた。なので俺は韓国語とロシア語を多少喋れる。


どんな世界にも「文学」はある。


色んな言語を習得して、色んな国の文学作品を原文のまま読んでみたい。それが俺の些細な野望だ。


俺は学生時代、めちゃくちゃ偏った文系だった。だからか、言語の習得はあまり困難に感じない。特に韓国語は文法が日本語と同じだから簡単だ。ハングルも覚えた。



たまに思い出す。高校の教室にいつも一人ぼっちでいた事。毎日嫌々制服を着てた事。将来の夢は早く死ぬ事だった。あの頃の俺が今も一人で泣いている。


少年の心を忘れないのと、子供のまま歳だけ重ねたのは、全く違う。俺は後者だ。大人になれなかった。運がいいのか悪いのか自殺に何度も失敗したから今も生きてるだけで、死んでる可能性も充分あった。


よく自分の存在が空っぽに感じる。精神的におかしくなってから、日々の記憶がぼんやりしていて現実感が無い。一昨年の重い鬱の時期、俺の記憶はあまりない。思い出せないのだ。体調はめちゃくちゃ悪くて、常にめまいと吐き気とブレインフォグがあった。鬱の酷い時はまるで水中にいるようで、常に死ぬことしか考えられない。この苦しみから逃れるには死ぬしかない、と考えてしまう。鬱は気分的に落ち込むというか、物理的に体が異常を示す。


人生で初めて精神科の薬を処方された時、ソラナックスを1錠飲むだけなのに、すごく緊張したのを覚えている。でも今じゃ精神薬なんてただのラムネ。あるいはフリスクだ。


ところで今、20代の心の病を抱えてる人が過去最多になってるらしい。コロナ禍の影響も大きいと思うが、なんだか年々日本人の絶望感が増してる気がする。街には終末思想が漂う。感覚的な事なので上手く言えないが、こんな世界じゃ死にたくなって当たり前だと思う。


世の中なんて、くだらない。くだらないから病む。


特に今はスマホ社会になって、ネットさえも現実の延長線上になってしまい、ネットは明るい奴らの居場所になって、日陰者たちの居場所がどんどん減ってる。


まあ、探せばあるっちゃあるけどな。俺はごく僅かなコミュニティにしか属していない。カクヨムもそのうちの1つだ。


匿名掲示板も今は煽りや荒らしばかり。SNSではマウントとインプレッション乞食まみれ。他は金金金。


ネットも随分と息苦しくなった。現実と変わらないな、こんなの。


でも人間なんてそんなもんだ。



ZAZEN BOYSという俺の好きなバンドが来年の1月に13年ぶりのアルバム「らんど」を出す。ファン待望の新譜だ。そのアルバムの中の「永遠少女」って曲が先行でサブスク解禁されたので聴いてみた。聴けば聴くほどクセになる良曲だ。


実は、ZAZEN BOYSの来年の東京のライブに行く事にした。チケットも取れたぜ。めっちゃ楽しみ!!!


俺は好きなバンドを生で聴くのが好きだ。超楽しい。ライブに参加するのは俺の趣味と言えるかもしれない。当たり前だけど、音源とライブだと感動や興奮の度合いが全然違う。音源が1だとすると、ライブの興奮は1兆だ。


今まで色んなバンドを観に行ったが、1番回数が多いのはsyrup16gだ。個人的ベストバウトは、去年の12月の横浜での「レミゼブルー」リリースツアーだった。


群馬在住の俺が都会に行くのは、ライブの時くらいだ。


あとZAZEN BOYSは“職人集団”みたいな感じでかっこいい。演奏技術が超高いし、本人達が音を楽しんでいる。まさに「音楽」だ。



今、俺は久しぶりに実家に帰ってきている。


実家の俺の部屋に小説や漫画がめっちゃあって、それらをアパートに一部持ち帰りたいと思ったからだ。


久しぶりにセリーヌの「なしくずしの死」と「夜の果てへの旅」を読みたくなった。セリーヌの小説は天才的で素晴らしいので、読んだことない人はぜひ手に取ってほしい。死にたい人は読んでみてほしい。


実家の玄関を開けたら、猫が「にゃ」と言って俺を出迎えてくれた。かわいい。


久し振りに会ったのに、猫は俺を忘れるどころか、いつも通りに寄ってきてくれる。


俺は猫を抱っこして、鼻を猫のお腹にすりすりした。猫は風呂に入らないのに常に良い香りがする。毛布みたいな匂いがする。


猫にクリスマスプレゼントをあげたい。Amazonで何か買おうと思ってる。何が良いかなあ。うちの猫はあんまりおもちゃに興味を示さないんだ。だから、ふかふかのベッドとかにしようかな。


うちの猫はキジトラで、足が靴下みたいに白くなってて、顔もめっちゃかわいい。今、8才。長生きしてくれ。


ちなみに猫は奈良~平安時代には、日本でペットとして飼われるようになったそうだ。猫は奈良時代、経典をネズミから守るために中国から輸入されたはずだったが、やがて貴族の愛玩動物として大切に可愛がられるようになった。そしていつのまにか一般人へと猫が波及した。


現代では、コロナ禍もあって猫を飼う人が増えたらしい


猫は本当にかわいい。見てるだけで癒される。生まれ変わったら俺も猫になって優しい人に飼われたい。


実家でしばらくゆっくり過ごした。猫の写真を何枚も撮った。


セリーヌの小説も無事に見つかったし、そろそろアパートに帰りますか。



朝と夜はとても寒い。冬の冷気が俺の孤独を助長してるようだ。


死にたいと願うのはおかしい事じゃない。人の心は一生不安だからだ。不安の無い人間なんているのか。


とりあえず来年のZAZEN BOYSのライブが楽しみ!!!!!!!!!!


あと、しばらく俺は暇な時にセリーヌの小説を読み返す。今読む事でまた得られるものがあるかもしれないから。


俺は書を捨てず、今日も街に出る。






3話に続く

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